函館・冨士冷菓が製造・販売するカップアイス「獺祭(だっさい) 酒粕あいす」が、食のプロたちが選ぶ「ご当地アイスクリームグランプリ」の最高金賞を獲得しました。
老舗アイスクリーム店の「酒粕あいす」が日本一に!?
店舗外観と、ご当地アイスクリーム最高金賞の賞状。獺祭酒粕あいすは購買欲審査賞も受賞した
今年3月に幕張メッセで開催されたアジア最大級の食品・飲料専門展示会「FOODEX JAPAN 2016」で開催されたこのグランプリには、全国各地からご当地アイスクリーム61品がエントリー。来場者が試食して点けた点数を集計し、「獺祭 酒粕あいす」を含む上位8品に最高金賞が贈られました。採点した来場者は、食品バイヤーや買い付け担当者など食のプロばかりということで、審査のレベルの高さもおのずとうかがい知れます。
「獺祭酒粕あいす」は、冨士冷菓伝統のアイスクリームのベースに、日本酒党あこがれの純米大吟醸「獺祭」のしぼりたて酒粕をミックスした商品。吟醸酒由来の華やかな香りと滑らかな口当たり、そして優しい甘さが特徴です。
約70年続く店を守る、中村さんご夫妻
商品誕生のきっかけは、店長を務める中村さんご夫婦がたまたまテレビで見た「酒粕は体に良い」との情報でした。さっそくアイスクリームに取り入れてみようと、インターネットで「獺祭」の酒粕を取り寄せ、試作。思いのほかおいしいものが作れたと思い、特に何の欲もなく「こんなアイスクリームが作れました」と酒造会社に送ったところ、「しぼりたて酒粕を送るから、ぜひそれで作ってほしい」と思いもかけない依頼が。
「獺祭」のしぼりたて酒粕は、遠心分離機で搾ったペースト状でクリーミーな香り高い酒粕。それ以来、山口県にある蔵元から酒粕の供給を受け、遠く離れた北海道・函館の地で、「獺祭酒粕あいす」が作られ続けています。冨士冷菓と蔵元だけで販売しており、蔵元でも大変な人気商品となっているそうです。
少量生産ならでは、おいしさへの独自のこだわり
冨士冷菓は1947(昭和22)年、アイスキャンディーを作る店として開業。2本立て・3本立て映画の合間に売り子さんが客席で売り歩く商品として重宝され、店の周囲に数多く立ち並んでいた映画館への卸しを中心に営業していたといいます。
映画産業の衰退に伴い、業務内容もホテルや飲食店へのアイスクリームの卸しにシフト。卵を使用せず、新鮮な牛乳と生クリームをたっぷりと使用する冨士冷菓のアイスクリームの製法はこの時に確立されました。空気の含有量を抑えた「ハードタイプ」のアイスクリームなので、カップが小さく見えてもかなり食べごたえあり。冷凍保存できるからと言って大量生産せず、在庫がなくなり次第その都度作るというこだわりも当時のまま。1回あたり30個ほどしか作れないため、1日300個ほどが限界なのだとか。
▼1回に作る量は30個ほど
▼できたてのアイスクリームはふんわりやわらか。すぐにカップ詰めし、冷凍にかける
▼アイスクリーム・シャーベット合わせて約40種類を取りそろえる。どれもおいしそうで迷ってしまう
長年業務用の卸し専門でやってきましたが、30年前に店舗の改装とともに小売りを開始。いまはアイスクリームとシャーベット合わせて約40種類をとりそろえています。業務用のフレーバーなどはいっさい使わず、天然の果汁や果肉などを使用。人気の「ほうじ茶」「紅茶」などは、アイスクリームの原料となる液に茶葉を入れ、いったん煮出してからアイスクリームにするので、まさに茶葉そのままの味。中村さんご夫妻は「少量生産だからこそできることです」と話します。
店頭に小さなイス席が2つありますが、基本は持ち帰り専門店。持ち帰ることを想定してかなりの低温で保存しているため、買い求めた当初は少し硬いかもしれません。「スプーンが通るくらいの固さになってから食べるとおいしいですよ」と教えてくれました。
▼冨士冷菓
所在地:函館市大森町18-15
電話:0138-22-3819
営業時間:10:00~19:00
定休日:木
駐車場:なし