北海道の有名大学といえば、やはり北海道大学。
その北海道大学にある自治寮「恵迪寮(けいてきりょう)」をご存知でしょうか? 100年以上の歴史を持ち、今も男女学年問わず、400人以上の学生が生活している学生寮です。
いったい中はどんな空間が広がっているのか……。今回は恵迪寮に広がる世界に迫ります。
恵迪寮を訪ねました!
恵迪寮は北海道大学内の北西に位置しています。平成ポプラ並木や運動場、サークル会館等を横切ると見える建物です。入り口付近には無造作に置かれた自転車がズラリ。建物は植物で覆われており、なんとも異様な雰囲気を放っておりました。
恵迪寮は130年近い歴史を持っていますが、現在の建物は1983年に建てられた3代目の寮。それでいてこの存在感です。
玄関を含め、恵迪寮全域には大量のポスターが。こちらには恵迪寮祭や寮長選挙に向けた宣伝、その他寮生に関わるイベントに関する情報が書かれています。数年前のものでも剥がさず、そのままにしているのがなんとも学生らしいです。
靴はしっかりとロッカーに収められることはなく、かなり散乱しています。あとから聞くと「これでもかなり整っている方」なのだとか。自分の靴がどこにあるのか、全く分からなくなってしまいそうです。
恵迪寮内で感じる濃い学生生活
今回は恵迪寮内に特別に入らせていただきました。
下の写真は共用部の様子。恵迪寮は正面玄関から入ったところにある、共用部を中心とした6つの棟により構成されています。現在、寮がはじまってから毎年作っているという「恵迪寮歌」の制作中ということで、候補曲の歌詞が掲示されていました。これから寮生による投票が行われ、今年の寮歌を決めるそう。作詞から作曲まで、全て自分たちでやるといいますから驚きです。
寮内には売店も設置されています。こちらで日用品や簡単な食べ物は購入可能。いわば、寮から出なくてもしばらくの間、生活することができるわけです。
各棟に入っていくと、寮生たちの生活が色濃く感じられました。部屋に収まり切らない荷物が散乱しており、たくさんの掲示物が壁に張られています。お部屋は勉強部屋や寝部屋というように使い分かれているようですが、どの部屋も1人暮らしの学生らしい散らかりっぷりでした。
この日はまだ夏休み期間中ということで、授業の無い学生たちは共同部屋でマンガを読んだり、ゴロゴロと時を過ごしていました。なんでも前日に「スペシャル」と呼ばれる炊き出しがあり、あんかけ焼きそばを夜中までお腹いっぱい食べたのだとか。そのせいか、寮生たちはとてもヘトヘトになっているようです。
ちなみに漫画は寮内のいたるところに置かれていて、もはやどれが誰のものだかわからない状態なのだとか。
執行委員会の遠藤さんに寮暮らしについて伺いました
今回は寮生を代表して、執行委員会の遠藤嵩大(たかひろ)さんにお話を伺いました。
福島県出身の遠藤さんは、北海道大学に合格直後、半ば強引に両親から恵迪寮で生活をすることを勧められたそう。大学近くのマンション等で1人暮らしをするよりも圧倒的に安い、月々1万円程度の寮費で住めることが理由です。
現在住んでいるほとんどの学生もまた、経済的な理由から、恵迪寮を選ぶのだそうです。はじめは不安だったという寮生活ですが、先輩たちと同室で生活する中で次第に寮の雰囲気に馴染んでいきました。
しかし、それと同時に寮を離れていく同級生も少なくないとのこと。恵迪寮には大学生活から独立した、オリジナルの企画が用意されており、それらが進められていく中でどうしても寮生活を楽しめない方は退寮してしまうのだそうです。
遠藤さんは1年生の冬から先輩に誘われて、執行委員会に参加。自治寮である寮運営の先陣を担っていくようになりました。3年生となった現在では、責任感が高まってきており、次期寮長を決める選挙への立候補を検討しているそうです。
執行委員会の一員としては、今後の運営を担ってくれる後輩たちがなかなか増えてくれないことが悩みの種だと言います。400人以上が生活する寮の運営を学生生活と並行させて担っていくわけですから、簡単には手を上げられないことも想像できます。
寮生活の魅力はズバり「1人暮らしではできないことができる」ことだそう。寮内では毎日のように麻雀や卓球の対戦が行われていたり、眠れない学生たちは遅くまで語り合います。寮祭等にむけて、企画を作ったり演劇を行ったりするのも共に生活している仲間がいるからできること。まさに寮生活の醍醐味なのです。限りなくパーソナルスペースの狭い生活ですが、慣れてしまえば、常に側に誰かがいることに安心感を覚えていくのでしょう。
2016年10月29、30日に行われる恵迪寮祭では、一般の方でも寮内に入ることができます。その際、その日のために寮生が仕込んできた演劇等を楽しむこともできます。
北海道大学の中でもとびきり個性的な恵迪寮生たち。彼らの濃い学生生活とあり余った若さを体感したい人は、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか?