北海道は河東郡鹿追町に、1年のうち約1ヶ月間だけ一般に開放される山荘があるのをご存じでしょうか。紅葉の季節、たった1ヶ月というその時期には、台湾、香港、シンガポール、そしてイスラエルなど中東の国々からも、観光客が訪れるといいます。
どんなアトラクションがあるわけでもないのに、ただそこにある自然を求めて人々が集まってくる、そんな「福原山荘」の魅力に迫ります。
約50年前に完成した個人山荘
▼福原山荘へ導く看板
福原山荘の敷地面積は、約85,000平方メートル(約25,000坪)。実に東京ドームの約1.8個分、サッカー場の12面分に当たる広さです。これだけの広大な山荘が、個人の持ちものだというから驚きます。
▼上空から見た福原山荘
その持ち主とは、福原治平(ふくはらじへい・故人)氏。十勝・釧路地方を中心に展開する食品スーパー・フクハラの創業者です。戦後、ニジマスの養殖場として使われていた土地を譲り受けた治平氏は、そこにヤマモミジを1000本植樹するなど(現在残っているのは約300本)整備を続けたといいます。
▼赤く色づくヤマモミジ
福原山荘がようやく完成したのは、1970(昭和45)年のこと。当時は主に家族のリフレッシュの場として、また、来客をおもてなしする目的で使われていただけだったというから、なんとも贅沢な話です。無料で一般にも開放されるようになったのは、2007年のことでした。
▼紅葉の時期に一般にも開放される
一般開放のきっかけは、同年に開館した福原記念美術館や当時あったホテル福原を訪れた客に、ついでにお立ち寄りくださいというささやかな気持ちからでした。ところがこれが大評判に。そこで、引き続き紅葉の時期の約1ヶ月間、一般への無料開放を続けているということです。
ほぼ自然のままの庭園
▼この空間だけ別世界のよう
実際に福原山荘を訪れるとまず驚くのは、やはりその広さです。秋めいてきた頃、少し冷たい風を感じながら色づく木々を眺めていると、日常の喧噪が頭の中からすっかり取り除かれるよう。まさに日々の刹那から切り離されたような、静かで普遍的な異空間に迷い込んだ気分を味わえるはずです。
▼雨に霞む瞬間もまた絶景
筆者が訪れた2日間のうち、1日はあいにくの雨だったのですが、雨模様の福原山荘も趣があり、これはこれで素晴らしい絶景だと感じさせてくれました。どこを切り取っても、一幅の絵のような美しさです。写真を撮っても撮っても、撮り飽きるということがありませんでした。
▼彫刻の池にて、水面に反射する紅葉
意外なのは、庭園の管理は基本的に公開前に芝刈りをする程度だということ。ほぼ自然のままの状態で、敷地内を流れる滝も、山から自然に流れてきているものなのだとか。
現在、山荘を管理・運営しているのは福原記念美術館です。こうして毎年一般開放することについて、鹿追町、十勝にとって、広告の役割を果たすことが目的なのだと教えてくれました。そうすることで人の流れをつくり、地域経済を活性化させることができれば、という思いがあるとのこと。
【動画】福原山荘を散策してみた(許可を得てドローン撮影しています)
福原山荘が一般開放されるのは、紅葉の見頃である10月の第1、2週を含む、9月半ばから10月半ば過ぎまで。今年2018年は9月15日(土)から10月21日(日)までです。今年の訪問はもう無理そうだという人も、来年以降の公開時期を楽しみにしていてください。また紅葉の季節が巡ってきた際には、ぜひ思い出して足を運んでみてくださいね。
福原記念美術館
所在地:河東郡鹿追町泉町1丁目21番地
電話:0156-66-1010
公式サイト
定休日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日火曜日が休館)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)