「いす-1GP」をご存じでしょうか? 最近テレビなどでも取り上げられることも多いキャスターの付いた事務椅子を使って行われるレースになっています。
事務椅子でのレースと聞くと冗談半分のような印象を受け、きっとおもしろいものが見られると思い、8月4日(土)に千歳市ニューサンロード特設会場で開催された、いす-1GP 2018北海道大会を取材してきました。
いす-1GPはしっかりとした安全確保と厳密なルールで行われる
いす-1GPは3人1組で最大2脚の椅子を使って、2時間の耐久レース方式で行われます。また、レースの安全を確保するために、ヘルメットとひじ当て、ひざ当て、手袋が人数分用意されているか、椅子は大会規定に沿った無改造のものであるかが厳密に検査されます。お祭りムードもあるのですが、アルコールチェックもしっかり行われ、参加者は飲酒禁止です。
▼レースの参加する椅子は1台、1台チェックされ、検定シールが貼られる
選手のエントリーと椅子車検などが終わると、大会ルールなどの確認が行われます。
▼2018年の参加者は34組、約100人と北海道大会最多
▼大会説明を行う、いす-1GP北海道大会実行委員長の生杉泰志さん
本戦のグリッド順を決める0-30mのスピードレースで予選
いす-1GPの本戦は2時間の耐久レースで行われますが、本戦のグリッド順(スタート時の並び順)を決める予選は、30mコースのタイムで決定します。各チームのスピード自慢がそれぞれの2名ずつ参加して、速い方のタイム順にグリッドが決定されます。
予選が終わると、お昼休みを挟んで本戦となります。
▼女性の参加者が多かったのも今年の特徴だそう
2018年のいす-1GP北海道大会は参加費(保険料・飲食チケット含む)で4,500円でした。今回はニューサンロード夏祭りと同時開催ということもあり、周辺で使用可能な飲食チケットが1人当たり1,100円分、なんと3,300円分も入っていたそうです。来年以降は未確定ですが、太っ腹な大会になっています。
▼飲食チケットなどを使って近くの出店や飲食店でお昼をとる
アスリート魂に火が付く本戦の開始!
▼和気あいあいとしたムードから緊張感の高まる本戦のスタート
参加者同士の交流もあちこちで行われ、和やかな空気で進むいす-1GP北海道大会でしたが、本戦のスタートが近づくにつれて緊張感の高まりを感じます。勝手に、お祭り要素の強い比較的ゆるめの大会だと勘違いしていました。ところが、いす-1GPは超ハードなスポーツだったのです。
▼世界トップレベルの実力を誇るチームコクヨ東京。群を抜いて速い
▼最後まで優勝争いを繰り広げた木津川運輸(京都)のラストスパート
いす-1GPは1チーム3人が2時間の耐久レースを走るのは、すでにお話しました。コースは1周180mです。「なんだ、たいしたことなさそう」と思うのが一般的でしょう。でも、実際に椅子で走ってみると、まったく使ったことのない筋肉を使うのに驚きます。実際に椅子にも乗せもらいましたが、初めての人ならコースを1周もしないうちにバテるほどです。
参加者に聞くと普段から走っているフルマラソンを趣味にするランナーたちでも、辛いというのですから尋常ではありません。
▼優勝争いを繰り広げる一部チーム以外は、笑顔も出る楽しい大会
▼トップチームは交代中も筋肉をクールダウンさせるなどピット裏も本気
【動画】動画で見るいす-1GP
優勝争いに参加するなら時速10km以上のスピードが必要
いす-1GPのつらさは、椅子に座って腰をひねり、前方を確認しながら、不自然な体勢で普段のランニングとは違う後ろ向きに地面を蹴っていくことにあるそうです。
いつも走っている方でも、走るときに使う大きな筋肉を効率的に使うことが難しく、細かな弱い筋肉に負荷がかかるので、足がつったり、筋肉がけいれんしたりすることもあるといいます。それを防ぐために写真のようにアイシングなどを行うチームも見受けられました。
また、今回の大会で優勝したチームコクヨ東京は、2時間でコースを125周・22.5kmの距離を走っています。これはハーフマラソンで2時間を切るほどのスピードです。かなり速いといわれるランナーが普通に走るスピードで、2時間を椅子で走りきるフィジカルとメンタルを要求されます。
▼北海道勢としては最速のエリア0123。第3位と健闘していた
▼女性混成チームで4位に入賞したかもめ食堂。年々力をつけているそう
体力自慢なら優勝を目指して! 気軽な参加も楽しいイベント
事務椅子で2時間耐久レースという冗談のようなコンセプトですが、実際には安全性にもしっかりと配慮され、多くの方が手軽に参加できるのが、いす-1GPの特長のようです。
ただし、優勝を目指すなら、普段からマラソンやトライアスロン、トレイルランなどの運動を行っている体力自慢でないと厳しいでしょう。ぜひ、自慢の体力で優勝争いに参加していただきたいです。非常にハードなレースですが、2時間の耐久レースをほとんどのチームが完走します。
興味を持ったら、まずは参加というのも楽しいと思います。また、上位チームが下位チームを追い抜く際も、抜くほうが気を使っているので印象的でした。いす-1GPの独自の文化なのでしょう。
本気でも、ネタとしても、観客でも、参加しても楽しめるいす-1GP、ぜひ参加してみてはどうでしょうか。2019年の北海道大会も開催される予定ですし、実は北海道以外の全国でも開催されています。まずはいす-1GPのWEBをチェックしてみてください。