旭川の街を東西に横切る1条通りを西に行き、富良野国道(国道237号線)を通り過ぎて約100mほど進めば、1条通りの南側にかなり古い建物があることに気づきます。周囲とは明らかに違う、異彩を放っていると言っても過言ではない木造の大きな建物。「キッコーニホン」と書かれた文字からピンとくる人もいるかもしれませんが、ここは日本醤油工業株式会社、つまりお醤油屋さんです。会社の歴史と現在について、教えてもらいました。
旭川の歴史と共に歩んできた会社
▼雪景色に佇む姿も絵になる建物
建物を見たら分かるように、日本醤油工業株式会社の歴史はとても古く、なんと旭川の開村にまで話が遡ります。旭川の最初の入植者である鈴木亀蔵氏が、1890(明治23)年に笠原喜助・喜八郎兄弟と興した笠原酒造店が、その前身です。1928(昭和3)年、道内酒造業の合併により日本清酒(株)旭川支店と名前を変えた後、大戦末期の1944(昭和19)年には、さらに政府による酒造業の企業整備を受け、醤油醸造への転換がはかられました。
▼紆余曲折を経て今の会社に
醤油醸造への転換にあたり、大きな力となったのがキッコーマン株式会社と日本清酒株式会社です。両社の協力のもと、現在の日本醤油工業株式会社が誕生しました。そこから既に70年以上、醤油ひと筋に情熱を傾けてきたというこの会社。
▼脈々と受け継がれる醤油づくりの情熱
今ではキッコーニホンのロゴマークは、北海道民にとって馴染み深いものとなっているのです。
明治時代の社屋は今も現役、まさに温故知新!
さて、驚くべきは冒頭で紹介したあの古い建物、実は今なお現役の社屋として利用されているのです。過去の業績を展示したよくある資料館などではなく、現在も社員が通勤し、ここで働いているのです。
▼建物の内部もいい雰囲気
一体どれくらい古い建物なのか、詳しいことは今となっては分からないそうですが、明治20年代の写真にこの建物が写っているといいます。つまり、優に100年を越えているということです。増築を重ねながら、大切に使われてきたこの社屋。工務店に頼んでいてはとても間に合わないということで、社内に営繕担当者が在籍しているそうです。
▼2階から見る風景もタイムトリップしたかのよう
昔は社員が入れるようにとお風呂まであったということで、アットホームな社風がうかがい知れます。
▼お風呂はさすがに現在では使っていません
もちろん醤油醸造所でもあったので、貴重な昔の道具なども多く残っています。
▼以前使っていたモーター
▼大きな圧搾機は迫力満点
工場見学なども行っているそうなので、気になる人は問い合わせてみるといいかもしれません。
▼醤油樽からは今でもいい香りが
ここまで日本醤油工業株式会社の歴史について見てきましたが、消費者として注目すべきは、やはり今どんな商品があるのかということでしょう。会社の敷地内に直売店があるので、ぜひチェックしておきたいところ。もちろん主な商品はお醤油です。プライベートブランドのお醤油は、なんと50種類にも及ぶというから驚きです。
▼醤油だけでこんなにたくさん!
さらにドレッシングにも力を入れていて、北海道ならではの素材を使ったものも数多く販売されています。
▼ドレッシングとつゆのコーナーも充実
また、面白いところでは醤油を使ったスイーツも人気なのだとか。以前北海道ファンマガジンでも紹介したことのある、ほのかに醤油味のするアイスキャンディーなど、意外なおいしさに出会えるかもしれません。
なんとも魅力的な商品がこれだけたくさん揃っているのは、しっかりと受け継がれてきた歴史があるからこそ。温故知新を地で行く会社、それが日本醤油工業株式会社なのかもしれません。