ごっこ汁・唐揚げ・バター炒めが美味!道南の冬の味覚『ごっこ』とは?

「ごっこ」をご存知でしょうか?一言でいえば「お魚」なのですが、特に道南の函館市恵山で郷土料理として根付く冬の味覚「ごっこ汁」に使われます。「ごっこ」って何でしょうか?「ごっこ」をもっと美味しく楽しむにはどうすれば?この記事では、そんな「ごっこ」事情と調理方法を紹介します。

「ごっこ」ってなに?

そもそも「ごっこ」って何なのでしょうか?一般的な和名は「ホテイウオ」で、布袋魚と書くこともあります。由来は七福神の布袋さんのような、どこかかわいらしいお顔と体型からだと、言われています。

▼水槽で泳ぐごっこ(2014年恵山ごっこまつり)

そのインパクトの強い見た目はお世辞にも美しいとは言えず、むしろ太った魚という印象。ごろんとしています。うろこがない上に、黒くてかり、ぬめりがあるため、グロテスクな魚とも評されます。実は、この魚の生態についてはまだ謎の部分が多いそうですが、簡単に以下のように紹介することが出来ます。

ホテイウオ(布袋魚、北海道愛称:ごっこ)
特徴1:黒いボディー、うろこと第一せびれがなく、ぬめりあり、ぷよぷよ
特徴2:かわいらしい小さな顔に比べて太ったボディーが特徴
特徴3:おなかには大きな吸盤が一つ。これで岩などにくっつく
特徴4:骨は軟骨状態、皮はゼラチン状態、身は淡白でアンコウみたい
分類:カサゴ目ダンゴウオ科
全長:約30~40cm
分布:若狭湾以北の日本海やオホーツク海、ベーリング海など
生息域:普段は沖合いで水深200mほどの海域を漂う、産卵期に浅い海域へ
えさ:くらげ類・えび類
産卵期(12月~4月):雌はおなかが卵いっぱいでふくれ、雄は卵を守る

▼ごっこの背中側と吸盤のあるお腹側

▼函館市椴法華地区では旬になるとこのように詰められて各家庭に配られることも

この冬季の産卵期に、成熟したごっこたちが海の深いところから浅い岩礁などにやってくるため、沿岸で刺し網などにより漁がなされます。したがって、ごっこ料理も冬が旬ということになります。(道内では比較的スーパーでも手に入りやすいですが、道外ですとあまり販売されていませんのでご注意)

ごっこは『海のすっぽん』とも言われるほどの珍味。2月の極寒の時期は身が引き締まってさらにおいしいとされます。味は淡白で、アンコウにも似ています。皮の部分は外側が黒く内側が白く、ゼラチン質で、口の中に入れると、とろける感覚が楽しめます。 ごっこはコラーゲンたっぷりですので、女性の方にはうれしい美肌効果あり。また、頭が良くなるとか、ボケ防止にも効果的という研究結果が出ているようです。

早速調理!つかみどころがなく、さばくのにコツ

では早速調理してみましょう。ごっこは見かけはプックリ、プヨプヨ、触るとヌルヌル、おなかには吸盤。その体はつかみどころがなく、そのままでは作業ができません。

▼熱湯をかけたごっことブツ切りにした身

まずは、熱湯をかけてぬめりを取るところからスタート。ぬめりが取れて身が少し縮んだら、あとは基本的に普通の魚のさばき方と一緒です。メスの体の膨らみはほとんど卵で、卵を丁寧にかき出すと、随分小さくなります。固定しづらく包丁が入れにくいので、キッチンばさみも使って作業。身と骨に分かれれば、キッチンばさみでブツ切りにしていくだけなので、触ることに慣れてしまえばそれほど難しくはありません。

「ごっこ汁」はしょうゆ味が基本、好みで味噌仕立ても

ごっこのポピュラーな食べ方は、やはり「ごっこ汁」です。薄いしょうゆ仕立てが普通です。小さい卵がたっぷり入っている雌を使うのが一般的で、市場などでも雄よりも割高で売られます。しかし、雄も雌も両方使うのがツウな食べ方。雄は肉厚で身がしっかりしていておいしいのです。

ごっこ汁はごっこ、豆腐、長ネギが基本的な材料です。まず昆布で出汁を取り、ブツ切りのごっこを入れて煮立たせるとかなりのアクが出るので、こまめにすくい取ります。しょうゆなどで味をつけ、豆腐や好みの野菜を加えて煮込めばできあがり。

コラーゲンをたっぷり含み、身のプルプル感、卵のプチプチとした食感に、トロッとした白子の旨み。汁のクリーミーさが、体を温めてくれます。骨も柔らかくて、子どもでもバクバク食べてしまうので、食べ終わった後のお皿がきれいなところもすてきです。

上記は函館地方で一般的な作り方ですが、地域や家庭によって入れる材料や味付けも違いがあります。味付けはしょうゆ味が基本のようですが、味噌仕立ても人気です。餅を入れる家庭、生のりを入れる家庭、みそ汁にする家庭など様々と言います。

▼渡島半島西部・松前地方のごっこ汁はこのようにシンプル

絶品!生干しごっこの炒め物、唐揚げ

生ごっこを使ったごっこ汁のほかに、「ごっこの生干し」という食べ方もあります。生干しごっこは、さばいたごっこを3~4日寒風にさらして吊るし旨みを凝縮させた、漁師さんの料理だそうです。函館市東部の漁村では旬になると、干したごっこを魚屋の小さなトラックで売りに来るというところもあります。

▼函館市椴法華地区ではトラックで売りに来るという「生干しごっこ」。上写真は2015年恵山ごっこまつりにて。

この干したごっこは、塩コショウしたり、バター醤油で焼いただけのおつまみ(写真)にして食したりします。ごっこまつりで調理、販売されている「生干しごっこの鉄板焼き」は、油で炒め、醤油ベースの特製ダレを絡めたもの。香ばしい香りとカリッとした食感が絶品です。

▼ごっこの鉄板焼き(2015年恵山ごっこまつり)

こちらの写真は、生干しごっこで、「バター炒め」にしたものと、塩コショウのみの下味で片栗粉をまぶして「唐揚げ」にしたもの。干すことで、生ごっこよりも旨みが凝縮されており、焼きたて、揚げたては、口の中でジュワッと旨みが広がっていきます。コクのある味わいが好みの方には、バター炒めがおすすめ。ごっこそのものの風味をより味わいたいときは、シンプルな塩味の唐揚げがおすすめです。

▼ごっこの唐揚げ

▼ごっこのバター炒め

そのほか、完全に干したごっこと昆布の煮付けという料理が食べられている家庭もあります。ごっこといってもいろいろな食べ方があるのですね。 地元以外ではなかなか手に入らない「ごっこの生干し」は通信販売でも入手できます。この記事を読んでごっこが気になった方、ぜひ味わってみてください。ごっこファンが増えたら嬉しいです。

ごっこ汁を食べたことがあるか調査しました

北海道ファンマガジンでは2010年冬に、ごっこ汁を食べたことがあるかアンケート調査をしました。

アンケート名:ごっこ汁経験率アンケート
アンケート実施期間:2010年2月~2010年3月
アンケート実施開始日:2010年2月23日
アンケート実施終了日:2010年3月31日
対象地域:全国
回答総数:253

設問:あなたは、特に道南で有名な冬の料理「ごっこ汁」を食べたことがありますか?
選択肢1:道民:ある(67件・42.9%)
選択肢2:道民:ない(89件・57.1%)
選択肢3:道外:ある(20件・20.6%)
選択肢4:道外:ない(77件・79.4%)

道民では4割強がごっこ汁を食べたことがあると回答。一方で、道民でも半数以上が食べたことがないということが判明しました。道外では2割程度の方がごっこ汁を堪能したことありと回答。ごっこ汁を食べたことがない方は、ぜひ次の冬には味わってみてください。