「リラ冷え」って何?! 5月の北海道で使われる季語の意味とは?

 「リラ冷え」。なんときれいな言葉なのでしょう。

 5月下旬の北海道は、暖かくなったと思ったら急に冷え込むという気候の変化が見られます。そんな時期に札幌市民がふつうに使っている言葉、それが「リラ冷え」という言葉なのです。このページではリラ冷えについてまとめています。

まずは言葉の意味から!!

 リラ冷えの「リラ」って何でしょうか? これフランス語なのです、実は。フランス語表記では「lilas」になります。日本語に訳すとどうなるか……「ライラック」です。

 ライラックといえば、北海道、特に札幌市民にとってはなじみの深い木です。「札幌の木」ですし、大通公園や創成川沿いには様々な種類のライラックが花を咲かせ、大通公園では「ライラックまつり」が毎年5月下旬に開催されます。札幌~旭川間のJR特急もライラックという名前です。

▼大通公園付近では様々な種類のライラックが花を咲かせる

 ちょうどライラックが咲き誇る5月下旬から6月上旬にかけて、「リラ冷え」の現象が起こることから、この名称になりました。本州でいう「花冷え」とほぼ同じ意味の言葉とされています。

 リラ冷えが起こる原因は、オホーツク海高気圧で、冷たい空気が北海道に影響を与えます。郊外では、田んぼに水を張るシーズンにも重なりますので、それで気温が下がりやすくなります。

実際の気温で言うと、20度台から10度台へ平気で下がります。それでも、「いよいよ初夏突入か」という季節を告げる花でもあります。

▼2014年5月の札幌の気温データの参考例。数日前まで最高気温20度台とポカポカ陽気だったが、急激に気温が下がり、平均気温が10度台を割り込んでいる。この一週間の最高気温で見れば20度の差、平均気温で見れば10度の差がある。16日のような気温になれば再びストーブは欠かせない。

5/11 平均15.5 最高24.7 最低 8.0
5/12 平均18.2 最高27.6 最低12.7
5/13 平均15.0 最高20.0 最低11.0
5/14 平均16.7 最高23.7 最低11.9
5/15 平均14.6 最高19.4 最低10.9
5/16 平均10.3 最高13.6 最低 6.7
5/17 平均 7.0 最高 8.7 最低 5.6
5/18 平均 8.5 最高12.0 最低 7.4

 ところでこの名前、誰が付けたのでしょうか。

リラ冷え発祥の歴史とは?

 季語「リラ冷え」を創ったのは、榛谷(はんがい)美枝子さんという北海道を代表する俳人(滝川市江部乙出身)。1960年に詠まれた句の冒頭に使われています。リラの花が咲いた頃肌寒かったことから、「リラ冷え」を生み出したということだそうです。

 しかしこれを広めた立役者とも言うべき人は作家の渡辺淳一さん(上砂川出身)。1971年の著書「リラ冷えの街」で一気に広まっていきました。 この小説は、6月のまさにリラの季節、男女の愛を描く物語です。

 いまや季語にもなっている「リラ冷え」。これから暑くなろうとしている矢先の一瞬の寒さ。それでもリラの美しさと言葉の美しさに、寒さもこれまた美しいと感じるのでありました。この時期、くれぐれも風邪は引かないように。夏は短いので早く薄着をしたいという気持ちがあるのですが、 まだまだ天気予報とにらめっこの季節なのです。