サクランボの種類はとても多く、世界中で1,000種類を超えるサクランボが栽培されているといわれています。国内だけでも100種類ほど。栽培数や流通の関係によりスーパーなどに並ぶ品種はほんのわずかにすぎません。
その中でも石狩市浜益区で栽培されている「ごんべえ」は、幻のさくらんぼと言われる珍しい品種です。その謎と味に迫るべく、石狩市浜益区幌の「さくらんぼの善盛園」を訪れました。
開拓時代に浜益で果実栽培が始まる
▼果樹園は北海道開拓と同時期に開業
漁業のイメージが強い浜益ですが、「開拓史は農家の副業を奨励し、明治10年(1877年)浜益村(当時)に果樹苗木の無償下附を行い、村ではこれを各部落希望者に配分植樹を行わせていた」と村史に記されているなど、古くから果実などの栽培がおこなわれていました。今回訪れた「さくらんぼの善盛園」を経営する渡辺さん一族は140年以上前に秋田県から入植し、半農半漁から果実づくりを始めたと言います。
驚くべき「ごんべえ」命名の由来
▼善盛園を管理する渡辺善之さん
善盛園を管理するのは5代目となる渡辺善之さん。渡辺家では名前に「善」の字を取り入れるのが習わしだと言います。佐藤錦が佐藤栄助翁の情熱によって誕生したように、ごんべえもまた、新しい品種を開発した人物にちなんで命名されたものと予想していましたが、善之さんの口から驚愕の事実が打ち明けられました。
「私たちもごんべえについて一切わからないんです」
思わず「まぼろし~!」と叫ぶところでした。
善盛園の代表と呼べるごんべえは、3代目がどこからか苗木を手に入れて、ひっそりと育てられていた「名もなきさくらんぼ」でした。4代目となる善文さんが「このさくらんぼは何だ」と、約40年前にその存在に気付きます。茎の長さや大きさや色は佐藤錦に似ているものの、甘味が濃く果肉が柔らか。明らかに別の品種です。苗木の入手経路も品種もわからないため、名無しのごんべえから「ごんべえ」と名付けられました。
▼7月中旬からが食べごろ
「祖父の時代にどこからか購入した苗木が、浜益の果樹園の人たちによって改良されたのではないか」と善之さんは推測します。現在、農業試験センターで遺伝子を調べているそうなので、その正体が解明される日は近いかも知れません。
食べ放題は時間無制限
善盛園にはごんべいの木が300本以上もあるほか、30種以上のさくらんぼが栽培されています。それぞれのおいしさを比較してみました。味については個人的な感想ですので、あらかじめご了承ください。
▼幻のさくらんぼ「ごんべえ」
甘味、酸味ともにバランスが良く、さくらんぼ界のトップブランド「佐藤錦」を凌駕するおいしさ。果肉が柔らかく出荷すると黒く変色してしまうため、果樹園でしか食べることができない点も幻たる所以です。
▼ごんべえ・佐藤錦
ナポレオンと黄玉を掛け合わせて育成した品種です。保存性に優れていることから全国的に流通しています。「ごんべえ」と形は似ていますが、甘味は少しまろやかで歯ごたえがあります。
▼ごんべえ・南陽
ナポレオンの自然交雑実生から育成された品種です。酸味が抑えられており粒が大きく肉厚なので食べ応えがあります。山形県で育成された品種ですが、北海道のほうが色付きがよいことから、主産地は余市町となっています。
▼ごんべえ・水門
明治時代に小樽市で発見された品種です。「酸っぱいさくらんぼと思われがちですが、熟した水門は甘くておいしい。かわいそうな扱いを受けています」と渡辺さん。ほかの品種よりも安価で販売されることが多い庶民の味方です。
▼ごんべえ・紅てまり
ビックと佐藤錦を掛け合わせて山形県で育成され、2000年に登録された新しい品種です。大粒で果汁が豊富。甘味と適度な酸味が味わえます。
▼ごんべえ・蜜
その名の通り甘味が濃い品種です。善盛園でも栽培数は少なく、とても希少です。市場に出回ることはほとんどありません。
▼ごんべえ・寿(いわい)錦
中国の大連で生まれた品種です。大粒で味は濃厚です。糖度は約20度とマンゴー並み。 風で実がぶつかるだけで傷んでしまうため、ほとんど市場に出回りません。
ほかにも珍しい品種や、市場価格を聞いて驚く高級品種も栽培されています。さくらんぼ狩りは6月下旬から8月上旬まで。時間無制限食べ放題です。大型ビニールハウスで雨天でも安心。夏の思い出作りにお出かけください。
善盛園
所在地:石狩市浜益区幌403-1
電話:0133-79-3210
開園期間:6月下旬~8月上旬(天候により変動有り)
営業時間:8時~17時
さくらんぼ狩り入園料:中学生以上1,000円、小学生500円、4才~小学生未満300円
公式サイト