「オランダせんべい」というお菓子があるのをご存じでしょうか? どこかノスタルジックな響きを持つこのお菓子、実は根室では昔から愛されてきた、根室市民なら誰もが知っているものなのです。
名前は煎餅、見た目はワッフル。はじめて知る人にとっては正体不明の「オランダせんべい」。果たしてどういうものなのか、根室にて調査してきました。
戦前から存在した「オランダせんべい」
▼これが「オランダせんべい」。4枚入って250円
「オランダせんべい」を作っているのは、根室にある端谷菓子店という小さなお店です。1950年(昭和25年)に青森の南部せんべいを作りだしたのが菓子店としての出発でした。その後、いろいろなお菓子作りを経て1965年(昭和40年)ごろから「オランダせんべい」がこのお店を代表するお菓子となりました。
▼住宅街の中に佇む端谷菓子店
「オランダせんべい」は、戦前からあるお菓子で、昔はいろいろなお店が作っていました。端谷菓子店が「オランダせんべい」をはじめた頃にはほとんどのお店が製造をやめてしまい、最終的には端谷菓子店一店だけが残ったそうです。現在では根室を代表するお菓子、根室銘菓として根室振興局のサイトにも記載されています。
同店に名前の由来を聞いてみると、「昔から言われていてはっきりとした由来はわかっていないのです」と話します。長崎県の「オランダ焼き」に似ているからとも言われていますが、昔はお菓子のことをオランダと言っていたという話があったり、オランダ坂の石畳が「オランダせんべい」の凸凹に似ているから、などと言う人もいますが、詳細はわかっていません。
▼焼きたての「オランダせんべい」。2枚ずつ焼かれています
素朴で懐かしい味わいのする根室のおやつ
「オランダせんべい」は、形からワッフルを想像する人、名前から煎餅を想像する人が多いようですが、そのどちらとも違います。しんなりとした少し柔らかめ生地で、食べるとほんのり甘く、どこか懐かしさを感じるような味わいです。
昔からあった「オランダせんべい」ですが、戦前の味のままではやはりもの足りなさがあったことから、創業時に少し味を変え、現在まで守り続けているそうです。ちなみに材料は小麦粉と砂糖と塩と膨張剤(重曹)だけというシンプルなもの。水分量と焼き時間を調節して絶妙な柔らかさを出しています。
▼今でも創業時のままの型を使って焼き上げています
焼き上がった「オランダせんべい」は手作業でハサミで切り分けていきます。1度に2枚しか焼けないので、営業中はずっと焼き続けているそう。そのため、お店に入るやいなや全身を甘い香りに包まれます。子どもの頃からこの香りに慣れ親しんだ根室市民ならずとも、幸せな気持ちで満たされることでしょう。
▼焼き上がった「オランダせんべい」を丁寧に切り分けてから袋に詰めます
取材中は、お客さんがずっと絶えることなく訪れていました。住宅街の中にぽつんとあるお店、しかも決して交通の便がいいとは言い難いこのお店に、これだけのお客さんがやってくることに驚かされました。根室市民のおやつとして、「オランダせんべい」はなくてはならないものなのかもしれません。
端谷菓子店以外でも「オランダせんべい」を買える場所はあります。でも、焼きたてを食べられるのは端谷菓子店だけ。冷めてもおいしい「オランダせんべい」ですが、焼きたてのおいしさは格別です。ぜひお店に行って焼き立てを食べてみてください。
▼いちばん人気はやはり「オランダせんべい」です