釧路管内弟子屈町の硫黄山麓に「つつじヶ原」があります。この一帯は、6月中旬になると白い絨毯の花畑が出現します。その正体は、エゾイソツツジ。ピーク時には、新聞でその見頃が伝えられることがあります。
日本最大級の広さを誇るイソツツジ大群落への行き方は? 歩き方は? 楽しみ方は? それぞれ詳しくご紹介します。
つつじヶ原の場所は? 行き方は?
そもそも、つつじヶ原はどこにあるのでしょうか。釧路市から車で約1時間45分 北上したところにある弟子屈町川湯温泉。その南に位置する「硫黄山(アトサヌプリ)」(標高約512メートル)の麓に広がります。
感覚的には、南の硫黄山と北の川湯温泉の間に位置します。面積は約100ヘクタールにも及び、道道52号線沿い西側に南北に広がっています。また、温泉街の探勝路入口から硫黄山駐車場まで「つつじヶ原自然探勝路」(全長約2.4㎞)が、道道にほぼ並行して整備されています。
そんなわけで、硫黄山駐車場からも川湯温泉市街からもアクセス可能です。
つつじヶ原は硫黄山から流れ出た噴出物で谷が埋められて平らな地形になっています。この平地の構造は4区分に分けられます。硫黄山の方から順にハイマツ群生地、続いてイソツツジ群生地、そして広葉樹林や針葉樹林。
ハイマツとイソツツジそれぞれの群生地には展望デッキやテラスが設けられています。これから、その見どころをご紹介しましょう。
イソツツジ群生地「イソツツジテラス」
6月に花の見頃を迎えるイソツツジ群生地のハイライトは、イソツツジ群生地の北端にあるイソツツジテラス周辺です。テラス周辺から南方向、つまり硫黄山を見ると、白煙を上げ続ける硫黄山をバックに咲く白い絨毯が美しく感じられます。
イソツツジは、高さ約1メートルしかない高山植物。高山植物なのに標高150メートル程度のこの場所で観察できるのは貴重です。イソツツジの群落は道内各地にあるものの、ここまでの大規模な群落はほかになく、日本一の広さを誇っています。(アイヌの習慣として、このイソツツジの葉っぱを入れて飲んだという説もあります。特別保護地区なので採取は禁止されています。)
探勝路を歩くと、足元にふわふわとした球状の白い花が可憐に咲いている姿を見ることができます。しゃがんで観察するのが良いでしょう。実は、開けたエリアだと背が低めで、ハイマツ群落の中だと少し背が高めになるという、場所による違いも観察してみてください。
なお、イソツツジのほかにも、ガンコウラン(地面を這うような常緑の植物)やハナゴケの仲間(白っぽい苔のようなもの)も生育していて、雪解けに最も早く花びらを開くのはガンコウランです。
「イソツツジテラス」は、温泉街の川湯エコミュージアムセンターから約1.2㎞・徒歩約30分(探勝路入口から徒歩約20分)、硫黄山駐車場から約1.4㎞・徒歩約30分。両地点のちょうど中間地点に位置します。
ハイマツ群生地「ハイマツデッキ」
硫黄山に最も近いエリアには、少し背丈の高いハイマツが群生します。こちらも高山植物です。6~7月にはハイマツの花も見ることができます。
一般的にハイマツは強風の影響を受けて風下側に枝を伸ばし、背が低めになります。しかし、ここのハイマツは空に向かって伸び、背も約4メートルと高め。強風が少ないという環境がそうさせたと考えられています。
硫黄山駐車場から約700メートル・徒歩約15分の距離に「ハイマツデッキ」があります。登ると、ハイマツ大群落とつつじヶ原全体、硫黄山を見渡すことができます。
自然を学ぶなら川湯エコミュージアムセンター
川湯温泉街には、川湯エコミュージアムセンターがあり、阿寒摩周国立公園のうち摩周・川湯エリアの自然について学ぶことができます。学んでから散策すると、さらに楽しさが増します。近くにある温泉川の無料足湯で疲れを癒すのもありです。
川湯エコミュージアムセンターを起点にすると、探勝路入口までの約400メートル・徒歩約10分と合わせて、硫黄山駐車場までの約2.8㎞・約70分を散策することになります。
探勝路には随所に解説板が設置されているので、イソツツジやハイマツの特徴や生育について学ぶことができますよ。硫黄山とつつじヶ原をゆっくりと散策してみるのはいかが。