小樽の街並みを歩いていると「北一硝子」という文字を頻繁に見かけます。それもそのはず、北一硝子は一世紀以上も前からこの地でガラス製品を販売し続け、小樽の発展と共に成長していった会社なのです。その歴史を紐解きつつ、北一硝子三号館とそれぞれに扱っているガラス製品について、ご紹介していきましょう。ガラスのキラキラした魅力に、きっと虜になりますよ。
明治からはじまる北一硝子の歩み
▼北一硝子三号館の入口
北一硝子の前身である浅原硝子が誕生したのは、1901(明治34)年のこと。石油ランプの製造販売がはじまりでした。まだ電気の普及していない当時、石油ランプは各家庭の必需品だったのです。さらに1910(明治43)年には、漁業用の浮き玉も手掛けるようになりました。
▼漁業用のガラス製の浮き玉
ちょうど小樽の街も発展していった頃、順風満帆に見えた浅原硝子でしたが、やがて電気と石油が普及するようになるとその風向きが変わります。石油ランプは衰退し、漁業用の浮き玉もガラスからプラスチックへと移行していきました。小樽に複数あったガラス製造業者も、1960(昭和35)年には浅原硝子一社になってしまいました。
▼ガラス製の石油ランプ
再び風が吹いたのは、1970年代になってからのことでした。1971(昭和46)年に社名を現在の北一硝子と変更、かつては生活必需品であったガラス製の石油ランプをあえて店頭に並べたのです。その石油ランプに目を留めたのが、以前北海道ファンマガジンでも紹介した、カニ族と呼ばれるバックパッカーたちでした。カニ族がお土産として持ち帰った石油ランプはインテリアとして好評で、その評判は瞬く間に広がっていきました。
▼かつては漁業用倉庫だった
そんな折、北一硝子は新しい店舗を構えることに。といっても、新しく建てるのではなく、古い倉庫を改装することにしたのです。古い倉庫とは、1891(明治24)年に建てられ、漁業用倉庫としてニシン漁の栄枯盛衰を見守ってきた木骨石張倉庫です。
▼実際に使用されていたトロッコの線路も残る
当時は反対する声もありましたが、1983(昭和58)年に北一硝子三号館としてオープン。今では当たり前となった、古い建物を改装して新しく再生させるリノベーションの先駆けとなったのです。
北一硝子三号館それぞれの魅力
現在の北一硝子三号館は、テーマごとに「カントリーフロア」「和のフロア」「洋のフロア」と3つのフロアに分かれています。
▼カントリーフロア
カントリーフロアで扱っているのは、かつて浅原硝子時代を支えた石油ランプと漁業用の浮き玉。石油ランプはもちろん、浮き玉も照明器具として利用するなど、インテリアとして人気があるようです。
▼和のフロア1階「月見うさぎ」
和のフロア1階で人気なのは、何と言っても「月見うさぎ」シリーズ。グラスにお月見をするうさぎの姿があしらわれ、満月を模した丸い部分を覗けば、向こう側のうさぎが見えるという仕組み。あまりのかわいらしさに、使うのがもったいないかも。
▼和のフロア2階「和食器」
和のフロア2階には、和の食卓に似合うガラス食器がいろいろ揃っています。和食にガラス食器といえば、そうめんや酢の物など夏っぽい印象を持つかもしれませんが、シックな色合いが施されたものもあり、使い方によってイメージも膨らみそうです。
▼洋のフロア1階「真珠切子」
洋のフロア1階で人気を博しているのが、美しい真珠を切子で表現した真珠切子です。一口で切子と言っても、その種類はさまざま。洋のフロアにも実に多くの切子が並んでいるので、これだと思えるようなお気に入りの柄を探してみてください。
▼洋のフロア2階「ステンドグラス」
洋のフロア2階に並ぶのは、ステンドグラス。小物入れや写真立てもありますが、やはり注目はランプです。小さなスタンドタイプや天井から吊すペンダントタイプ、さらには職人の技が光る高価な一点物まで、多彩なのステンドグラスに目移り必至です。
▼喫茶店「北一ホール」
散策や買い物に疲れたら、北一ホールでひと休み。北一硝子三号館にある喫茶店で、洋のフロアの隣に位置しています。この広い空間で使われている照明は、なんと167個もの石油ランプ。9時の開店と同時に、ひとつひとつ手作業で火を点けていきます。
▼北一特製ミルクティソフト(税込500円)
ここでおすすめなのが、北一特製ミルクティソフト。茶葉を北海道牛乳で煮出し、毎日手づくりしている人気メニューです。濃厚なミルクの風味がありながら、後味にスッキリとした紅茶が香ります。
▼月見ウサギにはジョッキタイプも
有名な観光スポットのひとつとして北一硝子を認識していた人も、明治から続いてきた歩みを知ると、少しイメージが変わったのではないでしょうか。
もちろん、そんな歴史など知らずとも、北一硝子のガラス製品の輝きに変わりはありません。お土産のために立ち寄ったつもりでも、ついつい自分用にお気に入りを探してしまうはず。小樽の思い出に、ぜひ手元にひとつ置いてみてはいかがでしょう。
(2022年10月19日:店舗情報を更新しました。)