砂糖・人工甘味料不使用なのに甘い!驚きの焼き菓子を作る帯広「晴café」

「え、砂糖を使っていないのに、ちゃんと甘い!」

これが、そのクッキーやグラノーラを初めて口にした時の私の印象でした。原材料を見ても、どこにも「砂糖」の文字がありません。人工甘味料など添加物は一切なし。いったいどういうこと? 製造する、帯広市の晴caféを訪ねました。

糖尿病予備群と診断されて

「晴café」は2005年6月、神戸から帯広に移住した景山善美さんが立ち上げた隠れ家的カフェとして始まりました。「十勝晴れ」にちなみ、コーヒーや手作りケーキ、地域の野菜を使ったランチを提供し、人気でした。

しかし、8年目を迎える頃に糖尿病予備群と診断されてしまった景山さん。2015年にカフェを休止しました。食事療法を学び糖質制限を実施する中、3ヵ月で薬なしで血糖値をコントロールすることに成功したといいます。そこで、友人だった安久澤智子さんを誘い、低糖質スイーツの開発に着手。2017年1月に「晴café低糖オーブン」という名称で、販売を開始しました。

▼景山さん(左)と安久澤さん(右)(提供:晴café)

糖質制限をしていると、友人や家族と一緒におやつを食べることを遠慮してしまったり、どうしても甘いものが食べたくなる気持ちになることがあります。そこで、自分たちが本当に食べたい、おいしいと思えるお菓子を作ろうと、二人は意気投合。旧カフェスペースを工房にして、菓子作りが始まりました。

ないものをゼロから作る挑戦

最初に作ったのはクッキー。条件にしたのは、小麦と砂糖をできるだけ使わないことですが、完成までのハードルは高いものでした。

まず、クッキーのベースとなる薄力粉を使わず、いかに生地を作るかを考える必要がありました。できるだけ十勝産にこだわりたいとの思いから、低糖質で高タンパク質の大豆に着目。生地を作るために大豆を煮たり焼いたり、乾燥させ製粉するため、時には自分で機械を買って改造したりと試行錯誤の連続だったといいます。

一方、砂糖については、唯一血糖値をあげず、体に吸収されない天然由来の希少糖「エリスリトール」を採用しました。こうして、仕入れルートを開拓するところからはじめて、1年がかりでクッキーは完成。トータルで糖質を約70%カットすることに成功しました。

食の専門家が認めた!

低糖クッキーは薄力粉の代わりにアーモンド粉や十勝産おからをベースにした砂糖不使用のクッキー。このほか、糖質を抑えたケーキや大豆グラノーラも開発しました。

▼大豆グラノーラ

グラノーラは賄いから誕生しました。クッキーの製造過程で出てしまうかけらを、捨てるのはもったいないのでヨーグルトにかけて食べていたそう。これにヒントを得て、レシピを少し変え、グラノーラとして商品化しました。

そして2019年2月、札幌市で行われた「北のハイグレード食品S 2019」授賞式。「とかち大豆のグラノーラ(豆ミックス)」が、応募総数96点の中から選定されたのです。食の専門家が北海道の優れた食品として評価したことになります。

グラノーラの生地に大豆製品を60%以上練り込んでいながら、大豆らしさが皆無。大豆農家や豆腐屋、専門家も驚くおいしいグラノーラに仕上げています。朝食用としてだけではなく、スナックやおつまみとしてもおいしくいただけます。

商品の製造にあたって、大豆は更別村の田中農場、全粒粉は芽室町の川合農場、加工大豆は帯広市の十勝とやま農場が生産したものを使用。その他、よつ葉乳業のバターやスキムミルク、中札内村産たまご、十勝養蜂園のシナ蜜、芽室町産の枝豆・小豆のフリーズドライ、十勝野フロマージュのナチュラルチーズといった十勝管内の食材を優先的に使って製造しています。また、地域の障害者支援施設「帯広はちす園」とも連携しながら、ひとつひとつ手作りで生産をしています。

エリスリトールは砂糖の10倍の値段だとか。他の食材も吟味して良いものを使っているため、どうしても販売価格は高くなります。糖質を気にしている人もそうでない人も一緒に食べられるおいしいお菓子を届けたい。その強い想いを持つからこそ、毎日作り続けられています。二人の女性の奮闘はこれからも続くことでしょう。

晴café(ハルカフェ)公式サイト