阿寒湖のアイヌが案内。自然の中で逸話に耳を傾け、ムックリを演奏してみるツアー

北海道で最大のアイヌコタン(集落)のある阿寒湖。2020年6月から地元アイヌの方々が案内をするツアー「Anytime,Ainutime!」がスタートします。アイヌ自らが観光客を案内するツアーで、ひと足先にその内容を紹介します。

1泊2日で阿寒湖とアイヌに染まる旅

阿寒湖といえば「マリモ」「温泉」が浮かぶでしょうか。「阿寒湖のマリモ」や温泉が全国に知られ、各地から観光客がやって来たのが昭和30年代のこと。その当時から、阿寒湖に暮らすアイヌの多くは民芸店を営んでいました。木彫や古式舞踊を通じてアイヌ文化を伝えたのです。

それから60年以上。阿寒湖は今も多くの観光客が訪れる観光地です。2019年には光と映像、音響などの仕掛けが散りばめられた「阿寒湖の森ナイトウォーク カムイルミナ」が誕生するなど新たな取り組みも。そんな阿寒湖に新たに登場するのが、アイヌ自らが阿寒湖を案内する「Anytime,Ainutime!」なのです。

「Anytime,Ainutime!」のプログラムは全部で4種類。所要時間は種類によって1時間~2時間30分ほど。1泊2日の旅行なら早めに入って参加してもよし、温泉に宿泊した翌日に参加してもよし。阿寒湖でのんびり過ごす休日を体験してみましょう。

個性派揃いの案内役

ツアーの案内役は木彫作家、民芸店店主、アイヌ古式舞踊の踊り手など、普段はさまざまな職業に就いています。その多くが親世代から阿寒湖に根付いており、自らアイヌ文化を伝える案内役を担います。

瀧口健吾さんもその一人。木彫作家の父の跡を継いで民芸店を経営しながら、店先で木彫に勤しみます。ツアーでは木彫作家として阿寒湖に生育する木についての解説が得意。「『木は手で触って覚えなさい』と父からよく言われたものです」。作る道具によって使う樹種が変わるなど、瀧口さんならではの視点で話を聞くことができます。

森と生きるアイヌの精神に触れる「森の時間」

どのプログラムも小学生以上なら参加OK。森を歩く「森の時間」「湖の時間」に参加する際は、動きやすい服装や靴を準備しましょう。

「森の時間」は森と生きるアイヌの精神に触れる旅。阿寒湖のほとりにある「イオルの森」をアイヌの案内役と共に歩きます。

まず森に入る前に「カムイノミ」という儀式を行います。アイヌの言葉を唱えながら供物を捧げます。ツアーでの安全祈願をするのです。

「カムイノミ」が終わったら、いよいよ森の中へ。参加者は「クワ」という先が二股に分かれた木の枝のようなものを持って歩きます。クワはその昔、杖としての使われたほか、先端を切って熊と戦ったという逸話も。背丈ほどの木の杖を持つと、なんだか冒険に出るみたいでワクワクします。

森をしばらく歩くと、阿寒湖の湖岸へ。木々の間から顔をのぞかせるのは「雄阿寒岳」です。夏は深い緑に囲まれて。冬は頭に雪を被って。季節によって見え方が違います。今も昔も変わらぬその姿に、阿寒湖のアイヌたちは何を思い、感じてきたのでしょう。

「森の時間」のラストはアイヌの伝統的な楽器「ムックリ」を演奏します。静かな森に響く「ビヨーン、ビヨーン」という不思議な音色。案内役に教えてもらい、コツを掴んで音をすぐに出せる人もいます。

「森の時間」
大人・子供 共に(1名)5,610円(税込)
所要時間/約1時間30分
対象年齢/小学生以上
定員/2名~10名

アイヌが愛する湖岸の景色と出合う「湖の時間」

「湖の時間」は2時間30分かけてゆったりとアイヌ文化に向き合うプログラム。まずはムックリを簡単な彫刻作業で作ります。「小学校以来の彫刻刀かも」という方でも大丈夫。案内役が傍らで教えてくれます。

ムックリができたら森へ。途中までは「森の時間」のコースを辿り、ムックリの演奏体験をします。後半は「湖の時間」独自のルートへ進みます。

森を抜けると遊覧船の船揚場へ。昔から数多くの観光客を受け入れてきた阿寒湖の歴史を垣間見ながら、ふたたび歩みを進めます。

目的地は大きく開けた阿寒湖の湖岸。晴れた日は雄阿寒岳を背に阿寒湖が広がり、参加者からは「ワーッ」という歓声が聞こえてきます。この絶景に出合えるのは「湖の時間」だけです。

「湖の時間」
大人・子供 共に(1名)7,700円(税込)
所要時間/約2時間30分
対象年齢/小学生以上
定員/2名~10名

刺繍・木彫を体験する「創る時間」

「創る時間」は刺繍と木彫の2種類。どちらも屋内でじっくりとものづくりに取り組むプログラムです。

アイヌの中で刺繍は女性の仕事でした。母から娘へと受け継がれて、女性は物心がつく頃には文様を描く練習をしていたとか。「刺繍は渡す相手がいないとできない。その人に想いを寄せながら布に針を通すのよ」と話すのは講師の西田香代子さん。

プログラムでは文様の下書きが描かれた刺繍キットを使うので、初めての方でも安心。合間にはアイヌの逸話を聞いたり、最後には記念写真を撮影したり。あっという間の1時間です。

木彫体験ではアイヌの伝統楽器「トンコリ」をかたどった木製のチャームに、アイヌ文様を施します。アイヌは「木を彫る」のではなく、「木を彫らせてもらう」という考え方のもと、木に敬意を抱いています。

完成したチャームは、最後に革紐とビーズを組み合わせてペンダントにするか、チェーンをつけてキーホルダーにするかを選ぶことができます。

「創る時間」(刺繍体験・木彫体験)
大人・子供 共に(1名)4,290円(税込)
所要時間/約1時間
対象年齢/小学生以上
定員/2名~10名

「アイヌ料理の店 民芸喫茶ポロンノ」で味わうアイヌ料理

さらにツアー参加者限定のオプションがあります。阿寒湖アイヌコタンにある「アイヌ料理の店 民芸喫茶ポロンノ」による、このツアー限定の料理。1名3,300円(税込)で7品を味わえます。

メニューはアマム(豆やいなきびの入った炊き込みご飯)、ユックオハウ(鹿肉入りの汁物)orチェプオハウ(鮭入りの汁物)のいずれかを選択、カパチェプルイベ(凍らせたまま薄切りにしたヒメマス)、メフン(鮭の腎臓の塩辛)、ラタシケップ(かぼちゃの和え物)、コンブシト(昆布タレの団子)、アイヌ茶の7品です。

ツアーへの参加・予約方法

紹介したツアーはいずれも予約制。2020年4月30日から予約受付開始予定です。ツアーの催行は2020年6月1日から。下記の公式HPで予約が可能です。

また、ツアー内容は変更になることがございます。最新の情報や詳細についても公式HPをご覧ください。

(提供:釧路市)