【札幌市】本郷通りの一方通行を車で走ると左手にある、絵本を専門に扱っている児童書専門書店「ぶっくはうす りとるわん」。専門店としては札幌市内では2店舗しかないらしい。
お子さん連れのお母さんだけではない来店客
だれでも幼少期には、多かれ少なかれ絵本にふれてきたはずだ。本屋さんへ行くと真っ先に絵本コーナーへ走ったり、病院の待合室には必ずおいてあった。そして自分で読んだり、だれかに読んでもらったり。きっとなにがしかの思い出があるのではないだろうか。
店内に入ると、当然だが絵本専門だけあって、可愛らしい表紙がズラリとならんでいる。
童心にもどりページをペラペラめくりながら、店主の佐々木さんに聞いてみた。
「やはり、お子さん連れのお母さんが多くご来店されるのでしょうね?」
当たり前の質問に、想像とは違った答えがかえってきた。
「それもありますけど、多いのはボランティアさんたちが読み聞かせをするための本を捜しにいらっしゃるケースなんですよ」。
これは絵本を専門書として扱っているのだろうか。ちょっと話をきいてみた。
きっかけは、絵本の里 剣淵町
オープンは今から18年前。元々は大手出版社で勤務されていた。そこで以前も当サイトでも取り上げられていた「絵本の里剣淵町」の立ち上げのお手伝いをしたことがそもそものきっかけだったらしい。その際、ある編集者からの一言が脳裏に焼き付いていた。
「絵本というのはもちろん子供たちのものだけど、実は大人のためのものなんだよ」。
本に関わるプロとして心を揺さぶられた。絵本の館の完成を見届けながら、たしかに絵本原画の保存は作家だけでは難しいと常々感じてはいた。こんな施設がもっと必要かもしれないと一念発起し勇気をもって脱サラした。
やるからには、大手書店と同じ事は絶対にしない。開店当初から、あくまでも自分の好みで、ほかではなかなか手に入りづらいが、買って損はさせないような良質な本揃えをしていこう。そうした一貫したお店作りが評判を呼び、地道だが少しずつ定着し、ぶれずに20年近くたったという。「読み聞かせのボランティアさんをはじめ、絵本と接することが多い方にお越しいただいているようです」と静かにおっしゃった。
「絵本は大人のためのもの」ということの意味
出版不況、活字離れなど、この業界をとりまく環境は厳しい状況が続いて久しい。町の本屋さんもどんどん廃業していき、大手書店の波に飲み込まれていく。その大手ですら安閑としてはいられない。デジタルとどう向き合っていくかはまさに死活問題だ。
その中で「絵本」というジャンルにこだわるのはなぜか。先ほどのあの編集者の言葉だ。「絵本は大人のためのもの」。
現代の市場環境ではロングセラーはなかなか難しい。絵本ではなおのこと。まして対象年齢が限定的だ。なのに大人のためとは一体。
幼い子供がわかるようなわかりやすい言葉や文章で表現されるからこそ、より深厚しその結果、面白みが伝わってくるような気がする。それを読解するには、年齢を積み重ねたほうがより解きほぐしやすいのではないだろうか。良質な絵本で、自分がふれた本は、大人になり、今度は自分の子孫に読み継がれていく。そんな「読物連鎖」はつまり、「大人のためのもの」とは「大人が子供に読み与えるもの」ということではないだろうか。絵本の分野にこそロングセラーが待ち焦がれる。
伝え続けるための材料は、本郷通りの商店街のなかに愚直に存在しつづけている。
▼現在、佐々木さんがオススメの本です
(カメラマン 片山英樹)
▼ぶっくはうす りとるわん
〒003-0024 札幌市白石区本郷通6丁目南2-1 [地図]
TEL/FAX:011-860-1325
水曜日定休日、土・日・祝お休み
営業時間:10:00~16:00