小樽市のJR銭函駅からほど近い場所に、石造りの重厚な建物があります。いかにも歴史のありそうな佇まいで、その周りに漂っている空気すら他とは違っているような感じです。玄関先の暖簾には「珈琲 食事 大坂屋」との文字が。つまりは喫茶店なのでしょうか、おそるおそる訪ねてみることにしました。
大正末期に建てられた倉庫で喫茶店を開業
▼暖簾までもが不思議と味わい深い
暖簾をくぐって中に入ってみると、外観の雰囲気を裏切らないレトロな空間が広がっていました。ここは「ストアハウス大坂屋」(以下「大坂屋」)。前倉崇利さんと久子さんご夫婦で営まれている、喫茶店です。
▼カウンターに立つ前倉崇利さん(左)と久子さん(右)
大正末期に建てられた石倉は、もともと質屋の倉庫として使われていたものでした。それを喫茶店として改装し、オープンしたのが1988年8月のこと。以来、ご夫婦で29年間、変わらずこの場所で営業されてきました。
「喫茶店に改装したといっても、内装もそのままだし、階段もそのまま。お客さんにはこだわってるねって言われるけど、そんなこともないんですよ」と、ご主人の崇利さんはおっしゃいますが、やはりそれなりのこだわりがなければ、この独特な雰囲気は醸し出せないはず。
▼階段の踊り場にはピンクの公衆電話
「大坂屋」というのも、元あった質屋の屋号が外壁に掲げられていたので、そのまま店名にしたのだそう。
▼屋根の下に立派な「大坂屋」の文字
外壁といえば、扉の上にある魚のオブジェも印象的です。
▼どこかユーモラスにも見える魚の表情
なんでも、店内の椅子を手がけた人が作ってくれたものなのだとか。小樽の名物、八角をモチーフにしています。
喫茶店といえば、やっぱり食べたいナポリタン!
さて、気になるメニューをチェックしてみましょう。こうした昭和のにおいを感じさせる喫茶店なら、やはりナポリタンは欠かせないところです。崇利さんお手製のナポリタンを注文すると、出てきたのは……。
▼これぞ由緒正しき喫茶店のナポリタン!
いかにもケチャップの濃厚そうな、昔ながらのナポリタンです。口の周りを赤く染めながら、腕白に頬ばりたくなること間違いなしです。ちなみに「ナポリタン」単品で770円、サラダとコーヒーまたは紅茶が付いた「スパゲティセット」は960円です。
▼ドリップコーヒーは単品で460円
食後のコーヒーは、これまた期待を裏切らないレトロなコーヒーカップに注がれて出てきました。木のスプーンもいい感じで、こうしたディテールにまで至る配慮が、この空間を一層心地よいものにしているのでしょう。
▼ついつい長居してしまいそうな心地よさ
奥さんの久子さんが作るケーキも、おいしいと評判です。常にメニューにある定番ケーキは「リンゴとさつま芋のパイ」と「レアチーズケーキ」。どちらも単品で460円、コーヒーまたは紅茶とセットで770円です。
また、週に1回、それらとは別のケーキがメニューに加わります。取材に訪れた日は「シフォンケーキ」(セットで750円)が焼かれていました。
▼ふわふわのシフォンケーキがコーヒーに合う
ランチに訪れて舌鼓を打つも良し、友だちとおしゃべりを楽しむも良し、ひとり静かにコーヒーブレイクを堪能するも良し。
この空間では、時間の進み方すら外界とは違っているような、ただ座っているだけで悠然とした気分になれるから不思議です。こんな喫茶店が近所にあったら、毎日でも通いたくなってしまいそうです。
所在地:北海道小樽市銭函2丁目3-4
電話:0134-62-6425
営業時間:10時30分~20時
定休日:月曜定休