今この北海道ファンマガジンを読んでくれている人の中で、定期的にお寺に詣でる習慣のある人は、一体何人くらいいるのでしょうか。おそらく、ほとんどの人は何か特別な理由がない限り、お寺に足を踏み入れることはないのでは?
そんな日本人とお寺の関係をもっと近しいものにしたいと奮闘しているお寺が北広島市にあります。なんだか、いろいろユニークな取り組みをされているようですよ。
広い敷地が必要だった理由とは
そのお寺とは、北広島市の「達磨寺(だるまじ)」。1998(平成10)年に新寺建立された、曹洞宗のお寺です。まず驚くのは、その敷地面積の広さ。なんと2500坪もあり、しかも囲いや門がないため、誰でも自由に出入りすることができます。
「できるだけ郊外の自然の中に建てたいと思い、この場所に決めました。ここでは宗派を問わず、誰もが来たい時に来られるようになっているんです」
と仰るのは、住職の伊藤朋山さん。広さにも驚きますが、敷地内に川が流れていたり、滝があったりするのも驚きます。しかもこれ、伊藤さん自身がつくったというではありませんか。
▼お寺に川が流れているなんて!
「地獄のイメージで、三途の川をつくりたかったんですよ」(伊藤さん)
なんでも、地獄と極楽があり、その間に人が住んでいるということの表現でもあるのだとか。では、滝の意味は?
▼雪景色にも映える美しい滝が
「川をつくるために土を掘ったら、水が3メートルも上がったので滝にしたんです」(伊藤さん)
つまりはポンプなどを利用した人工ではなく、自然にできあがった自噴の滝。なんだか、力強さを感じます。
▼川上には優しいお顔の微笑(ほほえみ)観音も
「子どもたちが遊べる池もあるので、ぜひ遊びに来てほしいんです。子どもは財産ですからね」
と目を細める伊藤さんがイメージしているのは、昔の寺子屋のようなコミュニティの場。だからこそ囲いも門もなく、広々とした、誰にでも開かれたお寺になっているのです。
達磨寺の由来とユニークな取り組み
そもそも、なぜ達磨寺という名前なのでしょうか。
「達磨といえば、禅宗の初祖(先祖)と言われています。仏教の教え、その原点に戻るという意味で名付けました。あとはやはり、日本で親しまれている達磨さんですから、そこにあやかって、人々から親しまれる寺にしたいという思いですね」
そんな伊藤さんの言葉通り、お寺ではたくさんの達磨さんに出会えます。
▼たくさんの達磨コレクション
お寺にある達磨たちは、実に2000体以上。半分は収集し、半分は寄贈されたものなのだそう。中にはオモチャの達磨落としやおきあがりこぼしなどもあり、こちらも人間に対するのと同様、どんな達磨さんに対してもウェルカムの精神なのでしょう。
さて、再び視線をお寺の外に移してみましょう。敷地内には、何やらやたらと目を引くポストが鎮座しています。
▼ポストの投函口から出ているものは……!
いつも見慣れた真っ赤なポスト、かと思いきや、投函口から巨大な舌が飛び出しています。知らずに近づくと、思わず悲鳴を上げてしまいそうです。
「これは舌(うそ)供養というものです。昔から口は災いの元と言うように、嘘をついたり口が滑ったりしたことは誰しもありますよね。それをこの場で反省しようというわけです」(伊藤さん)
反省したい人は、懺悔の手紙を書いてポストに投函します。ちなみにポストの横にあるお堂の中には、閻魔様もいらっしゃいます。
▼「返信希望」と書くと閻魔様からの返事がもらえる
達磨寺を知れば知るほど、通常のお寺のイメージとは少し違う、と感じるかもしれません。
「遊びも真剣にやるというのが大切。ユーモアをもって生活しようと、伝えたいですね」(伊藤さん)
確かに、ここには住職である伊藤さん自身の遊び心が溢れていて、足を踏み入れた瞬間から、楽しく温かな空気に包まれます。
▼たくさんの仏像やお地蔵さんも見守ってくれる
ちなみに伊藤さんの遊び心は、なんとCDまで作り出してしまいました。
▼作詞はすべて住職自身が手がけたのだとか
十勝花子&ミス・デーモンズの歌う『2016えんま音頭』とclubハッピーカムによる『日本国中服福が来る』です。遊びも真剣にやるという伊藤さんの精神がまさに体現された2枚、お見事です。
達磨寺には、まだまだ紹介しきれないユニークな仕掛けがたくさんあります。ぜひ実際に訪れてみて、その世界観に触れてみてください。驚きながら、笑いながら、帰る頃にはなんとなく生きるのが楽に感じられているかもしれませんよ。