食の安全特設ページ―雪印食品・ミートホープ・石屋製菓

 北海道は全国有数の食糧生産基地です。食のおいしさはもちろん高品質で、全国的に有名なものも数多く生産されています。そんな北海道で近年、食の安全を疑わざるを得ない事件が頻発しています。それは、北海道のブランド、イメージを損なっていることにもなります。

 2007年に「ミートホープ食肉偽装事件」「石屋製菓事件」、2000年に雪印乳業「雪印集団食中毒事件」、2002年に雪印食品「雪印牛肉偽装事件」。こうしたネガティブな話題に触れるのは正直気が進みませんが、これ以上、”北海道を壊す者たち”が出ないことを願い、道内で起きた食に関する事件を、覚書としてまとめました。

ミートホープ事件


本社家屋。正面の屋上に設置された名物、強化プラスチック製・牛のモニュメント(4m×2.5m、300kg)は、設置から約10年後の2008年5月22日に撤去された。

 苫小牧市入船町に本社を置く食肉加工卸会社。上川管内音威子府村出身の田中稔氏が1976年6月に創業し、肉の希望と社名につけた会社のワンマン社長を務めてきた。道内ではこの分野において業界1位の売り上げを誇っていたが、その悪質ぶりが道民に暴露されたのは、創業31年目の2007年6月のことだった。

 その後の捜査で、出てくる出てくる不正の数々。ショップだけでなく学校給食でも出回っていたといい、道民をはじめ、全国の消費者はこんなことがあっていいのか、信じられないとただただ驚くしかない。全国消費者への悪質すぎる詐欺行為に等しい。にもかかわらず、厳重注意だけに終わった。

▼事件の流れ
2007年6月20日 北海道加ト吉が製造し生協で販売されているCOOP牛肉コロッケの牛ミンチ肉になぜか豚肉が入っていることが報道される、この製造元がミートホープだった、ミートホープ工場生産ライン休止
2007年6月24日 道警が不正競争防止法違反容疑(詐欺罪適用も検討)で北海道加ト吉やミートホープ本社や同社社長自宅などを強制捜査開始、北海道加ト吉工場長解任、ミートホープ社長当面休業を宣言
2007年6月25日 農水省調査報告発表
2007年6月26日 29日付で全社員解雇を通告
2007年6月27日 一部労働者が労働組合「苫小牧ローカルユニオンミートホープ分会」結成
2007年6月28日 苫小牧市学校給食からミートホープ除外を決定
2007年7月2日 ローソンが北海道加ト吉から納入していたビーフコロッケにも豚肉が混入されていたことが判明
2007年7月6日 イオンでもサンマルコ食品経由でミートホープ牛肉コロッケを販売していたことが判明
2007年7月9日 苫小牧市が建築基準法違反容疑でミートホープ本社を調査
2007年7月11日 内部告発処理問題で道庁と農水省の協議は真相不明で終了
2007年7月17日 ミートホープ、6億7千万円の負債により札幌地裁苫小牧支部に自己破産申請
2007年7月13日 ミスドのスープにミートホープの肉を使用していたことが判明
2007年8月1日 内部告発の件で農水省北海道農政事務所5人を処分
2007年8月2日 札幌地裁苫小牧支部がミートホープ社長田中氏の自己破産手続き開始
2007年9月7日 ミートホープに行政指導として厳重注意を言い渡す
2007年10月24日 苫小牧署などはミートホープ元幹部4人(元社長・息子の元専務・元総工場長・元汐見工場ひき肉製造責任者)を不正競争防止法違反容疑で逮捕
2007年11月7日 逮捕済みの4人を詐欺容疑で追送検
2007年11月14日 不正競争防止法違反と詐欺罪(主要取引先3社への詐欺)で元社長を札幌地検に起訴
2007年12月18日 取引先14社への詐欺罪を起訴猶予とし全捜査終了
2008年1月28日 札幌地裁で初公判
2008年3月19日 札幌地裁で実刑判決、懲役4年
2008年4月3日 控訴せず、実刑確定
2008年4月28日 汐見工場が苫小牧市内の水産加工会社に売却
2008年5月22日 本社家屋売却に伴い名物牛の置物撤去
2008年10月7日 本社備品撤去
2008年10月13日 本社家屋を500万円かけて解体、更地に

▼悪質な不正行為や問題の数々
・最も古いのは1983年から。農水省調査報告は不正13項目。
・北海道加ト吉工場長が2年間にわたり勝手にミートホープに冷凍コロッケ廃棄処分品を横流し、かつ40万円を不正に受け取っていた(工場長は解任)、それをミートホープは賞味期限を改ざんして再販売(農水省調査報告)
・北海道加ト吉製造COOP牛肉コロッケに豚肉を混入させて偽って販売(事件発覚の発端)
・牛ひき肉なのに、豚肉、鶏肉、カモ肉を混入、国外産なのに国内産と偽装表記(農水省調査報告)
・ミンチに大量に化学調味料を入れていた疑い
・国産牛スライスにオーストラリア産などを混入し偽装表記(農水省調査報告)
・賞味期限切れのパン切れを混入し増量
・家畜の血液を入れて着色
・牛脂に豚脂を混入(農水省調査報告)
・牛粗びきに豚肉やラム肉を混入(農水省調査報告)
・他社の包装に自社製鶏肉を入れて不正販売(農水省調査報告)
・豚ひき肉として販売したのに焼き豚を混入(農水省調査報告)
・肩ロース(豚ひき肉)に豚内臓を混入(農水省調査報告)
・鹿肉ジャーキーに羊肉を混入(農水省調査報告)
・豚肉ミンチには着色のため牛の心臓を混入(農水省調査報告)
・ブラジル産の鶏肉を国産と偽装
・過熱加工品から食中毒の原因となる細菌が入っていても販売していた(納入先で発見して返品されても別のところへ販売)
・雨水で冷凍品を解凍していた(食品衛生法違反?)
・もったいないので床に落ちた肉もそのまま使用
・賞味期限を改ざん(農水省調査報告)
・以上各問題に関連し、記録データを改ざん(牛肉証明書偽造など)
・以上不正を行いながら、納入先からクレームがきたら、手違いだったとして保険会社に保険金を不正申請、賠償金を受けた
・田中社長が半額セールで買う消費者も悪いと問題発言をした
・ミートホープ元幹部は2006年に不正行為に関して内部告発していたのに、北海道庁と農林水産省北海道農政事務所は放置、発覚後、責任のなすりつけあいというみっともない行動を見せた(結局真相不明で決着)
・道庁と農水省は過去に何度も立ち入り検査をしていたのに不正を暴けなかった
・挽き肉攪拌機を考案し、2006年に文部科学大臣表彰創意工夫功労者賞受賞。しかしこれが不正の舞台となった

石屋製菓事件

 道内トップ製菓である石屋製菓(札幌市西区宮の沢・1959年9月設立)も不祥事が発覚した。2007年8月14日。先日ミートホープの不正が明らかになって食への信頼が薄らいでいたところへ、また道内トップ企業の不祥事。しかもファンが全国に多い有名土産品を含む商品で不正があった。ファンからは惜しむ声が多い。

 まずは北海道土産品の代名詞であり、北海道銘菓の代名詞でもある「白い恋人」。いわゆるラング・ド・シャであり、1976年発売以来道内のみで販売するスタイルで、道内だけでなく全国でも北海道土産品として有名だ。そんな石屋製菓主力商品で、賞味期限改ざんという不正が行われた。ミートホープ創立同年である1976年誕生のお菓子であり、昨年30周年を迎えたところであった。

 その他の商品でも大腸菌群が検出され、全商品回収し廃棄処分とする。その後の調査でも2番手主力商品の「美冬」も賞味期限改ざんが発覚するという事態に急展開。ちなみに、店舗で販売されていないためにインターネットオークションで5倍以上の価格で取引されたものもある。コンサドーレ札幌のメインスポンサーでもある大手製菓が危機に立たされた。

▼事件の流れ
2007年5月5日 「白い恋人」の賞味期限改ざん作業
2007年6月30日 「ミルキーロッキー」で大腸菌確認、アイスクリーム類の出荷停止
2007年8月10日 札幌市保健所が立ち入り検査し事実を確認
2007年8月14日 夜に社長が会見、不正が発覚
2007年8月15日 札幌市保健所が本社工場立ち入り検査(食品衛生法違反の可能性も)、道が日本農林規格(JAS)法違反容疑で立ち入り検査、百貨店・土産店で石屋製菓全商品の撤去始まる、百貨店の北海道物産展で石屋製菓の商品を展示しないと発表、道知事が不快感表明
2007年8月16日 調査の結果発表、19日から4日間自主的生産休止(白い恋人パーク含む)としていたが、無期限休業に変更
2007年8月17日 道と札幌市保健所が2度目の立ち入り検査し全商品点検、北洋銀行と三井住友銀行が合計10億円を臨時融資すると発表、石水社長の石屋製菓社長やコンサドーレ札幌役員や札幌商工会議所でも辞任を発表、後任社長に北洋銀行島田俊平常務を派遣
2007年8月21日 ミルフィーユ菓子「美冬」も賞味期限延長が発覚
2007年8月22日 「コーティングチョコレート」「オレンジコンフィ」「鳴子パイ」「マイスタークッキー」の賞味期限延長・改ざんが発覚
2007年8月23日 道がJAS法に基づき行政処分、取締役会で役員刷新(北洋銀行からと社内社員から取締役へ、石水氏長男は若いため役員留任)
2007年8月24日 札幌市保健所が食品衛生法違反でアイスクリーム類の廃棄命令、市食品衛生法施行条例違反で賞味期限改ざんについて指導
2007年9月16日 森永製菓から品質管理責任者を招聘
2007年9月25日 改善計画等を行政へ提出
2007年9月26日 約1ヶ月、道と札幌市保健所が立ち入り検査
2007年11月12日 保健所の立ち入り検査で問題なしと発表
2007年11月13日 安全宣言
2007年11月15日 生産再開
2007年11月22日 販売再開、道内400店舗で販売再開するも売切続出
2008年1月31日 美冬などを販売再開

▼不正行為の数々
※大腸菌類検出商品と賞味期限改ざん商品の2種類に大別できる
・アイス3品目(雪だるま君アイスクリーム、カップアイスクリーム、ミルキーロッキー)で大腸菌群検出(7月廃棄分から8割以上検出)
・アイスクリーム類で68度30分以上の加熱殺菌条件を守っていなかった(食品衛生法違反)
・アイスクリーム類で、札幌市条例の自主検査を2005年~2006年に行っていなかった、かつ、内部告発後も報告せず秘匿、廃棄処分していた
・バウムクーヘンの一部で黄色ブドウ球菌を検出
・「白い恋人」の賞味期限を意図的に改ざん(=JAS法違反、30周年終了間近で限定商品在庫が多かったため、総合管理課長の提案で統括部長が1ヶ月賞味期限先延ばしを了承し指示、5月5~6日に改ざんの包装に包みなおした)
・その後「白い恋人」は11年前の1996年から意図的に1~2ヶ月賞味期限を改ざんしてきたことが判明(社長も周知・原則4ヶ月の賞味期限と設定)
・「コーティングチョコレート」の賞味期限を意図的に約2ヶ月延長(標準3ヶ月)、バレンタイン用返品を包装しなおし(JAS法抵触)
・「オレンジコンフィ」の賞味期限を意図的に数日延長(標準1ヶ月)、バレンタイン用返品を包装しなおし(JAS法抵触)
・「鳴子パイ」の賞味期限を意図的に約1ヶ月延長(標準45日)(JAS法抵触)
・ミルフィーユ菓子「美冬(みふゆ)」の賞味期限を意図的に約10日延長(標準45日)、ただし返品包装しなおしではないのでJAS法違反ではない
・「マイスタークッキー」の賞味期限を意図的に約1ヶ月延長、ただし返品包装しなおしではないのでJAS法違反ではない
・石水勲社長に報告されていなかったことから社内体質も問題であった

雪印集団食中毒事件・雪印牛肉偽装事件

 乳製品業界最大手の雪印乳業が失態。2000年に雪印乳業大阪工場の問題で、近畿地方で国内史上最大の食中毒事件を引き起こした。これには北海道大樹工場で製造された脱脂粉乳が原因だった。2002年には札幌市に本社を置く雪印食品が牛肉偽装事件を引き起こし、2つの大事件を連発させてしまった雪印グループは大打撃をこうむった。これにより、雪印食品は解散、雪印乳業は規模を縮小し経営再建を行った。

▼事件の流れ
2000年6月27日 症状の届出第1号(以降合計約13000名が被害を受けた・低脂肪乳・毎日骨太・カルパワー・特濃・のむヨーグルトなどで、うち低脂肪乳が最大問題商品だった)
2000年6月29日 雪印乳業の雪印集団食中毒事件発表
2000年6月30日 自主回収命令
2000年7月1日 関係自治体の立ち入り検査
2000年7月2日 低脂肪乳から黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA型検出、食品衛生法違反で雪印乳業大阪工場営業禁止命令発令、大阪府警が業務上過失傷害の疑いで捜査開始
2000年8月19日 大阪工場へ脱脂粉乳を提供していた雪印乳業北海道大樹工場で調査
2000年8月23日 基準違反の脱脂粉乳使用、停電発生により黄色ブドウ球菌が増殖したこと、エンテロトキシンA型検出を公表、道が食品衛生法違反で雪印乳業大樹工場営業禁止命令
2000年10月13日 大樹工場営業再開
2001年10月 雪印乳業経営再建:冷凍食品部門はアクリフーズ設立で継続
2002年1月23日 雪印食品の取引先・西宮冷蔵の内部告発で雪印牛肉偽装事件発覚
2002年1月28日 BSE(狂牛病)対策の国の国産牛肉買い取り事業を不正に活用し、雪印食品が国外(オーストラリア)産牛肉を国内産牛肉と偽装、国産牛肉産地偽装
2002年1月29日 雪印食品社長辞任
2002年2月1日 近畿農政局が詐欺容疑で雪印食品を告発
2002年2月2日 雪印食品本社などを強制捜査
2002年2月22日 雪印食品解散を発表
2002年3月7日 兵庫県雪印食品関西ミートセンターの牛肉偽装関係者19人を解雇
2002年4月30日 雪印食品解散
2002年5月10日 雪印食品本部長など幹部5人を詐欺容疑で逮捕
2002年10月1日 雪印乳業経営再建:雪印乳業アイスクリーム部門をロッテの子会社「ロッテスノー」を設立して継続
2003年1月1日 雪印乳業経営再建:雪印乳業と全国農協直販とジャパンミルクネットの3社が東京都に、牛乳と乳製品の製造のための「日本ミルクコミュニティ(メグミルク)」を設立、チーズやバター・マーガリンは雪印乳業で継続
2005年8月12日 雪印食品の解散清算完了