環境省は2021年3月26日、国内で58カ所目となる国定公園に「厚岸霧多布昆布森国定公園」を新たに指定すると発表しました。指定日は2021年3月30日(火)です。これまで厚岸道立自然公園として指定されていた区域を一部変更し、面積を倍近く拡大して国定公園へ移行することになります。
国定公園化への経緯
厚岸道立自然公園は釧路管内釧路町、厚岸町、浜中町の3町にまたがる21,523ヘクタール。厚岸湖、海鳥の繁殖地で知られる大黒島、別寒辺牛(べかんべうし)湿原、霧多布(きりたっぷ)湿原、霧多布半島、嶮暮帰(けんぼっき)島といった厚岸から浜中にかけてと、釧路町の太平洋岸に面する海岸線一帯が含まれています。
同公園は、1955年(昭和30年)4月19日に指定されました。1984年(昭和59年)に関係町や団体により国定公園への昇格を目指す動きがありましたが、国定公園化に向けて本格的な調査が行われたのは2004年(平成16年)。昨年2020年11月に北海道が環境省に対して指定案の申し出を行い、今年2月の中央環境審議会自然環境部会への諮問・答申を受けて指定が決定しました。
今回の指定は、国内では2020年3月に指定された中央アルプス国定公園(長野県)に続くもので、これにより国内58カ所になります。厚岸霧多布昆布森国定公園の指定に伴い、下記の通り道内の国定公園は6件になります。一方、厚岸道立自然公園の指定解除により、道立自然公園は11件に減少します。
- 暑寒別天売焼尻国定公園
- 網走国定公園
- ニセコ積丹小樽海岸国定公園
- 日高山脈襟裳国定公園(国立公園化を目指す)
- 大沼国定公園
- 厚岸霧多布昆布森国定公園(NEW)
国定公園化で何が変わる?
「厚岸霧多布昆布森国定公園(あっけし きりたっぷ こんぶもり こくていこうえん)」の名称は、厚岸湖や別寒辺牛湿原を含む「厚岸」地域(厚岸町)、霧多布湿原や霧多布岬を含む「霧多布」地域(浜中町)、昆布漁などで文化的景観が見られる海岸線の「昆布森」地域(釧路町)の3エリアを中心とするのにふさわしい名称として正式決定しました。
面積は、道立公園時代の21,523ヘクタールから41,487ヘクタールにほぼ倍増することになります。陸域は32,566ヘクタール、海域は8,921ヘクタールで、海域が新たに含まれるようになります。
もう一つ大きな変更点は、別寒辺牛湿原の高層湿原エリアや幌戸沼(ぽろとぬま)、霧多布湿原上流域などが新たに含まれることになります。これにより、釧路町、厚岸町、浜中町に加えて標茶町南東部(字チャンベツの一部)にかかるため、釧路管内4町にまたがる区域となります。
一方、厚岸町市街地や浜中町市街地は指定地域から除外され、厚岸湖岸の船着き場や釧路町昆布森海岸の集落地などは普通地域へ格下げされます。
国定公園の指定により、自然環境保全のみならず、全国的知名度アップにより地産地消・グリーンツーリズムなど地域振興に様々な恩恵が期待されます。
厚岸霧多布昆布森国定公園に含まれるエリア
大部分が道立自然公園から引き継がれます。公園のテーマは「湿原と断崖が語る大地と海の交わり~生命(いのち)あふれる湿原と海~」です。
特に、海岸線の後退と砂丘の堆積によって形成された「霧多布湿原」、河岸の湛水によって形成された「別寒辺牛湿原」という、形成過程が異なる2つの湿原がほぼ原生的な状態で残されているのが特徴です。さらに、厚岸湖・火散布沼などの海跡湖、海食崖や島しょ部があり、美しい自然景観が見られます。自然景観に加えて、漁業風景という文化景観も要素の一つです。
- 大黒島(厚岸町):ゼニガタアザラシ生息地、コシジロウミツバメの大繁殖地。大黒島海鳥繁殖地として国の天然記念物・鳥獣保護区に指定。
- 厚岸湖(厚岸町):国指定天然記念物のマガンやヒシクイが飛来。国の鳥獣保護区に指定、ラムサール条約登録湿地。
- 別寒辺牛湿原(厚岸町):国内2番目の広さを有する湿原。国の鳥獣保護区に指定、ラムサール条約登録湿地。高層湿原地域を新規指定。
- 霧多布湿原(厚岸町):国内5番目の広さを有する湿原。ラムサール条約登録湿地、霧多布泥炭形成植物群落として国の天然記念物に指定、北海道遺産選定。タンチョウが生息。上流域を新規指定。
- 藻散布沼(もちりっぷ)・火散布沼(ひちりっぷ)(浜中町):海跡湖。
- 愛冠岬(厚岸町)
- あやめヶ原(厚岸町)ヒオウギアヤメ群生地。
- 琵琶瀬湾・嶮暮帰島(浜中町)
- アゼチ岬・霧多布岬(浜中町)
- 尻羽岬(釧路町)
- 幌戸沼(ぽろとぬま)(浜中町):今回新たに指定された地域。
道立公園から国定公園に昇格した厚岸・浜中エリアをぜひ訪ねて、雄大な自然景観をお楽しみください。