北海道の寿都町に「ダイマル大谷会館」の看板を掲げた、大きな建物があります。その立派な佇まいや暖簾から、まるで老舗旅館や造り酒屋のような雰囲気を醸し出していますが、実はここ、食堂兼宿泊施設なのです。しかもその歩みは、お客さんからの要望に応えてきた軌跡でもあるといいます。一体どういうことなのか、お邪魔してみました。
漁師の姿に後押しされて食堂スタート
▼なんとも趣のある佇まい
ダイマル大谷会館の創業は、1929(昭和4)年。もともとは漁師相手の、雑貨や食料品を扱う商店でした。
冬になると、凍てつくような日本海から帰ってくる漁師たちは皆、冷え切った体を震わせています。そんな漁師たちに「何か温かいものを」と考えた初代は、もっきり酒1杯と鉄鍋に入った熱々の鍋焼きうどんを振る舞いました。これが漁師たちの間で大好評。大谷食堂の始まりであり、大谷会館の第一歩となったのです。
▼店の窓を開けると、そこはもう港
現在は3代目が切り盛りするダイマル大谷会館。港のすぐ隣という立地にあって、新鮮な魚介類には事欠きません。メニュー表を広げると、海の幸を使った品々が並びます。
▼磯ラーメン(税込800円)
中でも珍しいのが「磯ラーメン」。ラーメンの中に、海老、いか、貝類がトッピングされ、さらには生海苔まで。スープはしょう油と塩の中間くらいの味わいで、これがまた生海苔などから漂う磯の香りにマッチしています。ここでしか味わえない、だからこそぜひ味わっておきたい一品です。
▼ほっけ半身焼・いか刺セット(税込1,300円)
人気のセットメニューが「ほっけ半身焼・いか刺セット」です。ほっけは半身とは思えないほど肉厚で、これだけでも食べ応え十分。
▼セットのいか刺も美しい
そこにいか刺も付くというから、なんとも贅沢な気分になります。新鮮ないか刺は見た目にも美しく、コリコリねっとりした食感がたまりません。
▼ほっけフライ定食(税込800円)
また、通常のメニュー表の他にぜひ目を通してほしいのが、テーブルの上に置かれた「本日のおすすめ」です。書かれているのは、地元寿都で獲れたばかりの、新鮮そのものの魚介メニューの数々。
中でも人気なのが「ほっけフライ定食」。道外からの観光客は「ほっけをフライにしちゃうの?」と驚くかもしれませんが、北海道では定番の食べ方。揚げることで身がふわふわになり、焼くのとはまた違ったおいしさなので、本日のおすすめに記載されていたら注文することをおすすめします。
客の声に応えて宿もスタート
さて、ダイマル大谷会館が、冬の漁師の震える姿から食堂を始めたことは、先に述べた通り。
▼広々とした店内でゆったり食事できる
初代より2代目が継いでいた頃、再び転機が訪れます。しかも、またしてもお客さんの声がきっかけだったのです。
「新鮮な魚料理にうまい酒。あとは何とかこの港の真ん前に、宿をつくれないものかなぁ」
お客さんからそう言われては、やってみないわけにはいきません。その名も「港前庵」(こうぜいあん)という宿を、1993(平成5)年にオープンします。
▼またしても客の要望に後押しされて
3代目になった現在でも、港前庵は大人気。何しろ1泊2食付きでも、1名1室利用で税込8,640円からという安さです。他にもプランは様々で、たとえば同じ1名1室利用で、1泊夕食のみなら税込7,800円から、1泊朝食のみなら税込6,700円から。2名利用ならさらに安くなるので、興味のある人は公式サイトでチェックしてみてください。
▼人気の五右衛門風呂
ちなみに部屋にはユニットバスが付いているタイプと付いていないタイプがあるのですが、それとは別に五右衛門風呂が楽しめる入浴場もあります。このスタイルが不思議と落ち着くと評判で、宿泊する際にはぜひとも試してみたいところです。
▼看板に書かれたダイマル(大○)のロゴ
お客さんの要望に応え、時代と共に変化してきたダイマル大谷会館。こうして受け継がれてきた人情は、もちろん現在のダイマル大谷会館にも息づいています。
寿都を訪れた際は、ぜひ立ち寄ってみてください。食事をするだけでも良し、宿泊して五右衛門風呂に浸かるも良し。歴代の経営者の心意気が、きっと感じられるはずです。