駅構内の音威子府そば「常盤軒」閉店―80年超の歴史に幕

上川管内音威子府村の音威子府駅で音威子府そばを提供する「常盤軒(ときわけん=西野商店)」が2021年2月8日に閉店し、80年を超える歴史に幕を下ろしました。

1933年に創業し三代目

JR音威子府駅・交通ターミナル

音威子府交通ターミナル・JR宗谷本線音威子府駅構内の待合所の立ち食いそば店「常盤軒」は、のれんに掲げる通り「音威子府そば」が名物。利尻昆布や煮干しを出汁にした風味豊かなつゆ、そして何よりも畠山製麺(同村)製の真っ黒いそばが最大の特徴で、「駅そば」として愛されてきました。

その歴史は昭和初期、1933年(昭和8年)にさかのぼります。3代目店主 西野守さんの祖父が創業したのがはじまり。当時の村名「常盤村」にちなんでいます。3代目店主は1958年から修業を積み、1975年に2代目の父親の跡を継いで現代まで営業を続けてきました。

音威子府駅はかつて、宗谷本線と天北線(1989年廃止)の分岐駅であって列車の本数も多く、列車までそばを届けたり、幕の内弁当など駅弁を販売したりしていたことがあります。1990年の駅舎改築に合わせ、ホーム上の乗り継ぎ待合所から駅舎内に店舗を移動しました。店主夫婦は高齢などを理由に、2018年8月から翌年4月まで休業しました。

管理者である村は2月8日付で閉店のお知らせを掲出。お知らせによると、「感染症感染拡大の影響により、昨年2月頃から臨時休業されておりましたが、昨年秋頃から店主である西野守様が体調を崩され、その後病気療養中」だったとした上で、「2月7日に・・・・・・永眠された」と記述しています。

全国から愛された名物駅そば

音威子府そばは黒いそばで有名

古くから鉄道旅行者の間で知られる「常盤軒」。最北の駅そばで、日本三大駅そばの一つ、日本一の呼び声も高い駅そばと評する人も。同店の長い歴史は、黒いそばが特徴の「音威子府そば」を一躍有名にしました。

営業時の営業時間は10時半~14時までの昼前後のみ。売り切れ次第で閉店しました。おしながきによれば、かけそば(370円)、月見そば(420円)、天玉そば(520円)、天ぷらそば(470円)、お土産そば(400円)を提供していました。シンプルな天ぷらをのせた天ぷらそばは特に人気の一つでした。駅そばならではのスピード感に驚かされるものでした。また、音威子府そばの生そば(一束400円)、乾めん(一束1200円)、そばたれも店頭で販売していました。

シンプルな天ぷらが入ったそば

「常盤軒」の閉店を受けて、「忘れられない味」「唯一無二の味」「寒い冬には体も心も温まった」「音威子府の象徴が・・・・・・」などと、思い出や惜しむ声が上がっています。

なお、音威子府そばは、道の駅おといねっぷ内のお食事処「天北龍」、「一路食堂」、天塩川温泉レストラン(執筆時点で休業中)で味わうことができます。また、畠山製麺所では音威子府そばを引き続き製造されていますので、購入することも可能です。