北海道の滝を調べていると、なかなかたどり着けないと言われる滝がいくつかあります。その中の一つ、「丸山遠見の滝(まるやまとおみのたき)」なのですが、過去には途中で行くのを諦めた人が何人もいるほどの秘境だとのこと。
地図で確認すると国道からそんなに離れている訳でもなく、ちょっと歩けば簡単に行けそうな距離に見えますが、なぜたどり着けないと言われるのか、その謂れにも興味があり実際に行ってみることにしました。
丸山遠見山頂の櫓
「丸山遠見の滝」は勇払川にあり、支流にあたる丸山川上流には、以前氷瀑の取材を行った「七条大滝」があります。滝の名前は、国道を挟んでそびえる「丸山遠見」という標高327mの山が由来でしょう。
その「丸山遠見」の頂上には「丸山遠見望楼(まるやまとおみぼうろう)」と呼ばれる櫓があると知り、あわよくば、櫓(やぐら)の上から滝が見えないものかと、先に櫓を目指すことにしました。
国道276号線を苫小牧市へ向かって走ると、右手に看板が見え、その先にはゲートがあります。ゲートが開いていれば林道へ車で入り、櫓まで行けるのですが、ゲートが閉じていると約4kmの道を熊に注意しながら歩くことになります。
また、車両で入るには胆振東部森林管理署へ問い合わせ、入林承認証をいただかなければなりません。勝手に入って、帰りにゲートが閉まっていて出られなくなる人が多いようですので、注意しましょう。
「丸山遠見望楼」へたどり着きましたが、櫓本体は老朽化しており、登る事は禁止されていました。
案内看板を見ると、明治中期に一帯の森林管理を目的に建てられ、「森林と人との共生」に大きな役割を果たしてきた櫓とのことで、現在ある自然を100年以上守ってきた歴史があるということが分かりました。
▼丸山遠見望楼4代目となる櫓。改築等は現在未定
遭難注意。探勝路発見できず。
「丸山遠見望楼」への林道入口から、国道276号線を札幌方面へ1kmほど行った右側にある林道へ入り、広いスペースに車を停めます。ここから先は車両が入れず、徒歩で滝を目指すことになります。サイクリングロードを横切り、大きな木々が立ち並び、薄暗い道へと入って行きます。
▼サイクリングロードを越えた林道
しばらく歩くと、視界が開けるのですが、そこは一帯が植林してある場所になります。林道は植林の作業道となっており、複数枝分かれしており地形図にも表記されていない道ですので、コンパス又はGPSが必要です。
事前の情報収集では、滝の周りは高い崖に囲まれているため、まずは滝の500mほど下流へ一旦出て沢登りをして滝へ向かうようで、その下流へ抜ける道が存在するようでしたが、2時間ほど歩き回ってみてもそのような道は確認できませんでした。情報自体7年前のものでしたので、現在はもうなくなっているのかもしれません。
そうなると滝を目指して真っ直ぐ進むしかありません。地形図を確認しつつ作業道を滝方向へひたすら真っ直ぐ進むと、深い沢に当たります。沢を覗き込みますが、高い崖となっていて木々が多く水の流れがまったく見えません。
暫く上流方向へ歩くと、木々の奥から一際大きな水の音が聞こえてきて、チラチラ流れのようなものが確認できます。
▼木の枝の奥に白い流れが見える
人を寄せ付けない地形「丸山遠見の滝」
間違いなく滝なのですが、木々の枝が邪魔してよく見えません。下へ降りる道を探してもどこにもないため、意を決してそのまま崖を降りることにしました。
出だしの斜度は90度近い高さ20mほどの崖を慎重に降りていくと、真っ直ぐに落ちる水が見えてきます。
▼崖の途中から
崖の下部は斜度は緩くなるものの、崩れた岩が堆積した地面ですぐに崩れ落ちるため、さらにゆっくりと時間をかけて降りました。「丸山遠見の滝」に到着です。
高さ約10m、幅約5mで水は真っ直ぐに宙を落ちていく見事な滝です。
▼滝直下
地面が裂けて崩れた先へ水が落ちているような地形で、周りは崖で囲まれ、その崖はずっと下流まで続いており、滝壺がないため水飛沫がすごく煙のように上空へ舞い、周りの木々の幹には厚い青々とした苔が張り付き雫を纏っています。
そんな場所ですので、滅多に来ることのできない特別な場所という達成感はありますが、薄暗く洞窟の中にでも入ってるかのような圧迫感があり、怖いという感情が常に付きまといます。
▼深い崖に囲まれ人を寄せ付けない地形
▼滝壺はない
帰りはもちろん降りてきた崖を登ることになります。直登で15分、その後作業道を真っ直ぐに歩いて駐車ポイントまで20分。
滝までは35分ほどで行ける距離ですが、沢の圧倒的に深い地形が人を寄せ付けない秘境となっている理由なのでしょう。
以前は下流側からの探勝路や「丸山遠見の滝」という看板も存在していたようですが、近年襲う大型の台風等の自然災害の影響でなくなったのではないでしょうか。
自然災害の影響を考えると共に、今回の滝と崖の威圧感に、地球環境についてもっと知るべきと感じた探険となりました。