JR函館駅前にある函館市電函館駅前停留所がリニューアルされ、供用開始となったのが2014年11月26日。その約1年後に発表されたグッドデザイン大賞でグッドデザイン賞を受賞しました。函館駅前電停はどのようにリニューアルされ、今回の受賞に至ったのでしょうか。
一世紀以上の歴史を持つ停留所がモダンなデザインに
函館駅前停留所は1898年に馬車鉄道として開業したのが最初です。北海道新幹線開業を見据えて函館駅前を魅力あるエリアにしたいと2013年3月に策定した函館市中心市街地活性化基本計画事業により、2014年6月から改修工事が行われ、11月26日から運用がスタートしました。
株式会社ワークヴィジョンズ(東京都)がプロデュースを手掛け、同社含む複数企業や公立はこだて未来大学がデザインに携わりました。新電停は、プラットホーム延長30m、幅員は各1.7mで、ホームの幅が多少広がりました。
海風を受ける船の帆をイメージした意匠が随所に
新しくなった函館駅前電停は、港町らしさを前面に出した意匠が特徴です。函館元町地区で見られる繊細なデザインを函館駅前電停でも表現。それは特に上屋架構の曲線に表れています。壁と屋根はそれぞれ厚さ9㎜の鉄板でなっていますが、この鉄板をユニットごとにそれぞれ湾曲加工し、縦長のガラスと交互に配置しました。
湾曲する構造は、海風を受ける船の帆をイメージ。函館の港町らしさを感じさせた、解放感あるデザインになりました。夜間になれば温かみのある照明がホームを照らすほか、ガラス窓から外にもこぼれます。また木製の大きな手すりが付けられ、一部をベンチ化し、高齢者にも配慮したデザインです。
これらの製作には特殊な加工溶接技術を要し、造船業の盛んな函館だからできた技術。工場で製作したユニットを、車通りの多い現場で連結設置する工法を採用しました。今後8つの停留所についても同様の仕組みが採用される見込みです。
グッドデザイン賞受賞に当たって、審査委員は「地域の造船技術をベースとしたスチールワークを用いることは、デザインの地産地消として非常に意義深いプロジェクト」と高評価。リニューアルした停留所が函館駅前の活性化に寄与するか注目です。