広尾町の美幌川河口付近には、一定期間の一定時間だけ一面が緑色になる場所があります。地元の人にも知られていない、神秘的な光景。ゴロゴロと大きな石が転がっているだけでも珍しいのに、さらに鮮やかな緑色に覆われているという不思議。いったいどういうことなのでしょう?
ネットで見かけた気になる写真が発端
ことの発端はネットで見かけた1枚の写真からでした。写真家の辻博希さんが掲載した「広尾の絶景1」と名付けられた写真です。海岸一面に緑色の大きな石がゴロゴロしているのがわかります。こんな光景は見たことがない!ということで調べてみました。
▼インターネット上に掲載されていた海岸の光景(写真提供:辻博希さん)
このような光景が見られるのは広尾町の海岸だということは写真のタイトルでわかります。さらに調べてみると、広尾町の海岸沿い全体ではなく、美幌川の河口付近だけに起きる現象だということもわかりました。
さっそく現地に行ってみました。
▼海岸沿いに転がる石に苔のようなものはついてはいるのだが
実際に行ってみると、確かに緑がかった石がいくつかありました。しかし、くすんだ緑で、それほど美しい緑色ではありません。場所を間違ったのかなと思い、砂浜で作業をしていた漁師さんに聞いてみました。すると、海岸一面がきれいな緑に覆われるのは干潮時で、さらに濡れた石が乾かないと見られないと教えてくれました。
筆者が訪れたのはちょうど干潮になった頃、このまま石が乾けば美しくなるのかな、と待ってみることにしました。
▼乾くほど美しい緑になっていく石
待つこと1時間半ほど。なるほど。石が乾いていくと、きれいな緑色に変わっていきます。近づいてよく見てみると、びっしりと苔のようなものがこびりついています。これが苔なのか海藻なのかわからないまま、撮影だけして美幌川河口を後にしました。
【動画】美幌川河口付近だけに広がる緑の石
緑色の正体とは!?
事務所に戻り、いろいろ調べてみましたが詳しくはわかりません。そこで、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター水圏ステーション室蘭臨海実験所で、海藻類の環境適応や種多様性を研究されている特任助教の市原健介さんにお話をうかがいました。
▼市原健介特任助教
市原さん曰く、この緑色のものはアオノリという海藻の一種なのだそう。お好み焼きにかけるアオノリとほとんど同じ種類のものなのだとか。アオノリ自体は、どこの海岸でも一般的に見ることができる海藻ですが、丸い石にびっしり生えているような場所は多くないでしょうね、と市原さんはおっしゃっていました。
▼水中のアオノリ
この現象が見られるのは5月ぐらいから8月初旬ぐらいまでなのだとか。もっとも繁茂しているのは6月中旬から7月上旬あたり。したがってその時期がいちばん緑が濃くなるのではないか、と市原さんは言います。
今年(2017年)は、もう時期が過ぎてしまいましたが、気になる人は来年、いちど見に行ってみてはいかがでしょうか? ちなみに、このアオノリは食べられるのだそうですよ。