タマネギ王国北海道は発祥地

8月ころになると、道内の主要タマネギ産地の農地では、タマネギの独特
のにおいが充満します。国内最大の生産量を誇るだけでなく、国内での食
用タマネギ栽培の発祥地でもあります。

タマネギ王国、生産量日本一

全国のタマネギ生産量の約半分が北海道産です(2004年度は54%)。国内
ではほかに関西や九州、愛知を中心に栽培されています。道外各府県は1割
以下程度の生産量ですので、北海道の生産量がずば抜けていることがわか
ります。

道内では、やっぱり日照時間が長い上に寒暖差が激しいため良質のもの
ができる北見地方のタマネギが有名。道内の約半分が北見産ともいわれる
ため、国内タマネギ生産の4分の1が北見のタマネギともいえます。ほかに
後ほど触れるタマネギ栽培発祥地の札幌をはじめ、岩見沢、富良野でも多
く生産
されています。分類は「黄タマネギ」が多いのが道内の特徴。

北海道は春にまいて夏から秋に収穫しますが、道外では秋にまいて初夏
に収穫するというのが主流。秋の収穫期には、1.2t入るといわれる鉄製網
型コンテナにいっぱいに詰まったタマネギを見かけます。北海道ではこの
コンテナを低温貯蔵しておくものもあります。

タマネギ栽培事始

国内ではじめて、食用としてタマネギが栽培されたのは、明治時代の1871
年のことでした。開拓使黒田清隆氏によって、イエローグローブ
ダンバース
というタマネギの種子を機械とともにアメリカから輸入し、試
作栽培が行われました。1878年には米国の農学者でお雇い外国人、札幌農
学校のウィリアム・P・ブルックスが札幌の元町で本格的に栽培を開始しま
す。

こうして札幌村(現在の東区)でのタマネギ栽培の基礎が築かれたわけで
すが、その途上には、いろいろな試行錯誤があったといいます。完熟が難
しかったのですが、子供が葉を倒してしまったものだけ立派なタマネギが
できるということにヒントを得、人手で倒してみるという方法も生まれま
した。現在でも自然に倒れない場合人工的に倒しています。

ブルックス氏はタマネギ栽培技術を農家に伝授し、1880年に中村磯吉と
いう農家が初めて栽培を開始しました。こうして、あの有名な「札幌黄
(きい)(き)」
という品種が札幌では定着していくことになります。後に海
外へ輸出され、国内三大タマネギ産地のひとつになりました。

札幌黄は、道内産タマネギのルーツともなり、やわらかく、甘みがある
のが特徴ですが、病気がち、貯蔵が難しい、やわらかいから機械で収穫が
難しいなどの理由から、1970年代ころに生産は減少しました。現在、道内
の数パーセント、札幌市内でも栽培面積約4ha、収穫量200tしか生産されず、
いまや「幻のタマネギ」になっています。ちなみにこの札幌黄、2007年に食品の世界遺産「味の箱舟」に登録されました。

タマネギのいろんな品種

8月に早くも収穫されるものから、秋に収穫されるものまでさまざま。
道内で代表的なのは辛味が強く貯蔵も容易な「スーパー北もみじ」
8月に収穫が始まる「北はやて2号」は辛味は少なくやわらかいのが売り。

「トヨヒラ」「蘭太郎」、札幌黄の欠点を補った「さつおう」なんてい
う品種も近年誕生しました。空知管内栗山町では2005年9月、外見が赤い
「さらさらレッド」という品種も開発されました。栄養が高いことと濃い
味が特徴で、名前のとおり血液さらさら成分が通常の最大3倍含まれます。
栗山町の農家だけが生産できる栗山ブランドになりつつあります。

タマネギ産地北海道ならではの……

オニオンくん……北見市のタマネギの頭をしたマスコット。カントリ
ーサインに描かれている。
タッピー……タマネギ栽培発祥地の札幌市東区が制定したマスコット
(妖精)。タマネギとハッピーをかけわせた名前(一般公募)で1992年12月3日
誕生。