抜海港の冬はゴマフアザラシがたくさんやってくる

抜海港(ばっかいこう)。日本最北の市、稚内市の西側の日本海側に面する長さ600mの抜海岬。目の前には利尻島の利尻富士を望む美しい光景が広がります。冬季はゴマフアザラシの越冬の風景が観察できます。

抜海(ばっかい)とは

抜海の名前の由来は、アイヌ語「パッカイ・ペ(子を背負うもの)」にちなむ「バッカイ石」。松浦武四郎の『蝦夷日記』にも記録されています。

その抜海岩は抜海市街近くにある高さ約30メートルの小山で、岩の下の洞窟がオホーツク文化、擦文時代、続縄文時代に生活拠点として使われていたことが、発掘遺跡(稚内市指定文化財=抜海岩陰遺跡)のオホーツク四季時、擦文土器、骨角器、鉄器などから判明しています。

「状況報文」によると、かつてここに番屋や人馬継立所があったとされています。抜海村は1900年(明治33年)に稚内と合併し、現在は稚内市の一部です。

日本海側の最も北側に近い場所に位置しますが、結氷せず、流氷の影響も受けないため、不凍港として活用されてきました。

基本的に抜海港は漁港としての役割が大きく、武蔵堆(むさしたい)や北方海域を主な漁場としています。ごくまれに稚内港が使用できなくなった場合に利尻島や礼文島へのフェリー航路として発着することがあります(かつてはここが本来の定期航路発着地でした)。

利尻島もほど近く、晴れていれば利尻水道を挟んで利尻富士を望むことができます。

ゴマフアザラシ越冬で寄港

そんな漁港がなぜ観光地なのかというと、冬季になるとゴマフアザラシがこの抜海漁港近くの岩礁や砂地、消波ブロックに大量に姿を現すから。毎年11月ごろから翌年4月にかけて、繁殖のためにロシア・サハリン州沿岸から南下し道北地方にやってきます。

ピーク時には200頭くらい観察できます。3月くらいになれば、生まれたての真っ白い赤ちゃんゴマフアザラシも見られます。岩礁などにゴロンゴロンと転がっているのがアザラシです。

抜海駅は抜海市街から距離がありますので、ゴマフアザラシのいる場所へは車で行くのが普通で、かわいいアザラシ看板のとおりに進んで行くとスムーズです。駐車場もありますが、基本的に広い漁港で駐車スペースは幾らでもある。ただ、漁業関係者の仕事場でもあるので迷惑をかけないように配慮しましょう。

抜海港はマイナーなスポットではありますが、観光情報誌に掲載されるなど、今では本州からの観光客もやってくるようです。冬季シーズンには毎年7000人ほどが観察所にやってきます。

ゴマフアザラシ観察所(休止)

抜海港の灯台がある側(北側)には「ゴマフアザラシ観察所」が2003年に開設されました。カンパ制のコーヒーや暖房、トイレもあり、管理人もいる安心の仮設プレハブハウス(約20m2)。中にはゴマフアザラシ関連資料も展示されており、勉強もしっかりできるという場所です。

年末年始を除く11月1日~翌年3月31日の9:00~16:00(日没)が開設日で、悪天候時には閉鎖。ここからゴマフアザラシはちょっと遠いところにいるので、双眼鏡や望遠鏡は可能な限り持参していきましょう。2007年度からはカメラを設置して、施設内のモニターでも観察できるようになりました。

宿泊施設「ばっかす」でも、ゴマフアザラシ頭数を毎日掲示してくれていました。また、隣には軽食屋のプレハブ小屋「ぱっかい・ぺ」も(営業日は毎週土日、平日は晴れの日、11:00~14:00)。寒い冬なのでここで昼食という手もあるでしょう。冬には地吹雪も起きやすいので注意が必要です。

実はゴマフアザラシは、抜海漁港のほかにも、日本海側の海岸や宗谷漁港などでも少数ながら観察できます。流氷の位置などによって良い観察地が変わってくるようです。

※2015年度より観察所は休止されました。除雪もされていません。
※地元漁師にとって、漁業被害が発生するためアザラシは歓迎されていません。その点もご留意ください。

アクセス:宗谷本線抜海駅から3km。札幌方面から道道106号線で抜海村の丁字路左折。