車で札幌から約3時間半、函館から約2時間。檜山北部の今金町、せたな町は、水質日本一に輝いた後志利別川、道南最高峰の狩場山など豊かな自然に抱かれたエリアです。この地で育まれた特産品を生かしたグルメ・スイーツを味わうことができるほか、古代から近現代に至るまでの歴史を感じる地域でもあります。
今回は、そんな檜山北部2町をクローズアップ。両町のゆるキャラ「いまルン」(今金町)、「セターナちゃん」(せたな町)に出演協力いただきながら、地域の魅力をご紹介します。
クアプラザピリカでダムカレー&いちご狩り体験
ピリカダム近くに位置する観光施設「クアプラザピリカ」は、道南一の雪質を誇るピリカスキー場のロッヂとして1990年12月に誕生しました。現在、建物内にはレストラン、温泉、宿泊部屋があり、屋外にはキャンプ場やパークゴルフ場も整備しています。
最近は、レストランRera[レラ]の名物、ピリカダムカレーが、ライダーたちの口コミで人気を集めています。ピリカダムカレー目当てで訪れる人も増えているといいます。小西義行支配人によると、前支配人が札幌の豊平峡ダムカレーにヒントを得て開発し、2015年11月にデビューさせました。
重力式コンクリートダムとロックフィルダムの複合ダムというピリカダムをライス、ダム湖のピリカ湖をカレールーで表現。日本一の特産品 今金男しゃくと幻の今金和牛を使ったコロッケは、つがいのピリカカイギュウをイメージし、120万年前に生息していたことから1個120gにしています。半熟卵はカイギュウの赤ちゃんをイメージしています。地元名産の軟白ねぎや野菜もふんだんに盛り付けています。(12~3月は冬のダム湖をイメージし、粉チーズをふりかけたピリカホワイトダムカレーとして提供するそう。)
また2018年、隣接する「ピリカいちご農園」ではいちご栽培が始まりました。洋菓子で使われることの多い「すずあかね」を約1,600株栽培しており、観光客はビニールハウスの中でいちご狩り体験が楽しめます。
ここで栽培されているいちごは、直径約5cmと大粒なのが特徴。また一粒口に入れると、その甘さに驚きます。既に函館を中心に道内各地から観光客が訪れているといいます。きっと、親子連れでも楽しんでいただける体験メニューです。
名称 | クアプラザピリカ |
所在地 | 今金町字美利河205-1 |
営業時間 | レストラン土日祝限定11時半~15時(LO/14時30分)※朝・夜は宿泊者限定、平日はテイクアウト弁当販売(なくなり次第終了) 日帰り温泉12時~22時(最終受付21時) いちご狩り体験7・8月の日祝午前10時~12時(予約制30分間隔でご案内) |
料金 | 日帰り温泉大人550円、小学生200円、幼児無料(毎月26日は半額) いちご狩り体験大人1500円、小人700円、幼児無料(ホテルフロントで受付) |
公式サイト | https://kurplazapirika.net/ |
電話 | 0137-83-7111 |
ピリカ旧石器文化館で貴重な旧石器時代の遺跡を見学
同じピリカ地区で、今度は歴史に目を向けてみましょう。「ピリカ旧石器文化館」は、国内でも大変貴重な旧石器時代の国指定史跡「ピリカ遺跡」のことがわかる施設です。
「ピリカ旧石器文化館」の展示スペースは、ピリカガイダンスからスタートします。10分の映像でピリカ遺跡の概要を学べるほか、タッチ式パネルで学習することができます。
学芸員の宮本雅通さんによれば、ピリカ遺跡のそもそもの始まりは1978年、ピリカダム建設に際して行われた土質調査で作業員が見つけた石器。後にこれが旧石器時代の遺物であることが判明し、大規模な発掘調査が行われることとなりました。
その結果、発掘された1,500㎡の範囲から約11万点もの石器が出土。うち163点が1991年に国の重要文化財に指定されました。「世界に十分アピールできるものがある」と宮本さんは強調します。
特筆すべきは、長さ約33cm・厚さ約2cmという日本最大級の槍先形尖頭器(せんとうき)。「一般的なものの3倍はある規格外サイズで、研究者たちも?マークがつくほど不思議な存在」と宮本さんは説明します。もう一つは、旧石器時代では珍しい、9mmサイズのかんらん岩製小玉7点。「当時の人達がアクセサリーを身につけていた証拠です」と宮本さんは話します。
続いて、ピリカ旧石器文化館の裏手にあるピリカ遺跡に足を運びます。広大な丘陵地ですが、実際に発掘調査がされたのはわずか1%ほど。そのわずかな場所でも総計で20万点の石器が見つかったと言うから驚きです。
40cm掘れば石器が出てくる状態だそうですが、それがよくわかるのが「石器製作跡」の建物。発掘調査がどのように行われたのか、石器がいかに集中して出土したのかがわかるように、発掘風景を再現してあります。
ピリカ旧石器文化館では、体験学習も行っています。重要文化財の石製小玉を模して作るストラップ作り(所要約30分)、出土した石器の実物大レプリカが作れる体験(所要約20分)、革キーホルダー製作体験(所要約10分)、弓矢や火おこし体験などができます。旧石器時代に思いを馳せた後は、記念品として持ち帰れるものを作ってみてはいかがでしょうか。
名称 | ピリカ旧石器文化館 |
所在地 | 今金町字美利河228-1 |
営業時間 | 4月1日~11月30日の9時30分~16時30分 |
休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は開館)、祝日の翌日、12~3月 |
入館料 | 無料 ※体験学習のメニュー・料金は、下記公式サイトより確認してください。 |
公式サイト | https://www.town.imakane.lg.jp/pirika |
電話 | 0137-83-2477 |
温泉ホテルきたひやまで一泊&温泉
ピリカ地区を堪能したら、せたな町を目指しましょう。北檜山区の中心部にある「温泉ホテルきたひやま」はヨーロッパの洋館のような佇まいで、1999年8月には天皇皇后両陛下がスイートルームを利用されました。
ホテルの温泉「北檜山温泉」は、公衆浴場に指定されています。茶褐色で、ナトリウム-塩化物温泉の湯は、柔らかな湯ざわり。巨大なヨーロッパ風ドーム型天井の大浴場は、太陽光をたっぷりと取り入れて明るく開放的です。ジャグジー、ジェットバス、寝湯、露天風呂、サウナがあり、町民の日帰り利用もとても多いといいます。
併設の「レストランまこまない」のランチメニューでは、地元食材を使った料理を一般客と宿泊客に提供しています。地元のブランド豚「若松ポークマン」のロースを使った「とんかつステーキ」(税込1,350円※、単品1,100円※)と「生姜焼き」(税込1,180円※)がおすすめ。(※金額はいずれも2020年9月時点の情報です。)
1階ロビーの売店でも若松ポークマンのソーセージ、フランクフルトなどの商品が入手できます。売店で目を引くものの一つは「日本酒よしこ」です。支配人の大清水明さんによると、発売したのは2004年。有志の宴席で「北檜山に美味しいものが多いけど地酒はないよね」という話から、北檜山観光振興公社が地元の米を使って、北檜山の花スイセンにちなみ酔仙酒造(岩手県)に醸造を依頼したといいます。気になる名前の由来は、有志の家族に「よしこ」という名の付く人が多かったからだとか。そんな面白いエピソードがある日本酒は、おみやげに買っていけば話のネタになること間違いなしです。
大清水支配人は、「せたな町に初めてきた人が、いいところだねーと満足して帰られる方が多い。近隣の主要な町から2~3時間程度で来られる場所なので、まずはせたな町に来てみてほしい」と来町を呼びかけています。
名称 | 温泉ホテルきたひやま |
所在地 | せたな町北檜山区徳島4番地16 |
営業時間 | ホテルチェックイン15時、チェックアウト10時。 レストラン ランチタイム11時~14時30分(LO/14時) 日帰り温泉10時30分~21時(22時退館) 売店8時~21時 |
日帰り入浴料 | 大人410円、12歳未満140円、6歳未満70円、3歳未満無料 |
公式サイト | http://www.hotel-kitahiyama.com/ |
電話 | 0137-84-4120 |
荻野吟子公園と生涯学習センターで日本初の女医荻野吟子に迫る
せたな町瀬棚区の中心部、旧国鉄瀬棚線瀬棚駅のあった場所に「荻野吟子公園」があり、「荻野吟子顕彰碑」が建っています。荻野吟子は、実は日本の公許女医第1号という、すごい人物だったのです。その貴重な資料を展示するのが、「生涯学習センター」内にある「荻野吟子資料展示室」です。
名称 | 荻野吟子公園と顕彰碑 |
所在地 | せたな町瀬棚区本町9区 |
料金 | 屋外のため見学自由 |
2階にある荻野吟子資料展示室では、荻野吟子の年表や直筆メモ、所有していた書類や貴重な写真が展示されています。荻野吟子がどのような経緯で北海道にやってきたのか、医師は男性だけという時代にパイオニアとして女性医師の地位をどのように確立したのか、瀬棚や近隣の病人をどのように献身的に治療したのかがわかります。
荻野吟子は44歳のときに開拓で隣の今金町に入植します。2年後、瀬棚に移住します。しかしなぜ瀬棚を選んだのでしょうか。当時ニシン漁で栄えていた日本海沿岸において、小樽、江差に次ぐ地になると思われていたのが関係しているといいます。町の有力者の女性が集まる婦人会の一人として収まる記念写真があり、町で有名な人物であったこともわかります。
担当者によれば、荻野吟子は瀬棚にはわずか10年間しかいなかったものの、「ここには映像資料を含めて、荻野吟子のほぼすべての資料がある。熊谷にも資料館があるが、実はこちらのほうが展示数は多い」そうです。荻野吟子の展示資料を見ながら、せたな町の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
名称 | 生涯学習センター |
所在地 | せたな町瀬棚区本町651(旧瀬棚商業高等学校) |
開館時間 | 10時~17時 |
休館日 | 毎週月曜(祝日の場合開館し翌日休館)、12月31日~1月5日 |
入館料 | 無料 |
電話 | 0137-87-3901 |
ひらかわ牧場で地元特産品を使ったアイスクリーム
せたな町北檜山区にある真駒内ダムに向かってみましょう。その手前にある「ひらかわ牧場」では、アイスクリームの販売を開始するということで話題になっています。
オーナーで酪農家の平川賢一さんは広島県出身。八雲町の牧場などで経験を積んだ後、2010年4月にせたな町に移住して新規就農しました。現在は40頭の乳牛と子牛15頭を放牧飼育しています。
観光事業へ進むことを夢見て、6次化を考えていたという平川さん。農場HACCP(ハサップ)の認証を受けて以降、差別化につなげるべく、3年前に小型のアイスクリーム製造機械を購入し自宅の台所でアイスクリームの開発を続けてきました。
ひらかわ牧場のアイスクリームは、せたな町特産品の「潮トマト」、町内で栽培されたブルーベリーのほか、バニラ、レモン、コーヒー、ミルク、抹茶、チョコレートなど15~20種類(将来的に種類を増やしていく予定)。このほか、とうもろこし、かぼちゃ、お米のアイスも検討しているといいます。1個100mlのカップ型を250~300円で店頭およびインターネット販売する予定です。
工房兼店舗は、放牧地をバックに建設。店名の「GRASS」には、牧草という意味のほかに、「良い牛乳を作るには牧草から」をモットーにする酪農家が作るアイスという意味も込められています。
「地元の方に愛される店にしたい。某高級アイスクリームよりおいしくて魅力あるアイスクリームを味わっていただきたい。牛乳は放牧中とそれ以外で味が変わるので、その違いも楽しんでほしい」と話しています。
名称 | ひらかわ牧場「GRASS」 |
所在地 | せたな町北檜山区松岡164-10 |
営業時間 | 2020年10月中旬オープン予定 |
公式サイト | https://www.hirakawa-farm.net/ |
真駒内ダム公園でキャンプを楽しもう
せたな町北檜山区を流れる後志利別川の支流、真駒内川上流には真駒内ダムがあり、近くには真駒内ダム公園が広がっています。芝生広場、遊水地「せせらぎ広場」などが整備されており、親子連れでも安心。特にキャンプ場は、道南最高峰の狩場山を望む自然豊かで静かな環境の中、キャンプが楽しめると評判です。
キャンプ場にはカーサイトが8か所あり、トイレ、水場も完備。街灯にコンセントが付いており、電源確保も容易です。管理人は常駐していませんが、朝夕に巡回に訪れる管理人に利用料を支払います。
街や道路から離れているので、静かなのが特徴。せたなの海で海釣りをする人たちが宿泊地として選ぶこともあるそうです。川のせせらぎ、鳥のさえずり、虫の鳴き声など、自然の音に包まれて、のんびりとしたキャンプを楽しんでください。
名称 | 真駒内ダム公園野営場 |
所在地 | せたな町北檜山区松岡158-1 |
開設期間 | 4月下旬~10月31日 |
使用期間 | キャンプ13時~翌日10時、多目的広場9時~17時 |
入場料 | 高校生以上210円、小中学生110円(日帰りは除く) |
サイト料金 | カーサイト1泊1,040円、フリーテントサイト1張1泊520円 |
連絡先 | せたな町役場まちづくり推進課 0137-84-5111 |
今回は、檜山北部の今金町、せたな町のディープな見所をご紹介しました。この他にも、立像山展望台、浮島公園など、見所はたくさんあります。記事を参考に、檜山北部の観光巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか。
協力:今金町/せたな町
取材協力:クアプラザピリカ(株式会社TTNコーポレーション)/ピリカ旧石器文化館(今金町教育委員会)/温泉ホテルきたひやま(株式会社北檜山観光振興公社)/ひらかわ牧場(株式会社ひらかわ牧場)/生涯学習センター(せたな町教育委員会)
(提供:北海道檜山振興局)