網走市にあるフラワーガーデン「はな・てんと」。約3.5ヘクタールの面積に約42,000本の花が咲き誇り、訪れる人の目を楽しませています。
ここ、実は普通の花畑ではないのです。冬になればその様相をがらりと変え、なんとスキー場に変貌してしまうのですから! なぜこのような季節限定のフラワーガーデンが誕生したのか、その成り立ちを追いました。(トップ写真提供:網走市役所)
何もかもが前例のない取り組み
夏は未利用だった網走レークビュースキー場の頂上を、シーズンオフの期間だけ花畑に変えてしまう。そんな大胆な構想が発表されたのは1999(平成11)年のこと。発案者は当時の網走市長でした。市民ボランティアによる運営を想定していましたが、当時の山頂ロッジ付近は単なる雑草地。花の種を植えたところで、本当に咲くのかどうかも未知数でした。
▼市役所観光課職員の試行錯誤がはじまります
2000(平成12)年の初夏、市の観光課職員がトラクターを持ち込んで固い土を砕き、試験的にマーガレットとルピナスの種を一粒ずつ落としていきました。種を蒔いてから約1ヶ月後にはマーガレットの花が咲きはじめ、この地で花が栽培できることが裏付けられました。
▼今ではこんなに可憐な花々が咲き誇る
2001(平成13)年には、花園造成の費用として約520万円の予算がつき、さらに土壌調査を行って土壌改良法のアドバイスも得ました。また、民間企業から堆肥の提供も受け、市民花園の誕生にますます弾みがついていったのです。
市民でつくる、みんなの花園が誕生
着実に物事が進んでいく裏側で、観光課職員の努力は続きます。傾斜のきつい土地にどのようなレイアウトが適しているのか、果てしなく続く雑草の除去作業、その他もろもろの管理作業。
そうした中、いよいよ2003(平成15)年から、市民にも管理を協力してもらうことに。花園一区画ごとの里親になってもらう「アドプト・プログラム天都山事業」をスタートさせたのです。
はじめて名乗りを上げてくれたのは、なんと13団体。理容団体やホテル、建設会社、フラワーマスター連絡協議会など、実にさまざまな分野から、手が上がりました。
▼いよいよ本格的に市民花園スタート!
2004(平成16)年から、1年草のマリーゴールドとサルビアを植え、現在のスタイルが確立。時期を同じくして、協力してくれた団体との意見交換の中で、花園の名称が「はな・てんと」に決まりました。
花園の噂は、徐々に市民の間で話題になっていきました。また、NHKが全国放送で紹介したことも追い風となり、大手旅行会社のパンフレットにも掲載され、網走の新名所として認知度が一気に高まっていったのです。
▼スキー山頂ロッジ前に見事に広がる花の絨毯(写真提供:網走市役所)
2005(平成17)年からは「はな・てんと祭り」も開催され、切り花や種子の販売、軽音楽コンサートなど、まさに市民のためのイベントとして盛り上がりを見せています。今では協力団体も41団体にまで増えました。6月中旬から10月中旬の開園期間には見事な花の絨毯を広げ、多くの人の目を楽しませています。
▼撮影ポイントは傾斜の下から(写真提供:網走市役所)
花園を楽しむアドバイスをうかがったところ、傾斜があるため、下から見ると花々がグラデーションになって見応えがあるということでした。また、参加団体それぞれの看板が立っているので、どういう団体がどの区画を管理しているのかをチェックしてみるのも、面白いかもしれません。
もともとは固い土の雑草地だったなんて、今の風景からは想像もつかないほど。色鮮やかに広がる花園は、何事も本気になって取り組めば、文字通り種が実を結び、やがて協力の輪も広がっていくのだと、改めて教えてくれるようです。
【動画】空から見下ろす「はな・てんと」(残念ながら小雨)
所在地:北海道網走市呼人15-2
開園期間:6月中旬~10月中旬
開園時間:終日(ロッジ内トイレ利用は6時?18時)
休園日:無
入園料:無料