どこかに旅に出かけたら、その土地ならではの料理を食べたくなります。いわゆる郷土料理と呼ばれる、地域の風土に根ざし、受け継がれ、日常的に食べられてきたもの。素朴な味わいの中に、固有の歴史や文化まで感じられるもの。
そんな郷土料理を出している店が、北海道は江差にあります。メニューに並ぶのは、もちろん江差の郷土料理。さっそく訪ねてみましょう。
檜山の郷土食「ふきんこ餅」
お邪魔したのは、中歌町の「皐月蔵チャミセ」というお店。とっても雰囲気のあるお店ですが、まずはここで人気の郷土料理からご紹介していきましょう。
▼ふきんこうどん(税込600円)
まず出てきたのは「ふきんこうどん」。檜山の郷土食として食べられてきた「ふきんこ餅」が入った、優しい味わいのうどんです。ふきんこ餅は生のままのじゃがいもを摺り下ろし、サラシで絞ったものと、絞った水分の底に溜まったデンプンとを混ぜ合わせて作ります。
▼何かの武器? いえ、調理器具です
じゃがいもを摺り下ろす際には、昔から粗い下ろしがねが使われます。皐月蔵チャミセでは、なんと一斗缶に五寸釘で穴を開けた、オリジナルの下ろしがねを使用しています。この粗い目が、じゃがいものシャリシャリした食感を残し、おいしいふきんこ餅に仕上がるのだとか。
▼手前にあるのがふきんこ餅
食感も独特ですが、じゃがいもの甘さをちゃんと感じられることにも驚かされます。時期やじゃがいもの種類によってデンプン質が変わるので、その都度、片栗粉の配分などを微妙に変えているのだそう。
▼ふきんこ汁膳(税込700円)
ふきんこ餅を味わうなら、具だくさんのふきんこ汁もおすすめです。単品(税込400円)でもいいですが、道南特産の岩のりを乗せた黒のりご飯、そして箸休めも付いた「ふきんこ汁膳」でちょっと贅沢な気分に。滋味あふれるふきんこ汁を堪能してください。
皐月蔵チャミセで時間を忘れる
さて、お待たせしました。こんな素敵な郷土料理が食べられる皐月蔵チャミセとは、一体どんなお店なのでしょうか。
▼皐月蔵チャミセ
外観からして、なんだか重厚な雰囲気が漂っています。焦げ茶色なので木造の建物に見えますが、実はこれ、石蔵なのです。海が近いため、潮風から守るために石の外壁を木で覆っているのだそう。皐月蔵チャミセの石蔵は、米や酒を扱う商家のものだったということで、歴史を感じます。
▼どこか懐かしい空気感漂う店内
リノベーションされた店内に入っても、まさかここが石蔵だとは信じられません。どこか昔の日本家屋のような懐かしさが漂っていて、時間を忘れてのんびりと過ごしたくなります。皐月蔵チャミセは人が集まるコミュニティ・カフェでありたいということで、なるほど、納得です。
▼皐月蔵のお吸物ケイラン膳(税込500円)
他にも、ここで食べられる郷土料理などを紹介しておきましょう。皐月蔵チャミセの看板メニューなのが「皐月蔵のお吸物ケイラン膳」です。江差の郷土食「けいらん」については、以前、北海道ファンマガジンでも取材したことがありました。餡の入った餅菓子が浮かぶお吸物は、塩味と甘さの絶妙な組み合わせ。サクラ茶と箸休めも付いてきます。
▼クリームふきんこ餅(税込450円)
おいしい郷土料理をいただいた後は、一風変わったデザートなどいかがでしょう。皐月蔵チャミセオリジナルスイーツの「クリームふきんこ餅」です。
最初にご紹介したふきんこ餅をパフェ風にしてしまうという、大胆な発想。しかも熱々のふきんこ餅にアイスクリームを乗せ、さらに黒蜜をかけるというから、ますます興味がそそられます。桜の塩漬けもいいアクセントです。
皐月蔵チャミセは、江差町の歴まち商店街が企画した「着物でまち歩き」ともコラボしています。着物を着て、こんな風情のあるカフェを訪れたら、なんだかタイムトリップした気分になれそう。ぜひ郷土料理に舌鼓を打ちつつ、いにしえの時に思いを馳せてみてください。
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