レブンアツモリソウだけじゃない! 礼文島に行ったら見るべき花5選

【礼文町】「花の浮島」との異名を持つ礼文島。その島に咲く花々はおよそ300種類にも及ぶとされています。本州では約2000m級の山岳地帯でないと見られない希少な高山植物が、海抜0mから見られます。まさに高山植物の花の楽園です。

その中でも注目すべきは、レブンアツモリソウ、レブンウスユキソウ、レブンキンバイ、レブンソウ、フタナミソウ。これらは礼文島に行かなければ見ることのできない固有種、または礼文島で見るべき種です。どんな花なのかご紹介しましょう!

見頃は5~6月!礼文島を代表する固有種「レブンアツモリソウ」

まずは礼文島固有種の代表格「レブンアツモリソウ」。ランの仲間(ラン科アツモリソウ属)の多年草で、25~40㎝ほどの高さに育ち、5~6月に3.5~5㎝ほどの一部袋状の花をつける種です。北海道や本州に分布するアツモリソウは通常、あずき色や赤紫色など濃い色の花を咲かせますが、淡いクリームまたは白色の花であるのがレブンアツモリソウの特長です。かわいらしい可憐な花で人気があります。

礼文島では島の象徴的存在で観光資源にもなっているレブンアツモリソウ。いつごろまでか詳細な記録はありませんが、かつては礼文島全域で見られたそう。しかし、希少性及び美しさから盗掘されてきた歴史があり、自生地や生育数が激減してしまいました。さらにはトドマツやササなどが増加し衰退の危険性、人為的に植えられたカラフトアツモリソウとの交雑の懸念もあり、環境省レッドリスト絶滅危惧IB類(EN)に、また、特定国内希少野生動植物種に指定され、保護されています。

現在、開花個体数250未満(レッドデータブック2000)とされるレブンアツモリソウの自生地は、南部と北部に大別されます。島北部・鉄府の標高60~80mに位置する「レブンアツモリソウ群生地」(1992年設定の群生地保護林は9.6ヘクタール、北海道指定天然記念物14.1ヘクタール)は最大の自生地で、その一部は観光客らに開放されています。島北部ではほかに船泊地区の群生地(1.2ヘクタール)が大きなところで、島南部では桃岩歩道や礼文林道でも小規模ながら見られるほか、近年は礼文空港や礼文小学校近くでも発見されています。

自生ではないものの、礼文町高山植物培養センターでは人工培養されたレブンアツモリソウを見ることができます。人工増殖は2001年に初めて成功し、それ以降数を増やしてきました。もし6月までに礼文に行けない場合、8月までなら同センターでも見ることができます。ちなみに、礼文島のキャラクター「あつもん」はレブンアツモリソウがモチーフです。

レブンの名を冠する花としてはほかに、「レブンキンバイソウ」、「レブンウスユキソウ」、「レブンコザクラ」、「レブンソウ」、「レブンハナシノブ」、「レブンシオガマ」、「レブントウヒレン」があります。この中には礼文島でしか見られない固有種も含まれます。ではレブンアツモリソウ以外に見ておきたい礼文の花を紹介しましょう。

金色の花が美しい「レブンキンバイソウ」

「レブンキンバイソウ」はキンポウゲ科キンバイソウ属の多年草で礼文島固有種です。最大80㎝ほどの高さの植物で、6月に金色の梅に似た4㎝ほどの花を咲かせます。花弁のように見えますが実は萼、雄しべのように見えるのが花弁。桃岩遊歩道の谷間に「キンバイの谷」と呼ばれる群生地があり、最盛期には一面が黄金色に染まります。

礼文町花に指定されるエーデルワイス「レブンウスユキソウ」

「レブンウスユキソウ」は礼文町花に指定されている礼文を代表する花の一つです(この種については礼文島外でも道内で確認されています)。アルプスのエーデルワイスの仲間であることから、「北海道で咲くエーデルワイス」と呼ばれてきました。キク科ウスユキソウ属の多年草で、花のように見えるのは実は苞葉で、薄雪のようだからと名付けられました。高さは最大30㎝ほどで、6月~7月にかけて開花を迎え、秋には星状のまま乾いた姿が観察できます。代表的なレブンウスユキソウ群生地は礼文林道コースにあり、最盛期には真っ白な斜面を見ることができます。

マメ!「レブンソウ」

「レブンソウ」はまさに礼文島固有種。マメ科オヤマノエンドウ属に属する植物です。白い絹毛が観察できる葉がオジギソウのようについています。高さは最大25cmほどになり、6月から1か月ほどの間、茎の先に紫(まれに白色)の花を数個咲かせます。 特徴は上向きに花がつくということ。環境省レッドデータブック絶滅危惧IA類 (CR)で、現在は桃岩展望台、桃岩歩道で見られます。

礼文の山の名前に由来するタンポポ「フタナミソウ」

そしてもう一つ、礼文島固有種が「フタナミソウ」。礼文島にある二並山を由来とするキク科の植物です。茎の先に6月に咲かせる花は黄色で、花火のように細かい花びらが広がります。そのためフタナミタンポポともいうこの植物は、高さ約10cmほどになります。岩の上に咲くことが多いので、群生するわけではないようです。環境省レッドリスト絶滅危惧IA類(CR)の貴重な植物で、近年急激に個体数を減らしているため、簡単に見ることはできません(自生地は公表されていません)。

このように礼文島で見られるオススメの花をご紹介してきましたが、見てみたい花は見つかりましたか? 咲く順番をざっくりいうと、レブンコザクラ・レブンアツモリソウ(5~6月)、レブンハナシノブ・レブンキンバイソウ・フタナミソウ(6月)、レブンソウ・レブンシオガマ・レブンウスユキソウ(6~7月)、レブントウヒレン(7~8月)。一度にすべての花を見ることはできませんが、幾つかピックアップして行きたい時期を決めたいものです。初夏にこそ訪れてほしい、そんな花の浮島・礼文島です。

利尻島にも固有種が!!

お隣の利尻島にも固有種があります。「リシリヒナゲシ」は利尻岳山頂近くに生育する植物です。岩場を好み、茎の先に直径3cmほどの薄黄色のかわいらしい花を咲かせ、高さは15cmほどになります。実は国内に自生しているケシ科ケシ属としては国内唯一の種類だそうで、その1種が利尻島にしかないというのはすごいことです。

「リシリアザミ」はキク科アザミ属の植物です。発見されたのが1998年という比較的新しい種なんです。紫色のアザミ属独特の花を咲かせます。類似種のチシマアザミと異なるのは花が上を向いて咲くということです。利尻礼文の固有種としては背丈が高い種類の一つです。

「ボタンキンバイ」はキンポウゲ科キンバイソウ属の植物で、利尻岳山頂近くに生育しています。 50cmほどの背丈にある植物で、夏の7~8月にかけて茎の先に1つの黄色とオレンジ色の中間のような色の花を咲かせます。

利尻島にも礼文島と同様、リシリの名を冠する種でも利尻島固有種ではないものがあります。利尻岳山頂付近に咲く「リシリゲンゲ」、「リシリオウギ」、青色のかわいらしい花をつける「リシリリンドウ」、紫色の花を縦に咲かせる「リシリブシ」などがあります。2003年7月に利尻岳で発見された新種「リシリハタザオ」は、高さ約40cmで、直径1cmほどの白い花を咲かせる花です。礼文島と一緒に行ってみるのも良いでしょう。