網走のあちこちで見かけるこけしのような「ニポポ」って何?

網走市に行くと、市内あちこちで見かける角ばったこけしのような形をしたモニュメント。これを「ニポポ」といいます。ニポポっていったい何ものなのでしょうか? どこで見られるのでしょうか?

網走市内に隠れたニポポを見つけてみよう!

網走市内にはニポポがあちらこちらに隠れて潜んでいます。よく見てみないとわからないものから、遠くからでもわかるものまでさまざまです。では市内にあるニポポを一つずつ紹介しましょう。かつては網走駅前や網走刑務所にはニポポをかたどった電話ボックスがあったり、能取岬に比較的大きめのニポポがあったりしましたが、徐々に減少してきました。現在は橋、フェンス、モニュメントとして鎮座しています。

▼網走駅前街灯。3方向にニポポがぶらさがって夜の網走駅前を明るく照らす

▼網走刑務所・網走川堤防フェンス。刑務所前にあったニポポ電話ボックスは撤去されたが、入口の鏡橋から網走港側に続く網走川堤防フェンスに335体のミニニポポがずらり。世界最大の数を誇る

▼博物館網走監獄内。有料。「ニポポの女神」と呼ばれる小さめのニポポはここだけのもの

▼アプト4商店街・西3プラザ、南4条西3丁目の緑道に鎮座するのがこちら、比較的大きめのニポポ

▼国道238号線の大曲橋。橋のフェンスの両側、合計4つのニポポが見守っている

▼網走海鮮市場前。見上げる高さ、世界最大のニポポ。流氷と一緒に撮影可能

※2020年9月追記:網走海鮮市場の閉鎖に伴い、建物とともに解体撤去されてしまいました。

▼天都山オホーツク流氷館前。世界で一番高いところにあるニポポ。比較的大きめのニポポで、かつて存在した能取岬のものとは兄弟だった

▼網走市郷土博物館内。有料。ニポポの最初の試作品が展示されている唯一の場所

ニポポ、その意味とは?

こんなに網走ではなじみの深いニポポですが、ニポポとはいったい何なのでしょうか? ニポポとは樺太アイヌの人たちの言葉。意味は「小さな木の子供」、もっと分かりやすく言うと「小枝」という意味です。樺太アイヌのマスコットの一つですが、ただのマスコットではありません。

ニポポは、昔から「幸運のお守り」として作られてきました。材料は、木の枝、大きいのであれば幹を使いました。アイヌの人たちは、子供が誕生した際に、「健やかに育つように」という願いを込めて、お守りとして木の小枝を赤ちゃんの着物に結びつけたとされています。

▼博物館網走監獄内に展示されるニポポ人形

ニポポのはじまり

しかし、昔は現在のようなこけしのような彫刻があったというのではないようで、1954年に考案された民芸品が、名物「ニポポ」として広まるようになりました。その原型といえるのが、樺太・ウイルタ族またはニブヒ族の類似した木彫り神「セワポロロ」です。実は、縦長な体型、顔などが、現在の網走のニポポと酷似しているのです。

このセワポロロをもとに、網走博物館初代館長・考古民俗学研究家の米村喜男衛氏が民芸品を作ることを提案しました。当時網走刑務所では、囚人たちの仕事が少なかったので、何かないかということで、ニポポ制作の案がでてきたというわけです。

ニポポ制作に際しては、樺太の新問(ニイトイ)出身でアイヌ文化伝承者の高山長兵衛氏が指導し、彫刻家の谷口百馬氏が原形を制作、実際に制作したのが網走刑務所の囚人たちでした。これを1956年以降、民芸品として市をあげてPRするようになり、現在にいたるというわけです。

▼道の駅流氷街道網走・観光案内カウンターにあるニポポ人形

現在でも、ニポポ人形制作は網走刑務所の受刑者が手作りで制作しています。使用している木は槐(エンジュ)。サイズは高さ9cmを最小サイズにして、3~4cmおきに最大42cmまでの合計10種類が制作されてきました。完成したニポポは、網走観光協会を通して、市内の道の駅や観光土産店の店頭に並びます(網走刑務所の店舗では販売していません)。また、商標登録されており、網走市でのみ販売されています。

網走に行った際はニポポにも注目してニポポ巡りをしてみるのもいいのではないでしょうか?

▼カントリーサインもニポポ