帯広市の中心部、駅前通りにある老舗レストラン「ふじもり」。平日には街中で働く人達が、週末にはあちこちから、ランチや夕食、時には宴会にと訪れます。その「ふじもり」を訪れた人が笑顔になるのが、「いらっしゃいませ」という言葉とともにテーブルにおいてくれる「メロンソーダ」。十勝・帯広の人には当たり前でも、初めて訪れた人には「頼んでないですけど……」とちょっと驚きのサービスかも知れません。
お水ではなくメロンソーダが出てくるワケ……お客様の笑顔に会いたくて
お店に入ってオーダーしたものが届く前に、シュワッとのどを潤せるのが嬉しいのですが、他では見られないこのサービスについて、「ふじもり」の代表取締役社長 藤森裕康さんにお話をうかがいました。
▼藤森裕康社長(55歳)。2006年に「ふじもり」「インデアン」などを展開する株式会社藤森商会の社長に就任。「時代を先取りし、お客様に喜ばれるお店を。そして十勝・帯広になくてはならないお店と言われることを目指してスタッフとともに進んでいます」と話します
「お水ではなくジュースをお出しするというのは、おそらく昭和40年代に始めたことだと思いますね。何せ私の記憶もそこまではないもので…(笑)」と話す藤森社長。昭和40年代というと、外食は特別な楽しみだった時代。「ジュースもごちそうに感じられていた時代です。先代の社長が、そんな楽しい時間を思い出に刻んでほしいと、子どもさんの笑顔のためにジュースをサービスで出し始めたようです。わぁ~いって言って、喜んでくれるでしょう? それが社長も嬉しかったと聞いたことがありますね」。
以前はファンタのアップル、レモンだった時代もありますが、現在はきれいなグリーンのメロンソーダ。今でも子どもたちはもちろん、大人も笑顔になる魔法の飲み物。
「今は、お子さんに甘いものを控えている親御さんもいらっしゃいます。ジュースサービスの役目は終えたかな? と思うこともありますが、やっぱりお客様の笑顔を見ると、まだ続けたいですね。お店に来るお客様全員からメロンソーダはいりませんと言われるまで続けますよ(笑)」と藤森社長。お客様の笑顔のために、まじめにまっすぐ……そんな「ふじもり」のおもてなしの気持ちが、メロンソーダなのです。
だから地元に愛されるレストラン
十勝はいまや食材の宝庫。さまざまな海の幸、山の幸、里の幸がそろい、日本の食糧基地とまで言われています。そうした十勝の発展とともに歩んできた「ふじもり」は、なんと1899年(明治32年)の創業。100年以上の歴史を誇ります。
創業当初は、帯広駅構内で「待合所」として営業を開始。戦前に「藤森食堂」と名を改め、終戦後に駅前に店を移し本格的に食堂を始めました。三代目となる藤森照雄さん(裕康さんのお父様)が、ジュースのサービスを始めました。以来「ふじもり」のスタイルとして定着、現在へと続いています。1978年(昭和53年)には現在のふじもり本店ビルが完成し、ご宴会・お食事「ふじもり」として帯広駅前の顔ともなっています。
2006年に裕康さんが代表取締役に就任しましたが、お父様から数々のことを教わったと言います。「父とは日々の仕事の中で、とにかく会話をしました。父は、十勝・帯広の人に育ててもらった、だから食を通して恩返しをしたい、家族が笑顔で楽しめる場所でありたいと。そして、十勝・帯広で2番目においしい店でありたい。一番おいしいのは、お母さんの手料理、家庭の味わい。だから2番目においしい店を目指していると、それが『ふじもり』のこだわりです」と話します。
▼お客様の注文の記入するシートの裏面に記された「ふじもり」のこだわりを感じてください
「ふじもり」のメニューは、どれも親しみやすく、天ぷらやハンバーグなどの定食や丼物などのセットメニューから、カレー、グラタン、スパゲティなどの洋食メニューまで、デザートやドリンクも含めると100種類以上のラインナップ。幅広い世代、だれもが気軽に楽しめます。また、宴会メニューも豊富。宴会の内容、集まる人の年代や好み、予算に合わせてくれるので、「食べられないものがない」という言葉をよく聞きます。
それだけ地元に親しまれ、愛されているレストランが「ふじもり」なのです。
スタッフの笑顔がお店をつくる
藤森社長は言います。「この会社で働く人は、私も含め、みんな縁あって一緒に働いているのです。日頃私たちが働く姿勢がお店を作ります。疲れた顔、辛い気持では、お客様に本当の笑顔でサービスはできません。お客様と同じように、スタッフそれぞれが家族とともにすごす時間を大切にできるようにしましょうと。ですから、パートさんやアルバイトさんも長く働いてくれている人が多いです。嬉しいことです」。
心身共に健康でなくては、いい笑顔でお客様を迎えられない、おいしい時間・楽しい時間と空間をつくることができないと。それも「ふじもり」が大切にしていることのひとつです。
帯広名物「豚丼」も長年人気のメニュー
▼「ふじもり」の数あるメニューの中でも、定番人気はやはり「豚丼」。秘伝のタレで香ばしく焼き上げた豚肉は、程よく弾力があり、ご飯との相性も抜群。お味噌汁、漬物がついて950円。また、普通飲食店で出されるお水が、「ふじもり」では最初の1杯がメロンソーダ。おもてなしの心を飲み干してください
「ふじもり」には年間1万人以上のお客様が訪れます。幅広い年代のお客様に安くおいしい料理をお届けする、その姿勢は創業以来変わらず目指しているものだと話す藤森社長。
今やすっかり帯広名物となった「豚丼」も「ふじもり」の定番人気のメニュー。厳選した十勝産の上質な豚ロースをうまみを引きだしながら、肉が縮まないように遠赤外線でじっくり焼き上げます。豚肉のほのかな甘さを感じられるでしょう。長年使われている甘辛いタレに何度も肉をくぐらせ、柔らかく味わい深く仕上げます。
その味わいが好きで、遠方から通ってくる人も多いとか。ぜひ、メロンソーダとともに、帯広の美味しさを感じてください。
▼JR帯広駅に近いアクセスの良さも観光やビジネスで訪れる人に人気。お店の隣には駐車場もあります。店内にはさまざまな席があるので、一人でも、家族、大人数でも気軽に入れます
帯広のソウルフード「インデアン」のカレー
ところで、帯広名物といえば「インデアン」のカレーも忘れてはいけません。実は「インデアン」は「ふじもり」が展開しているカレーショップなのです。手軽で安くて、美味しい。まさに「ふじもり」の心をぎゅっと凝縮しているのが「インデアン」。次回は、「インデアン」の魅力をお伝えします。
▼ご宴会・お食事 ふじもり
所在地:帯広市西条南11丁目8
TEL:0155-26-2226
営業時間:11:00~21:00(L.O 20:45)
定休日:火曜