総延長約2キロ!本別町のひまわり畑に造られた巨大迷路に挑戦!

本別町を流れる利別川の堤防に面した畑に、巨大な迷路が出現! その正体は、7月20日に開幕した「十勝ほんべつひまわり迷路2019」。「ひまわり3千坪迷路」の使命を引き継ぎ、2年ぶりに再開されたイベントです。「前田農産食品」のひまわり畑に造られた総延長約2キロに及ぶ迷路の全貌はいかに? ひまわりの中をさまよいに行ってきました。

本別町に「迷路ヒストリー」あり

32万本ものひまわりが咲き誇る4.5ヘクタール(約1万4000坪)の広大な畑。そこが7月20~28日に開催された「十勝ほんべつひまわり迷路2019」の舞台。仕掛け人は、前田農産食品を経営する前田茂雄さんです。

▼「十勝ほんべつひまわり迷路2019」実行委員長の前田茂雄さん。「ひまわり畑に来てくれた人の思い出に残る迷路になれば」と話す

実は、本別町の「迷路」には歴史があります。前田さんの父、芳雄さん(故人)たち町内の有志が1988年に始めた「とうもろこし3万坪迷路」がそのルーツです。3万坪迷路は17年間続き、2005年、替わって背戸田利光さん主導のもと「ひまわり3千坪迷路」がスタート。大変な賑わいを見せるイベントに成長します。しかし、その3千坪迷路も背戸田さんが亡くなったことにより、2017年の開催を最後に幕を閉じました。

父親や背戸田さんが築いてきた迷路の歴史を振り返り、前田さんはこう話します。「迷路は本別町の夏の風物詩だった。先輩たちの思いを受け継ぎ、農業を出会いと交流の場にして地域を盛り上げるためにも、町の名物イベントをなくすわけにはいかない」と。

そこで2018年、前田さんは迷路の復活を誓い、試験的に3種類のひまわりを栽培して生育を見極めることにしたのです。そして2019年、町内の有志と共に「十勝ほんべつひまわり迷路2019」実行委員会を立ち上げます。2月にアメリカへ渡り、寒冷地でも栽培できるひまわりの品種を選定。5月にその種を、迷路の会場となる畑に撒きました。

ヒマワリが150センチほどに成長した7月9日、いよいよ迷路の造成に取り掛かります。「ほんべつ」や新元号「令和」の文字を配したコースデザインは、町内の小・中・高生から公募した案を取り入れて決定。GPSを搭載したトラクターで、あらかじめプログラミングしたコース図に沿ってひまわりを刈り込んでいきました。

▼ドローンで空撮したひまわり迷路。「ほんべつ」と「令和」の文字が浮かび上がる(画像:前田農産食品提供)

こうして令和元年の7月20日、新たなひまわり迷路が本別町にお目見えしたのです。ひまわりの名は「なつぞらさくたろう」。十勝を舞台にしたNHK朝の連続テレビ小説にちなみ、前田さんが命名しました。

巨大迷路の攻略ポイントは行き会う人たちとの情報交換

迷路に挑戦するべく訪れた某日、ひまわりの背丈は190~200センチにも達していました。この見渡す限りの広大な畑が迷路になっていると思うと、早くもワクワクしてきます。

さっそく、前田農産の「十勝ポップコーン」付きで500円の入場料を支払い、ひまわり畑全体を見渡せる見晴台へ。迷路内の4か所に設置されたスタンプラリーのスタンプポイントの位置をチェックします。といっても、見晴台から確認できるのは、来場者への配慮で旗を立てた2か所のポイントだけです。

▼前田農産の農産品をモチーフにしたスタンプのイラストはスタッフの千葉葵さんが担当

「スタンプを4つ集めてゴールするのに1時間半ほどかかるようです。2時間かけても見つけられず、あきらめて出てくる人もいます」と前田さん。続けて「迷路の途中で迷ったときは、出入口に立っている大きな柳の木が目印になります」とアバイスしてくれました。

その言葉に送り出されるように、迷路の入口へと向かいます。11時37分、いざ迷路の中へ。まずは、見晴台から確認したスタンプポイントの方向を目指します。

自分の背丈より高いひまわりに囲まれながら迷路を進んでいくと、早くも分かれ道が。どちらを選ぶかは、勘に頼るしかありません。迷路を歩く、分岐点で道を選ぶ、その行為を何度か繰り返していると、意外に早く「スタンプポイント③」のブースを発見。幸先のよさに、つい顔がほころんでしまいます。

が、喜ぶのは早かった。見晴台から確認したもう1か所のポイントに向かおうにも、もはや方向がわからなくなっています。青空に向かって伸びるひまわりに阻まれて目印になるはずの柳の木は見えず、自分が畑のどの位置にいるのか見当も付きません。

それでも気の向くまま進んでいき、なんとかスタンプポイント①②はクリアできました。ところが、残るポイント④を探せども、分かれ道が出現したり行き止まりだったりで見つからない。岐路あり壁あり……まるで人生のようです。

このような状況で頼りになるのは、迷路で行き会う人たちです。実際、すれ違ったカップルと互いのスタンプシートを見せ合い、ポイントの方向を尋ねるなど情報交換しました。スタート前に前田さんが「人生、どこに出会いがあるかわからない。迷路でも人との出会いは大切」と話していましたが、まさにその通りです。

情報交換後、ポイント④のブースがあるであろう方向を目指しますが、なかなか見つけられません。このまま迷路の中をさまよい続けることになるのか。歩きながらそう思った矢先、ありました、ポイント④のブースが。ついにスタンプラリー制覇です。

出口に向かう足取りは、もちろん軽やか。かくして12時22分、めでたくゴールしました。迷路脱出に要した時間は47分。達成感に浸らずにはいられませんでした。

会場では楽しさ満開のイベントも目白押し

ところで、会場では巨大迷路の醍醐味をたっぷり味わえるだけでなく、しっかりとお腹を満たすこともできました。

飲食ブースでは前田農産がチリビーンズドッグ(400円)やタピオカドリンク(400円)を、本別町の食品加工業者「とかち元気村」がビーフカレー(700円)やいももち(400円)などを販売。前田農産の小麦を使って十勝のベーカリー満寿屋が焼いたバンズと地元野菜で仕上げたチリソースが絶妙なチリビーンズドッグと、あの帝国ホテルの初代総料理長・村上信夫さん(故人)が絶賛したといういももちは、それぞれの自慢の1品だけに特に人気を集めていました。

▼ブームのタピオカを本別でいち早く提供。左からミルクティ、マンゴーミルク、パインソーダ―

▼あげいも(400円)もいももちと並ぶとかち元気村の代表的な1品

▼会場には記念撮影用にひまわりのかぶり物も用意されていた

期間中には「夜の迷路体験 ゾンビNIGHT」、GPS搭載トラクターの試乗やドローンの実演といった「スマート農業体験」など、日替わりイベントも目白押し。ひまわり迷路内で撮影した写真を投稿すると抽選でプレゼントが当たる「ツイートフォトコンテスト」も行われ、迷路イベントは楽しさも満開でした。

いつの日かひまわりを地域の食文化に

「十勝ほんべつひまわり迷路2019」は28日に閉幕しましたが、ひまわりストーリーにはまだ続きがあります。

前田農産では、迷路の主役を務め終えたひまわりを秋口に収穫。種をローストして地域のベーカリーや菓子店、学校給食に提供する計画です。また、迷路イベントの期間中にアンケートに答えた来場者に抽選で、前田農産のひまわりの種を使って満寿屋が焼いたひまわりパンをプレゼント。2020年の2月頃に発送する予定だそうです。

ひまわりを通じて農業の魅力と可能性を広く伝えたい。ひまわりを地域の食文化に育て上げたい――。それが前田さんの思いです。

「この夏、ひまわり迷路に来場した皆さんが、半年後に満寿屋でひまわりパンを見つけたとします。その時に、ひまわりが食の素材でもあることに気づくはずです。地域のパン屋さんやお菓子屋さんとコラボすれば、食を通じて農業を伝えることができます。さらに、ひまわりパンやひまわりクッキーが親しまれるようになれば、いつかは地域の食文化として認知される日が来る。そう信じています」

十勝管内はもとより道内各地、道外からも注目を集め、開催9日間で来場者が2600人に達した「十勝ほんべつひまわり迷路2019」。次回は夏休み期間中の開催を検討しているとか。迷路にパンに、ひまわりストーリーは2020年以降も続きます。

前田農産食品株式会社
所在地:中川郡本別町弥生町27番地
連絡先:0156-22-8680
公式サイト