小樽を代表するグルメといえば、やはり真っ先に思いつくのは寿司。さらに最近では、あんかけ焼きそばも雑誌やTVで紹介され、小樽のB級グルメとして台頭してきています。そんな中、ここ数年で少しずつ勢力を伸ばしつつある、新たなグルメが誕生しているのをご存じでしょうか。その名も「群来太郎丼(くきたろうどん)」。
群来って何? 太郎って誰? メニュー名だけでさまざまな疑問の湧く群来太郎丼、一体どんなものなのか、小樽まで調べに行ってみました。
新名物にすべく普及委員会も発足
まずは気になる群来太郎丼とはどういうものなのか、実物をご覧いただきましょう。小樽産のニシンを三枚おろしにし、ハラスの骨もカットした身に衣を付けて油で揚げ、甘辛く味付けをした丼です。
▼甘辛いタレの照りが、食欲をそそる(写真:laufen克)
事の始まりは10年以上も前に遡ります。かつてニシン漁で栄えた小樽では、近年、種苗放流事業や漁業規制といった努力が成果を上げ、10年ほど前から、石狩湾沿岸にニシンが戻ってくるようになりました。ニシンが産卵する際に、オスの放精によって海面が白くなる「群来」と呼ばれる現象も、毎年のように確認できるまでに資源が回復してきたのです。
▼群来太郎丼(税込800円)(写真:laufen克)
そこで、せっかく獲れるようになったニシンをもっと食べてもらいたいと、浜の母さんたちが考案したのが「群来太郎丼」です。魚離れが進んでいると言われる子どもたちでもおいしく食べられるよう、調理方法や味付けにも工夫がされました。
これを2015年に開催された町おこしイベントで提供したところ、1日で300食(2日間で600食)を売り上げたのです。長蛇の列ができ、わずか2時間弱での完売でした。翌2016年には、小樽群来太郎丼普及委員会も発足。地元の新名物が、にわかに盛り上がりを見せています。
▼青塚食堂(写真:laufen克)
現在では、青塚食堂をはじめ、市内8店舗で群来太郎丼を食べることができます。青塚食堂で出される群来太郎丼には白髪ネギや大葉がこんもりと乗り、パンチの効いたタレに爽やかな後味を加えてくれます。漬物などのちょっとした小鉢や汁物が付いてくるのもうれしいところ。
「群来太郎丼」の名前の由来は?
▼観光スポットとしても人気の小樽貴賓館
同じ群来太郎丼という名のメニューでも、店によって丼の中に添えられるものや付随してくるものが異なります。そこで青塚食堂の他にも、2店舗ご紹介しておきましょう。まずは小樽貴賓館の中にあるレストランです。
▼小樽群来太郎丼(税込1,200円)
貴賓館内で提供されるだけあって、群来太郎丼もどこか上品な装いです。漬物、汁物が付いてくる他、丼の中には、なんとニシンの数の子まで。
▼数の子でちょっと高級感も
味のしっかりしたニシンの箸休めに、数の子がちょうどいい感じ。貴賓館の日本庭園を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごせそうです。
所在地:北海道小樽市祝津3丁目63
電話:0134-24-0024
入館料:大人(中学生以上)1,080円、子ども(小学生)540円
営業時間
・旧青山別邸入館:9時~17時(4月~12月)、9時から16時(1月~3月)
・レストラン:11時~17時(4月~12月)、11時~16時(1月~3月)
公式サイト
次にご紹介するのは、こちらも観光客に人気のスポット、天狗山の山頂にあるレストランです。
▼展望レストランてんぐ
ロープウェイで上った先にある絶景パノラマを眼下に食べる群来太郎丼も、また乙なもの。目でも舌でも小樽の魅力を存分に味わえそうです。
▼小樽群来太郎丼(税込1,000円)
こちらで食べられる群来太郎丼は、ごはんの上の刻み海苔とたっぷり盛られたネギが、文句なしのベストマッチ。豪快にかき込みたくなる味わいです。
▼ネギと海苔とニシンは相性抜群
ちなみに、前出の普及委員会では、多くの店舗で取り扱いやすいよう、基本ルールに則った小樽産ニシンのフィレー・専用タレの開発・販売まで行っています。販売金のうちフィレー1枚に対して 円が稚魚放流事業や委員会の運営費に回され、循環型の地域貢献に一役買っているそうです。
展望レストランてんぐ
所在地:北海道小樽市最上2-16-15 小樽天狗山ロープウェイ山頂
電話:0134-32-8796
営業時間:11時~20時45分
定休日:ロープウェイ運行期間中は無休
さて、群来というのはニシンが産卵する際に起こる現象のことだと、先に説明しました。では、なぜ群来太郎丼という人のような名前が付いているのでしょう。その答えは、実はこの記事のトップ写真にあります。写真の右下に、凜々しくもかわいらしいニシンのイラストがあるのがお分かりでしょうか。実は、このキャラクターこそが「群来太郎」なのです。製作者は、札幌在住で漫画家の田島ハルさん。
▼群来太郎生みの親の田島ハルさん
地元のイベントに際し、小樽祝津たなげ会からニシンのキャラクターを作ってほしいとの依頼を受けて「ニシンの数の子を抱いたイクメン漁師のイメージ」から2013年に誕生したのだそう。実は群来太郎丼とは、このキャラクターが先行したメニューだったのですね。いろいろユニークで親しみやすい群来太郎丼、小樽の新名物としてぜひ一度は食べておきたいものです。
取材協力
小樽群来太郎丼普及活動実行委員会
田島ハル
Twitter/Instagram:@tajimaharumanga