道南にも「青の洞窟」が! 道南の秘境・矢越海岸を巡る感動クルーズ!

【知内町・福島町】道南の矢越海岸に残る手つかずの大自然。陸上では行くことのできない絶景スポットを小型船で楽しむ「矢越海岸アドベンチャーズ」が、2年目のシーズンに入りました。初年度から好評を博したこのクルーズを、体験してきました。

「青の洞窟」も! 道南の秘境クルーズ

「矢越海岸アドベンチャーズ」は、知内町の小谷石(こたにいし)漁港を出発して戻ってくる約1時間半の小型船のクルーズ。運営しているのは、「矢越クルーズ」の村田優さん。

▼クルーズキャプテンの村田優(すぐる)さん

知内町で生まれ育ち、その後、函館や関東地方で過ごす中で、故郷知内の大きな魅力に気づいたという村田さん。矢越海岸の手つかずの自然から受ける感動を多くの人たちに届けたいと、一昨年(2013年)の試験操業をへて、昨年から本格的に操業開始。道内でも珍しい秘境をめぐるクルーズとして話題を集め、昨年も全国各地から訪れた700人ほどが利用したそうです。

太古の噴火活動や波、潮風が作り上げた巨大で表情に富む岩肌、透明度の高い海。クルーズの途中には、神秘的な海の青さ、名付けて「矢越ブルー」に包まれる「青の洞窟」にも入っていきます。

航海の難所「矢越岬」

乗船日の前日までは強風で欠航が続いたという海。小谷石漁港を出て航路を進んでいくとそびえ立つ「矢越岬」は、古くから航海の難所といわれているそうです。乗船日は、晴れ渡る空に穏やかな波、対岸の青森県もくっきりと姿を現しています。「今日ほどベタッとした波の状態はなかなか珍しいです」という村田さんの言葉に、これからの矢越海岸を巡る旅に一層期待が膨らみます。

矢越岬にはいくつかの言い伝えがありますが、その1つが「源義経伝説」。義経の最期の地は岩手県平泉町とされていますが、その義経が北海道を目指して航海中、この岬周辺で大荒れの天候に見舞われ、岬に向けて矢を放ったところ、岬を越えて矢が飛んでいき、天候が回復したというものです。「矢越」の地名の由来にもなっているそうです。

このクルーズ船の名前は「義経」。村田さんの、「義経が放った矢のように、自分の人生も迷いなくまっすぐ進んでいきたい」という思いを込めているそうです。小型ながら安定感があり、水面を滑るように進んでいきます。

▼矢越岬にある「矢越八幡宮」

▼矢越岬奥の断崖

矢越岬には、崖の中腹にある鳥居と、そこに向かう階段があります。江戸時代に松前藩が設置した鳥居とされ、長く祈りの対象となってきました。江戸~明治時代に活躍した商船「北前船」がここを通る際には、必ず船を留め、お酒をまいたり、手を合わせたりしたそうです。このスポットでは村田さんによる「龍笛」の演奏も。大自然の中に響く笛の音が、気持ちを一層、非日常に誘い込んでくれます。

「ここに集落があった」。陸路では行けない別世界

矢越岬の次の大きな名所、「ツヅラ沢」。戦後、樺太からの引揚者の集落があった土地だそうです。正にそこだけ別世界のように広がる山と海に囲まれた地。集落の人たちと小谷石の人たちは、船を通じての交流があったそうです。村田さんが小中学生の頃、地元の漁師さんに連れられて船で遊びに来たことがあるというスポット。今となっては人が住んでいた形跡もありませんが、そこに人が往来する姿を想像していると、時がたつのを忘れそうです。

断崖、奇岩、自然が作る滝、そして「青の洞窟」

太古の噴火活動や波、潮風が作り出す岩肌の個性的な姿。その岩の間やてっぺんにも鳥たちが巣を作って集う姿が見られます。タイミングが良いと、鷹が水面近くの魚をくわえて巣に運んで飛んでいく姿や、熊や鹿が山から下りてくる姿にも遭遇できるそうです。

▼「青の洞窟」入口

そしていよいよ、目玉スポットの「青の洞窟」へ。奥行は約60m、高さは10m。洞窟に入るクルーズには国の認可が必要で、町の後押しを得ながら安全面や観光資源としての魅力を訴え、国の担当職員の視察などもへて、1年かけて認可が下りたそうです。


ヘルメットを着用して進んだ先に広がる「矢越ブルー」の世界。その静かな空間に浸っていると村田さんが白い小石を1つ、「願い事を思いながら水面に落としてください」と渡してくれました。澄んだ海の底に、白い塊がユラユラと沈んでいく様子が、目に焼き付きました。ここを訪れたカップルのうち、その後10組ほどから入籍のお知らせが届いたとのこと。そのカップルたちには、海の底に存在を放ちながら沈んでいく白い塊が、何かにつけよみがえってくるのではないかと思いました。矢越の海に祝福されたカップル、幸せ者です!

「去年は札幌から、83歳の女性が1人で来てくれたんですよ」と村田さん。世界の秘境を数多く見てきたその方が、どうしても見ておきたいといって訪れた矢越の海と海岸に、「これほどすばらしい景色はない」と感動してくれたそうです。

知内の歴史を肌で感じられるクルーズ

最大の見どころ「青の洞窟」を過ぎてもまだ見どころが。登山スポットでもある「大千軒岳」の砂金採掘で栄えた歴史、その過程で見つかった、北海道最古の歴史を持つという知内温泉。知内には北海道最古の神社といわれる「雷公神社」も。

▼午後には虹がかかることもある滝(舟隠しの澗)

▼高さ200メートルの断崖から落ちる滝

▼九州と行き来している渡り鳥「アオサギ」が巣を作る岩

▼タタミ岩。奥は今は使われていない漁師が船の修理などに使った小屋

▼タタミ岩周辺の海。透明度が高い。岩に張り付いているウニが見える

岩肌にはりつくウニもはっきり見えるほどの澄んだ海面の上で矢越の持つ歴史の重さを感じた後、「義経」は、小谷石漁港に向けて走り出します。

あれ? 行きと何かが違う!?

未知の矢越の海に繰り出した時には緊張していて威厳たっぷりに見えたゴツゴツした岩肌やその周辺の景色が、微笑んでいるような、包み込んでくれているような表情に見えたのです。矢越海岸とちょっと親しくなれたのかな!?

船を降りた後、多くの刺激を受けた後に感じる疲労感に包まれました。そして、その感動がじわじわと身体にしみ込んでいくのを、函館を目指して車を運転しながら感じました。異次元に入り込んでググッと引き戻されるような感覚を強く味わった、貴重な体験でした。

矢越クルーズ
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