石狩のとある和洋菓子店で、くずバーなるものが話題になっているとの情報を聞きつけました。くずバー? 何ものなのか検討もつきませんが、不思議と興味をそそられる名前ではありませんか。くずバー。果たしてくずとは何なのか、バーとは何なのか。くすぐられっぱなしの好奇心を抱いて、石狩へと足を運びました。
新食感の溶けないアイス!?
▼赤い建物が特徴的ななかむら
向かったのは、1945(昭和20)年に芦別にて創業、ここ石狩の地では45年もの長きにわたって愛されてきた「和洋菓子のなかむら」さんです。店舗の前に、もうすでに堂々たる「くずバー」の幟が立てられているではありませんか。しかも幟には小さく「溶けないアイス」との文字が。ますます、検討もつきません。
▼三代目取締役工場長の中村幸治さん
三代目となる中村幸治さんに、くずバーとは何か尋ねたところ「作る行程を見てみますか?」とのこと。それは話が早いと、お願いしました。
▼くずバーの作り方を見せてもらいます
作業台の上には、真っ白なくず粉が。なるほど、くずバーのくずは、くず粉のくずだったんですね。
▼火にかけてどろりとしたくず
くず粉とグラニュー糖に水を加え、火にかけて煮溶かしていきます。沸騰したら、火を止めて80℃まで温度を下げます。その間、ずっと混ぜ続けています。
▼味の決め手となる果汁を投入
さらに果汁とクエン酸を入れて混ぜ、羊かんの型に流し込みます。
▼この状態でひと晩寝かせる
果汁の色に染まったくずを型ごと冷凍庫に入れ、ひと晩寝かせます。翌日、寸法に合わせて切り分け、棒を刺せば出来上がりです。
▼なんとも美しい出来上がり
さっそく、いただきました。ひと口目でビックリ、今まで食べたことのない食感です。アイスバーのようなものを想像していたのですが、まったく異なります。冷たいけれど歯に突き刺すような刺激はなく、むしろぷよんとした優しい歯触り。お客さんからも「歯がキーンとならない」「歯に染みない」と、驚きの声が寄せられているのだとか。
▼味もいろいろで楽しさいっぱい
開発したのは、2017年のゴールデンウィークが開ける頃。「他で作っていないもの、さらに和菓子屋ならではの素材を使ったものを作りたかった」と、三代目の中村さん。いちご、白桃、マンゴー、ブルーベリー、みかん(季節によってはオレンジ)の他、期間限定で和梨やメロンなど、さまざまな味が加わります。冷やして食べるのはもちろん、溶かして食べてもゼリーのようでおいしいと評判です。
他にもユニークな品がたくさん
▼和菓子も洋菓子も豊富に並ぶ店内
なんとも魅力的なくずバーを開発した「和洋菓子のなかむら」さんですが、他では食べられない新感覚のお菓子はまだまだあります。たとえば「いしかりの詩」というシリーズ。
▼いしかりの詩
パッと見たところ、洋菓子のように見えます。しかし割ってみると餡のようなものが入っていて、和菓子のように見えます。実はこれ、白餡に卵と生クリームを混ぜた生地を焼いたお菓子なんです。
▼左からチーズ、梅、ブルーベリー
しかも、中に入っている餡はブルーベリーだったり梅だったりと、洋のような和のような。食べてみると、こちらもくずバー同様、食べたことのない食感に驚きます。スポンジのように見えた生地は、ほろほろと崩れ、口の中でサッと溶けていくのです。
▼石狩十三場所
また、かつて幕府に鮭を献上していた時の献上箱の形をモチーフに作られたのが「石狩十三場所」です。こちらは普通のお饅頭だなと思いきや、なんと生地にチョコレートが練り込まれたチョコレート饅頭だというから、またしても驚かされます。食べて納得、お饅頭なのに、ちゃんとチョコレートの味がします。
新しくて楽しいお菓子の数々に、すっかり心を躍らされました。そして和菓子や洋菓子といった概念の垣根を越えて、誰も食べたことのないものを生み出そうという三代目の心意気にも、頭が下がります。くずバーのネーミングに惹かれて訪れた石狩で、恐れずにいろいろなことに挑戦する勇気さえ教えてもらった気がしました。
所在地:北海道石狩市花川南7条3丁目36
電話:0133-73-8560
営業時間:9:00~19:00
定休日:毎週月曜日(お盆、お彼岸、節句などと重なる日は営業)
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(一部店舗情報を追加しました。追記)