ジュエリーアイスって何?十勝川河口で厳冬期だけの自然現象とは

十勝管内豊頃町大津。太平洋に面するこの町では、この地域特有の自然現象が厳冬期に見られます。それは、大津海岸に大小の氷が打ち上げられるという現象。打ち上げられた氷はその神秘的な美しさから、いつしか「ジュエリーアイス」と呼ばれるようになりました。

透明感ある宝石のような氷を見つけて

大津海岸のジュエリーアイス

場所は豊頃町大津市街。市街と砂浜との間を堤防が隔てていますが、堤防を越える潮見橋を渡ると砂浜に行くことができます。海岸に行くと、波打ち際から10~20mほど手前側に氷が打ち上げられ帯状になっている光景を目にします。氷は形もサイズも様々。丸っこいもので、手に持てる氷から、四角く身長ほど大きいものもあります。こうした様々な氷が砂浜を覆っているのです。

氷をよく見てみると透明感があります。中には光の角度によって鮮やかなブルーに輝く氷もあります。このジュエリーアイスはカメラマンの人気を集めていて、シーズン中は小規模の早朝ツアーが組まれることもあります。思い思いに氷を積み重ねたり、波打ち際に好きな氷をもっていったりして、朝日に照らされたジュエリーアイスを撮影するのが楽しみなのだそう。

大津海岸のジュエリーアイス
大津海岸のジュエリーアイス
大津海岸のジュエリーアイス
大津海岸のジュエリーアイス

発生源は十勝川河口の凍結した氷

なぜこの地区の海岸には氷が大量に打ち上げられるのでしょうか。その要因は十勝川にありました。十勝川河口は冬季に凍結しますが、その氷が割れて一度は海に流れ出ます。その後近海を漂流し、しけなど海が荒れると砂浜に打ち上げられるというわけ。波にもまれた氷は角が取れ、丸みを帯びて、手のひらサイズにまでなることもあります。

ジュエリーアイスの打ち上がるエリア
十勝川河口付近

似たものとしてオホーツク海岸に押し寄せる流氷がありますが、流氷は巨大な氷の層のようなものが押し寄せ、その一部が海岸に大きな氷となって残ります。白い色をしており透明感はありませんが、この十勝川河口のジュエリーアイスは透明度と小ささが特徴。それが光と調和すると美しく人を魅了します。

大津海岸のジュエリーアイス

では、十勝川河口南西の大津市街側だけに打ち上げられるのかというとそうではありません。北東側の海岸、トイトッキ浜原生花園側にも打ち上げられます。通常、河口から両側数百メートルの間でこのジュエリーアイスが見られます。規模は気候に左右され、例えば2016年は暴風雪など荒れた天候が続いたため、ジュエリーアイスの当たり年だったようです。

大津海岸にジュエリーアイスが打ち上げられる見頃は、1中旬~2月中旬頃までの1か月とされていますが、自然現象なので発生期間はその都度ご確認を。日中でも観察可能です。なお、打ち上げられた氷が積み重なっている箇所を歩く際は、滑るので要注意です。また、積み重なった氷が崩れて転んだり足を痛めることも考えられますので、その点でも十分注意して歩いてください。

休憩所やトイレも新設!人気観光地となった豊頃町ジュエリーアイスの今


(冒頭写真提供:澤田希望)

(2018年2月23日追記)

豊頃町の大津海岸に打ち上げられる、透明な氷の塊「ジュエリーアイス」。一昨年あたりから、いろいろなメディアに取り上げられるようになり、知名度がかなり上がりました。今年に入って、無料駐車場やトイレの数が増え、温かい飲み物が飲めるお店などもできました。時間帯によっては混み合うほど、今や立派な観光地として栄えているようです。

(写真提供:澤田希望)

前述の通り、北海道ファンマガジンでは2年前(2016年)に一度この地を訪れています。その時は、まだあまり知られた場所ではなく、観光客などほとんどいない穴場でした。しかし、ジュエリーアイスの情報が全国的なニュースになり、それ以降たくさんの人が訪れるようになりました。

▼朝日にきらめくジュエリーアイスを撮影するため集まる写真家たち
(写真提供:澤田希望)

現在(2018年2月)では、海岸への入口手前に駐車場が5つ、トイレが4つ、温かい飲み物などが飲める休憩所が2つ作られています。

▼豊頃町と漁協が共同で運営する休憩所

▼民間の休憩所

ジュエリーアイスが浜に打ち上げられるのは、1月中旬~2月中旬頃までと言われています。ただし、気象条件などにより異なるようで、筆者が訪れた2月11日(2018年)には、以前撮影した写真ほどのジュエリーアイスはありませんでした。

▼打ち上げられているジュエリーアイスはわずかだった2月11日

【動画】大津海岸のジュエリーアイス

ジュエリーアイスが見られる場所は他にも

大津海岸で知り合った地元の人に、ジュエリーアイスの情報を聞いてみたところ、ここ以外にもジュエリーアイスが見られるところがあるという話を聞きました。そこは、まだあまり知られていないので訪れる人も少ないのだとか。これは行ってみなくては、ということで、車を走らせました。

▼大津海岸よりもたくさんのジュエリーアイスが

写真を見ていただいたらわかるように、大津海岸よりもたくさんのジュエリーアイスが打ち上げられていました。しかも、まったく人影がありません。

▼写り込む人がいないのでゆっくりと撮影ができる

ただし、駐車場があるわけではなく、整備もされていない場所のため、はっきりとした位置をお教えできません。ヒントは、豊頃町の大津海岸より車でだいたい20~30分ぐらいの距離です。興味のある方は探してみてはいかがでしょうか?

【動画】波の音だけが聞こえる静かな海岸

2021年は打内海岸に打ち上がった

(2021年3月15日追記)

2020年12月に休憩施設「ジュエリーハウス」を整備した大津海岸に、2021シーズンはほとんどジュエリーアイスが打ちあがりませんでした。河口対岸の打内地区の海岸に多く打ちあがったようです。風向きの影響が大きいようです。

写真提供
EL-Productions(エルプロダクション)
所在地:北海道河西郡更別村南1線89-57
電話:070-1330-9221
公式サイト
Facebookページ