道内各地の特産品や地場産業の話題をお伝えする連載「北洋銀行この街紹介」。今回は、滝川市からお届けします。
滝川市は札幌から車で1時間半ほどの距離にありますが、全国的にはスカイスポーツ、グライダーの街として知られていることをご存じでしょうか。そのきっかけは、1981年の水害でした。水害とグライダーにどういう関係があったのか、紐解いていきましょう。
被害状況を視察した市長のひらめき
滝川市は、石狩川と空知川に挟まれたデルタ地帯にある街です。そのため、昔から水害が度々発生していました。1981年にも、集中豪雨による水害が発生。そこで当時の滝川市長であった吉岡清栄氏は、空から市内の被害状況を視察することにしました。
▼大空を飛行するグライダー
視察中に上空から石狩川河川敷を見て、さらに操縦士と対話する中で、吉岡市長の頭にある考えが浮かびました。
「滝川に飛行場をつくることで、子どもたちの夢が膨らむんじゃないだろうか。未来を拓くことに繋がるんじゃないだろうか」
視察を終えた吉岡市長は、すぐさま札幌航空協会に適地調査を依頼。滝川は滑空場としての立地条件に恵まれていること、さらには滝川の周辺は航空管制の制約が少なく、グライダー飛行に必要な上昇気流も発生しやすいという、好条件に恵まれているとの結果を得たのです。
▼軽飛行機にえい航され離陸するグライダー
とはいえ数あるスカイスポーツの中から、なぜグライダーが選ばれたのでしょうか。それは、件の水害視察の際、操縦士を担当していた吉田勝三氏がグライダー愛好家だったことも大きな要因です。
グライダーはエンジンではなく、上昇気流をつかまえて飛行します。そのためエンジンに起因したトラブルもありません。また、飛行速度や着陸速度が遅いため、空を飛ぶものの中でもっとも安全性の高い乗り物と言われています。そんなことも、グライダーに着目した理由でした。
▼上空へと引っ張られていく
吉岡市長の行動は早く、翌年の1982年には滝川航空協会を設立。滝川滑空場をオープンさせ、北海道大学からグライダーを譲り受けます。こうして、滝川市のスカイスポーツの歴史が幕を開けたのです。
飛行機とはまた違う、感動のグライダー体験
▼たきかわスカイパーク
現在、滝川市中島町にある「たきかわスカイパーク」は、日本を代表するグライダーセンターとして国際的にも知られています。年齢制限や体重制限はあるものの、誰でも気軽にできるグライダー体験は、滝川市に行った際はぜひ挑戦してほしいところです。
▼今回取材に協力してくださったたきかわスカイパークの清水拡智(ひろとし)フライトインストラクター
2人乗りのグライダーに、まずはパイロットと共に乗り込みます。グライダーは軽飛行機でえい航されて離陸。そのまま上空500mくらいの高さまで引っ張り上げられます。
▼えい航されるグライダーの中から見える景色
軽飛行機と切り離された後、グライダーは自由な飛行を続けます。グライダーにはエンジンがないため、飛行機とは違い、しんとした中で風を切る音だけが響きます。まさに鳥になったような、感動的な瞬間です。
▼眼下に広がる北海道の大地
上空から眺める北海道の大地にも、きっと心躍ることでしょう。石狩川を挟んで、新十津川町と滝川市の市街地も小さく見えます。
▼たきかわスカイパークのハブハウス内
所要時間は、事前の説明などを含め約30分。冷めやらぬフライトの興奮を胸に、たきかわスカイパークのセンター内にある休憩所でひと休みするのもいいでしょう。
▼スカイミュージアム内
センターの横にはスカイミュージアムも隣接しています。ここでは古い機体から最新の機体まで、現役のグライダーが展示されていて、30年以上にわたって続いてきた滝川市のスカイスポーツの歩みを感じることができます。
ひとりの市長の英断が、グライダーの街として、今や滝川市の名を日本全国、いや世界中に轟かせるまでになりました。そして当初の願いであった「子どもたちに夢を」という思いも、きっと頭上に舞うグライダーの姿を通して、地元の子どもたちに届いていることでしょう。
北洋銀行 滝川支店
所在地:滝川市大町1丁目1番1号
電話:0125-22-2181
グライダー体験~大空への憧れ 鳥とともに飛び、雲と戯れる~
料金:大人7,500円(税込)、小学4年生~高校生4,000円(税込)※料金には体験指導料と保険料も含む
開催期間:4月下旬~11月上旬
所要時間:前後の説明時間等を入れて約30分
集合場所:たきかわスカイパーク
※事前に電話、メールなどで申し込みをしてください。