有名な滝が秘境化?滝壺なく階段状に流れ落ちる 千歳「美笛の滝」

今回「秘境の滝巡り」ということで、北海道の知られざる滝を探していたのですが、観光で有名な滝でも数年前から現在まで、見に行くことができない場所がいくつもあることがわかりました。

その理由は今から3年前、日本列島へ立て続けに上陸した台風12号と11号による「平成26年(2014年)8月豪雨」、さらに同年9月に北海道を襲った記録的な大雨の影響で、滝までの道が川の氾濫等で寸断されたためです。

そうなると少なくとも3年は人が入っていないことになるので、現在では秘境と言えるのではないでしょうか。以前は名の知られた有名な滝も、現在はどのようになっているのか、とても気になります。これは行かざるを得ません。

準備とルート設定

今回は千歳市にある「美笛の滝」へ向かいました。アイヌ語で「小石原にある川」を意味する「ピプイ」を語源とし、千歳川の支流の一つ「ソウオン美笛川」にある滝です。「ソウオン」はアイヌ語で「滝に入る」という意味ですので、名前からして惹きつけられます。

場所は国道276号線(支笏国道)から林道へ入るのですが、入り口に看板があるのでわかりやすいでしょう。

林道へ入るとすぐに「災害のため、美笛の滝駐車場に行けません」という看板があります。こちらの滝は、前述の災害の影響で、現在は道路が寸断されており駐車場までたどり着けません。以前あった滝までの探勝路も現在は管理されていない状態ですので、滝を見に行くには、石狩森林管理署から入林承認証を発行してもらい、千歳森林事務所森林官の指示を受けなければなりません。さらには、かすかな道の痕跡を探して藪をかきわけるか、沢登りをするしかない状態です。


▼林道を1.3km程進むと看板があります

▼道路が50m程寸断されています

探勝路の痕跡を探すより沢登りの方が間違いなく滝へ通じるので、沢登りで行くことにします。寸断された道路から沢へ入り、滝までは約1km。前回の「4つの滝」より距離はありませんし、川幅も狭く流れている水量もかなり少ないですが、斜度はけっこうあります。

川にある石は、上流へ行くにつれ大きな岩となり、岩をよじ登らなければならない事もありますので、沢登り用の靴と手袋は必要です。

秘境感満点!ソウオン美笛川

入渓し登り始めて5分と経たないうちに、周りの岩が大きくなり、折れた木が行く手を塞いだりしています。折れた木の太さを見ると、改めて自然の力というものを感じます。

ゆっくり慎重にルートを選び、登っていくのですが、川のカーブを曲がる度に新鮮な光景が目に入ります。以前使われていた山道では、見ることができないであろう景色は、まさに異世界の様相です。

▼苔が生した緑色の岩が連なる沢

1時間30分程登り、周りが多少広く上流が左へカーブしている場所へくると、今までにない雰囲気になります。言葉では言い表し辛いのですが、清々しい景色の中に言い知れぬ威圧感を感じるのです。第六感というやつでしょうか。まさか熊? 暫く周りを見回したり耳をそばだてたりして、警戒しますが特に変わった様子はありません。安心しつつも、なんとも言えない威圧感を感じながら、先へ進み左へ曲がると、100m程奥の正面に白い筋が見えます。

迫力と美しさを併せ持つ美笛の滝

この威圧感は、美笛の滝だったのかと、少しずつ滝へ向かって進むうちに、どんどん大きくなる落水の音を聞いて、理解できました。見えていない状態、音も聞こえない状態でも、近くに存在するというのが肌で感じられていたのでしょう。

滝を目にしてからは吸い込まれるように滝へ向かって進み、近くまでいくと、その美しさに暫く見惚れてしまいました。高さは約50mの迫力、幅は約7m、全体は3段になっており、上部はまっすぐに落水し中間と下部は階段状の岩を伝って流れ落る形状で、その水が描く動線は白く美しく輝いています。

中間には広く平らな部分があり、水飛沫を浴びながら間近で眺めることができます。階段状の岩は垂直から下へ向かうに従って斜度が緩くなっており、滑り台のように水が落ちてくる為、滝壺はありません。どのような過程を経て、このような形になったのか非常に気になりますね。

ヒンヤリとした水飛沫の中、美しい滝の全貌を眺めていると、たどり着いた達成感に喜びを感じ、疲れているはずなのに元気が出てきます。これが癒し効果でしょうか(笑)。

帰りがけ、沢の途中から山道を辿って下りて行き、駐車場を見てきました。看板やベンチが多少壊れていますが、綺麗な状態で残っています。

千歳森林事務所森林官の担当者にお聞きしたところ、川の氾濫で寸断された道路の部分では、川の流れが以前と変わっており、以前のようには戻すことができず、道路の修理は未定とのことでした。しかし調査をしているとの事でしたので、何かしらの方法を検討しているのではないでしょうか。

秘境感ある現在の状態も好きですが、以前のように誰もが楽しめるようになると良いですね。

【動画】美笛の滝