市町村別人口推移の歴史-函館が道内最大だった?

道内の約3割(32.4%)の190万人を擁する道内最大都市、人口増加数・増加率全国トップレベル、政令指定都市であり、全国第5位。この特徴から札幌市であることは誰でも分かりますが、道内最大の都市札幌市がかつて道内3位だったことは意外と知られていません。

一方、函館市がかつて道内最大の人口を誇っていたこともあまり知られていません。今回は、道内の主要市町村の人口変遷、人口ランキングの歴史について特集します。

北海道開拓の歴史は道南からはじまった

北海道の人口推移を考えるに当たり、まず北海道の歴史を簡単に知っておく必要があります。アイヌの人たちが住んでいた北海道に和人が渡ってきて、室町時代の1456年には「道南12館」があったとされています。その一つ箱館が道内の中心地となり後の函館となりましたし、箱館・江差・福山(松前)が当時の道内3大港として発達していました。つまり、道南から人口が広まっていったというわけです。

しかし、広い道内の中心が箱館(函館)だと南に偏在するという指摘と、ロシア南下政策対処として、もっと中央に本府を置くようになります。明治時代初期1869年に、函館から見て奥地にあたる札幌(建設前は和人2世帯のみ居住)に、北海道開拓使が設置され、札幌市街地の区画造成が始まり、1875年に初の屯田兵が琴似に入植しました。

函館が道内1位の時代

1889年当時道内に市はありませんでした。函館区が道内1位で52,909人で全国16位、札幌区16,876人で全国79位でした。ちなみに釧路市は、のちに道東最大都市になりましたが、明治時代初期には根室が道東最大都市でした。

以下は1920年の調査ですが、札幌が3位、函館が道内1位であったことがわかります。特筆すべき点としては、当時炭鉱の町・夕張や美唄(当時は沼貝)がトップ10にランクインしていることです。夕張は1950年調査まで一時期を除き6位を継続、以降炭鉱閉鎖相次ぎ人口激減しました。

1920年国勢調査上位10都市

1位 函館区 144,749人 (全国9位)  港湾都市・本州と接続
2位 小樽区 108,113人 (全国13位) 経済の中心地
3位 札幌区 102,580人 (全国15位) 行政の中心地
4位 旭川区  61,319人 (全国36位) 陸軍駐屯地の街
5位 室蘭区  56,082人 (全国39位) 鉄鋼の街・港湾都市
6位 夕張町  51,064人 (全国42位) 炭鉱の街
7位 釧路区  39,392人 (全国57位) 炭鉱と漁業の街・港町
8位 沼貝村(美唄市) 32,321人 炭鉱の街
9位 野付牛町(北見市) 30,152人 農業と交通の要衝
10位 網走町 27,899人 オホーツクの港町

札幌市が道内1位になったのはいつか

1922年8月1日、道内最大6区が一斉に市制施行しました。札幌市、旭川市、函館市、釧路市、室蘭市、小樽市となりました。5年後の1925年、札幌市は小樽市を抜いて2位に、1940年の国勢調査では函館市も抜いて道内1位となります。それ以後札幌市は人口道内一の座を守り続けています。

他の5都市が人口増加していなかったわけではありません。増加していましたが、札幌市の増加率が群を抜いていたのです。小樽市は1925年以降増加率が減少し1960年調査以降人口減少、函館市は1930年以降増加率が減少しました(函館市の人口が1975年調査に急増しているのは、1973年に隣接の亀田市を合併したため)。

1950年国勢調査上位10都市

1位 札幌市 313,850人
2位 函館市 228,994人
3位 小樽市 178,330人
4位 旭川市 123,238人
5位 室蘭市 110,443人
6位 夕張市 99,530人
7位 釧路市 93,357人
8位 美唄市 87,095人
9位 芦別町 58,547人
10位 三笠町 54,476人

※このころは夕張、芦別、三笠、美唄と空知炭鉱都市がトップ10に名を連ねる時代だった。トップ20まで見ても、岩見沢、赤平、歌志内といった空知の都市がランクインしていた。

1970年に100万人を突破した札幌市

戦後、札幌市は全国10位の30万人超を果たします。旭川市は戦後に周辺町村と合併を続けたり、道北圏の中心として人口が集まり始めました。これにより、旭川市は1950年以降高い人口増加率を続け、1960年には小樽市とほぼ同じ人口になり、1965年までに3位小樽市と2位函館市を一気に抜き去りました。

夕張市は1960年には最高の107,972人であり、帯広市とほぼ同じ人口でした。また、函館市は1973年に隣接する亀田市と合併し、大幅に人口が増加しました。

札幌市は1970年10月1日現在で100万人を突破し国内8番目の百万都市になり、1972年冬季五輪開催年に政令指定都市に指定されました。札幌市は全国5位の人口を誇っています。

小樽市の順位は下がる一方で、1970年調査で釧路市に抜かれたのをはじめ、帯広市、苫小牧市にも抜かれ道内7位になってしまいました。

長年、5位帯広市と6位苫小牧は拮抗していましたが、2004年に帯広市陸上自衛隊第五師団が旅団化したことに伴い、苫小牧市が5位に浮上しました。

こうして、道内主要都市人口の順位は長年、1位札幌市、2位旭川市、3位函館市、4位釧路市の4大都市で固定されてきました。

2005年国勢調査の主要都市人口

1位 札幌市 1,880,863人 政令指定都市
2位 旭川市  355,004人 中核市
3位 函館市  294,264人 中核市
4位 釧路市  181,516人 道東最大都市
5位 苫小牧市 172,758人 北海道の海の玄関口
6位 帯広市  170,580人 十勝最大都市
7位 小樽市  142,161人 札幌外港・後志最大都市
8位 江別市  125,601人 札幌ベッドタウン
9位 北見市  110,715人 オホーツク圏最大都市
10位 室蘭市  98,372人 胆振の中心都市

トップ10入りしたことがある市区町村

国勢調査において、かつてトップ10入りを果たしたことのある市区町村は、下記のとおりです。

札幌市(札幌区時代含む)最高1位、S15以来1位
旭川市(旭川区時代含む)最高2位、S40以来2位
函館市(函館区時代含む)最高1位、S10以前1位
釧路市(釧路区時代含む)最高4位、S45以来4位
帯広市(帶廣町時代含む)最高5位、H2以来5位
苫小牧市(苫小牧町時代含む)最高4位、H17以来5位
小樽市(小樽区時代含む)最高2位、T9に2位
室蘭市(室蘭区時代含む)最高4位、S15に4位
夕張市(夕張町時代含む)最高6位、S25まで6位(S10除く)
美唄市(沼貝村・沼貝町時代含む)最高7位、S22に7位
江別市(江別町時代含む)最高8位、H7以来8位
北見市(野付牛町時代含む)最高9位、T9、S45以来9位
網走市(網走町時代含む)最高10位、T9に10位
岩見沢市(岩見澤町時代含む)最高9位、T14、S5に9位
三笠市(三笠山村・三笠町時代含む)最高9位、S15に9位
芦別市(芦別町時代含む)最高9位、S25に9位
豊平町(現在札幌市の一部)最高10位、S35に10位

2035年の人口ランキングはどうなる?

厚生労働省の機関である「国立社会保障・人口問題研究所」が、2008年12月24日に「2035年の市町村別人口推移」統計結果を発表しました。

全国市町村別の将来の人口予想ということで、2005年と比較して、30年後の2035年にはどのくらいになっているか、そんなデータが公表されています。将来の合併などは考慮されていませんが、だいたいの人口推移を見ることができます。あなたの市町村は減りますか?

減少する市町村と増加する市町村

たいていの市町村が減少するようです。道都札幌市でさえ、例外ではありません。しかし、中には増加するところもあるようです。その一つが、上川管内東神楽町。9194人から9277人に微増すると予想されています。増加率0.9%。もう一か所は十勝管内音更町。42452人から44553人に増加すると予想されており、増加率はなんと105%。旭川市や帯広市のベッドタウンとして現在も成長中の町です。

一方で、減少するのが圧倒的多数。減少率トップなのは、渡島管内福島町。5897人から2322人へと39.4%の減少です。いい勝負なのが財政再建団体夕張市で、39.8%の減少です。

日本最小人口の市である歌志内市では、減少率41.7%になり、人口が2179人のミニマムな市になるという驚きの数字が。札幌市は現在188万人ですが、175.6万人に減少するということだそうです。市では、減少率90%台となるのは、札幌市以外では北広島市~千歳市の3市だけというのも興味深い。

北海道全体で言うなら、562.7万人が現在の人口ですが、441.2万人に減少するといわれています。

市人口ランキングにも変動が?

こうした減少率の違いにより、道内都市別人口ランキングが変わることも十分予想されます。1位は札幌市ですが、以下のように、現在道内4位の人口を誇る釧路市や7位の小樽市がランクダウン、12位の千歳市がランクアップとなる可能性があります。

2035年の人口ランキング予想
1位 札幌市 175万人
2位 旭川市 26万人
3位 函館市 19万人
4位 苫小牧市 14万人
5位 帯広市 13万人
6位 釧路市 12万人
7位 江別市 11万人
8位 北見市 10万人
9位 千歳市 9万人
10位 小樽市 8万人

こんな結果になりましたが、この予想が的中してしまうのかどうなのか、今後の動向に注目したいところです。