小さい頃、プリンを食べる度に思い描いていた「大きなサイズのプリンが食べた~い」という夢。実はそんなプリンが食べられるお店があるのです。
お店の名前は「海の町の洋菓子店ガトーフレール」、プリンの名前は「土鍋プリン」! 土鍋にプリン? プリンが土鍋に? ネーミングにも惹かれつつ、お店のある小樽市銭函に行ってきました。
でっかいプリンは子どもの憧れ
「海の町の洋菓子店ガトーフレール」(以降、ガトーフレール)は、JR函館本線銭函駅から距離にして1km弱、歩いて20分弱の場所にあります。オーナーシェフの菊地睦規さんにお話をお聞きしました。
▼ガトーフレール。店の前にはベンチがあり、そこで食べることができる
▼オーナーシェフの菊地睦規さん
ガトーフレールがオープンしたのは2002月6月のこと。銭函駅前に構えていたお店を昨年(2015年)4月に現在の場所に移転しました。理由は、店が手狭になったことと、駐車場が必要になったことから。「口コミで広がったのか、遠方から車で来られる方がけっこういらっしゃるのです」(菊地さん)。
▼これが土鍋プリン。本当に土鍋に入っているのです
土鍋プリンができたのは7~8年前。最初は店の宣伝も兼ねて「何かおもしろいもの、何これ!と笑っちゃうようなものが作りたかったんです」という菊地さん。そういえば小さい頃は大きなプリンが食べたかったなぁ~と思い出し、土鍋の蓋を開けてプリンが出てきたらおもしろいぞと思ったのだそう。最初は単に遊び感覚だった土鍋プリンも作り出すと、根っからのこだわり、チャレンジャー精神がムクムクとわき、おもしろいだけでなくおいしいものをと、できたのがこちらなのだそう。はじめは冬期限定メニューだった土鍋プリンですが、リクエストが多く、3年目から通年販売になりました。
▼量ると1667gもある土鍋プリン。土鍋も使い捨てではなく、きちんと使えます
最近はやりのトロトロプリンではないオーソドックスなタイプ。実際に食べてみると、卵の味がよくわかる優しい味わいのプリンです。「購入後すぐに店の外のベンチでひとつペロリと食べてしまうお客さまもいます」(菊地さん)。おいしくて甘さ控えめなので、ひとりで完食できるのもよくわかります。
「多い日には1日100個以上出ることもあるんです」と菊地さん。オーブンでいちいち焼いているのでけっこう時間がかかるそうで、1日に作れる数には限りがあります。夕方にはなくなることがあるので、どうしても食べたいという方は予約をしておいた方がよさそうです。
誤魔化しがきかないからこそ焼き菓子はおもしろい
現在は、焼き菓子に力を入れているガトーフレール。もともと焼き菓子が好きで、他店に行っても焼き菓子に目が行くという菊地さん。「焼き菓子は簡単に作れますが、奥が深くて難しいんです。オーブンから出したものが、そのまま商品になります。ケーキの様にデコレーションなどはしないので、何のごまかしもできないんです。一発勝負的なおもしろさがあるんですよね」と菊地さんはおっしゃいます。
▼焼き菓子のスペースがお店の半分以上を占めています
「土鍋プリンのガトーフレールというイメージが定着しつつありますが、焼き菓子のガトーフレールというイメージに変えたい」という菊地さん。自分がおいしいと思うものを作ろうと何度も試作をし、さらには、製品として店に並んでからも少しずつ変えていっているのだそうです。
おすすめのケーキをご紹介!もちもちシリーズやアップルパイも
最後に、ガトーフレールで人気の高いケーキを紹介しておきましょう。まずは「もちもちシリーズ」。これは「レアチーズケーキとお餅が一緒に食べられないかなぁ」という奥さまのアイディアを商品化したもので、土鍋プリンよりも前からあるメニューです。
のし餅をイメージしてレアチーズのムースを求肥でくるんだこのシリーズ。のし餅だけに、紅白があればいいかな、という発想からクリームチーズのムースが入った白い「もちもちチーズ」と、いちごで味付けをしたピンクの「もちもちイチゴ」が販売されています。季節によってはチョコレートやかぼちゃなどで作られたものも並ぶそう。取材時にはチョコレート味の「もちもちショコラ」が販売されていました。お餅とチーズケーキが合うんだという新鮮な驚きを与えてくれる生菓子です。
▼大福みたいなんだけど食べたらチーズケーキの「もちもち」シリーズ
そして余市のサンふじという林檎で作られたアップルパイ。固さ、味、食感などから、使用するのはサンふじ以外考えられないと菊地さんは話します。林檎の旬の時期に1年分の林檎を買い、それを煮込んでフィリングを作っておきますが、夏ぐらいにはなくなることが多いのだそうです。
▼サクサクしていてほどよい酸味がおいしく、林檎の食感がきちんとあるのがうれしいアップルパイ
ほかにお店の方針はありますか? という質問に「店内商品は、小麦だけでなくバターなど、手に入るものはほぼ道産です」と答えてくれた菊地さん。土鍋プリンやもちもちシリーズなど、アイデア先行のユーモラスなお菓子が注目されがちですが、その根底にあるのは、素材のよさと確かな技術、そして何よりお菓子に対する情熱です。だからこそお客さんは何度も足を運びたくなるのでしょう。銭函に行った際はぜひ立ち寄ってみてはいかがですか?