築80年以上! すこーし傾いた「日本最古の木製サイロ」を見に行こう

【安平町】 牧場といえばサイロ。サイロといえば牧場。広大な牧場が広がる北海道にはサイロが良く似合う。数え切れないほどのコンクリート製サイロがある北海道において、数は少ないが木製のサイロだってある。しかも、日本最古の木製サイロが、実は北海道にあるのだ。

外側の木材だけで支えるサイロ

日本最古の木製サイロがあるのは、安平町遠浅地区(勇払郡安平町遠浅730番地2、[地図])。JR室蘭本線・遠浅駅裏手「木のサイロパークゴルフ場」に隣接する「山田牧場」内にある。

この敷地内には、最近ではまず見ることのない木製の茶色いサイロが建っている。昭和初期の1930年に建築されたというこのサイロ、細い木板を縦にして円筒型に組み立て、10本近い鉄製の帯で周囲を囲っている。これは「漬物桶方式」と呼ばれる建築法で、中心に柱はなく、釘も使わず、外側の148枚からなる木製の板(厚さ6cm・幅18~25cm・長さ2.6m)だけで支えている。赤い屋根は木造トタン張り。地下を含めると高さ12.7mで、120tのサイレージ(飼料)を貯蔵できるほどだったという。

▼明治時代に建設された空知川の橋の架け替えで払い下げられた木材を再利用したという




よくみると、築80年以上経過しているからか、ピサの斜塔のように少し傾いていることが分かる。屋根の下の部分も老朽化が目立つ状態で、豪雪地帯であれば崩壊していてもおかしくない。はしごは付いているが、周囲に柵が巡らされており、登ることがないように注意書きがなされている。

▼トラクターも置いてある。一風変わった古いトラクターと古いサイロのツーショットも、ここでしか撮影できない。

国内初のチーズ専門工場にも関わり深い最古のサイロ

歴史的背景を見てみると、ここ安平町遠浅地区は古くから酪農が盛んだった。昭和初期に早来地区に約30戸の酪農家が集団入植、このサイロ建築から3年後の1933年には、ここ遠浅地区に日本初の本格的・大規模チーズ工場が建設されている。それゆえに、安平町はチーズ専門工場発祥地とされている。当然ながら、この日本最古の木製サイロで作られたサイレージで飼育された乳牛からもチーズができたわけで、日本におけるチーズ生産の歴史と共に歩んできた遺産、そしてその産業を象徴する遺産ともいえよう。

このサイロ、安平町の歴史を語る上で欠かせない産業遺産として、合併前の旧・早来町時代の2004年5月27日、当時の町文化財保護条例第3条の規定で町文化財第1号に指定された。ちなみに、木製サイロは国内に北海道しか現存せず、それもわずかに3基(日本最古を含む、2004年現在)だった。

歴史を感じさせる貴重すぎる木製サイロ。北海道らしい歴史的建築物として、いつまでも残っていてほしい産業遺産の一つだ。