一度「ヨソモノ」になったからこそ素敵な出会いや新しい発見があった

北海道の各地域で魅力的な関わり方や働き方を実践している人をゲストに迎え、自身の経歴や活動について興味深いトークが繰り広げられていく、「ひみつキッチン」オンラインイベント。今回もさまざまな場所からたくさんの人がZoomで参加してくれました。

司会を担当するのは、白老町にてフリーランスで広報・PRプランナーとして活躍する山岸奈津子さん。ゲストスピーカーには留萌市地域おこし協力隊の佐伯結さんを招き、山岸さんが「結ちゃん」と呼びかける和やかなムードでトークが開始されました。

司会の山岸奈津子さん
留萌市地域おこし協力隊の佐伯結さん

テーマに掲げたのは「平凡な“るもい女子”が“エモい地元”で意外とできること」。まずは、佐伯さん自身のこれまでの経歴が語られていきます。高校を卒業するまで過ごした留萌が当時はあまり好きではなかったこと、札幌市で調理の専門学校に通い、卒業後は東京で就職しさまざまな飲食の仕事に関わりながら刺激的な毎日を送っていたこと……。

そんな佐伯さんに、転機が訪れます。2018年に起きた北海道胆振東部地震です。地元を離れているが故に何もできずもどかしい思いをした佐伯さんですが今度は音楽やライブ、イベントに関わる会社に就職することに。実は佐伯さん、実家がレコード屋で幼い頃から大の音楽好き。好きなことを仕事にできると思った矢先、今度はコロナ禍に見舞われます。就職からわずか2ヶ月、やる気と熱意が取り残されたまま、休業期間を悶々とやり過ごしていったのです。

そこで再び転機が訪れます。留萌市高規格幹線道路開通、留萌深川間全線開通、さらには「道の駅るもい」が開業するという明るいニュースが飛び込んできたのです。この不安な情勢の中で前進する地元に背中を押され、地元のために行動したいと思い立ち、2020年7月、留萌市地域おこし協力隊として活動をはじめました。

こうして話を聞いていけば、気持ちの動くままにUターンを決め、その勢いで地域おこしに立ち上がったように感じますが、佐伯さんの中では葛藤があったよう。

「東京で刺激の多い日々を送っていたので、地元に戻ってつまらなかったらどうしようという不安が、まずありました」

しかし、地元を一度離れたからこそ、戻ってみると嫌いだと感じていたことがいいなと感じられるようになったのだと言います。地元に対して一旦「ヨソモノ」にならなければ、こんな新鮮な感覚では見られなかったかもしれません。

「素敵な出会いもありました。るもい映画研究会の方や、地元で市議会議員などもされている面白おじさんなどなど。特に面白おじさんのおうちには実家のような感覚で頻繁にお邪魔させてもらっていて、今、軒先にピザ窯をつくっている最中なんですよ」。ずっと地元にいたら、こんな出会いにも気付けず、逃していたかもしれない……と、佐伯さんは語っていました。

るもい映画研究会
体験施設「海に山に」

ここで司会の山岸さんから「地域おこし協力隊で、結ちゃんがどんなことをしているのか教えて?」と、具体的な活動内容に話題が振られます。まずはAR技術を活用した「RUMAR」というコンテンツ制作。実は留萌市出身のミュージシャンは数多く、そんな彼らに協力を依頼し、地元留萌市での思い出話を語ってもらい、実際にそこに行くことで楽しめる動画を作成しました。

「企画構成も、インタビュー依頼も、撮影や動画編集も、とにかく何もかもがはじめてのことばかりだったので、大変でした」と語る佐伯さんですが、その目はキラキラと輝いています。実際にトーク中に「RUMAR」の告知動画が流れ、怒髪天の上原子友康さんや掟ポルシェさんといった錚々たる顔ぶれが登場。この動画は、留萌市市役所のHPでも見られるそう。

RUMAR

他にも、道の駅にチョークアートを描き、それが実際にマスキングテープなどのグッズとなって販売されているという話に、司会の山岸さんも驚きます。「どうしてそんなことができるの?」という山岸さんの問いに「もともと絵を描くことが好きで、飲食業時代にも看板やバースデープレートを描いてたんです」と、佐伯さん。「もしかすると、都会よりチャンスがあるかもしれないですね。前例がないからこそ、挑戦させてもらえるんです」という佐伯さんの言葉に、一同納得です。

チョークアート

さて、トークもいよいよ終盤に差し掛かり、ここで参加者からチャットで募った質問コーナーへと移ります。

「RUMARの仕事をする中で印象的だったエピソードは?」という質問には「大好きなミュージシャンにインタビューするということで最初はガチガチでしたが、実家のレコード店を知ってくれていて『お母さん元気?』と聞かれたりして……最後は地元のおじさんと話してる感覚でした」との答え。また「Uターンして地元を楽しむためには、何が必要だと思いますか?」という質問には「好きでも嫌いでもいいから、地元に対して感情をしっかり向け、考える時間を持つこと」だと佐伯さん。「そうすれば、Uターンした時に地元を2度楽しめるかもしれません」と。

最後に、今回のトークのポイントを「今日のレシピ」として佐伯さんにまとめてもらいます。佐伯さんの提案したレシピは「おいしく調理するには食材をよく知ることから」。佐伯さん曰く「知っているつもりの地元でも、改めて向き合ってよく知り、よく愛すことで新たな発見につながるのではないでしょうか」とのこと。調理師免許を持っている佐伯さんらしいレシピに、思わず司会の山岸さんも感心しきり。

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