間もなく見納め?三笠市民会館にある唯一無二の炭鉱遺産「緞帳」

【三笠市】炭鉱最盛期の産業遺産の一つでもある、三笠市民会館の緞帳(どんちょう)が、間もなく見られなくなると話題になっている。2015年中にも、新しくデザインしたものと交換する方針が市議会で示されたのだ。なぜそんなに大ごとになっているのだろうか。それは端的に言えば、その緞帳があまりにも貴重すぎるからである。

炭鉱会社2社が共同で寄贈したという点で貴重な緞帳

緞帳とはどういうものかというと、舞台ステージにある幕の一つ。使用しない時はステージ上に巻き上げたりそのまま上に吊り上げたりして隠れているが、催事の時などに緞帳を下ろして使う。

三笠市民会館・大ホールの緞帳のサイズは、横約16m、縦約7m。背後の鉄骨で幕全体を広げており、幕だけで重量約300㎏にもなる。緞帳の図柄には、今も残る住友奔別炭鉱立坑櫓、北炭幌内炭鉱幌内立坑櫓、1957年完成の桂沢ダムと山々、炭鉱で働く男たち、炭鉱の町の人たちの生活の営みなど、炭鉱最盛期の様子がパッチワーク式で描かれている。


この緞帳を寄贈したのは、住友石炭礦業株式会社奔別礦業所(住友奔別炭鉱=1971年閉山)と北海道炭礦汽船株式会社幌内礦業所(北炭幌内炭鉱=1989年閉山)の2社で、緞帳下部の両端にそれぞれの社名が縫われている。炭鉱会社2社が連名で寄贈するのは全国的に大変珍しい。


制作費用は当時で約250万円。デザインは両社と関係のない三笠美術協会が引き受け、道展美術部の人たちが各部分ごとにデザイン制作した大作だ。今や当時の人たちは亡くなっているため、制作秘話のような詳しいことはわからないという。しかし、2つの炭鉱とも閉山した今、炭鉱で繁栄し躍動した三笠の歴史を垣間見ることのできる貴重な作品だ。

緞帳は、三笠市民会館が1969年1月に開館するのにあわせて制作されており、既に45年、実に半世紀近くが経過している。それ以来ずっと、三笠市民に親しまれてきた。三笠市民会館を管理する男性も、小学生時代に市民会館が建設され、小さい頃からずっと見て育った思い入れのある緞帳なのだという。

その緞帳は45年たった今も現役だ。緞帳はカビが大敵で、長持ちさせるには高湿度にさせないことが大切だという。その点、同会館の緞帳はカビや穴あきは見られない。小さなほつれや汚れ、また左下の社名の部分がよれてきた感は否めないが、経過年数の割には全体的に状態が良い。

20~30年程度で取り替えることも多い緞帳だが、三笠のそれが半世紀近くもっているのは、巻き上げ式ではなく吊り上げ式で高所に格納しているのも一つの理由ではないかという。

▼三笠市民会館の緞帳が貴重な主な理由
・炭鉱会社2社が連名で共同寄贈した緞帳は全国的に現存せず唯一無二の存在。
・三笠の炭鉱時代を反映した美術作品はあまり例がなく貴重。

間もなく見納めか?緞帳の取り替えは決定、廃棄は未定

この緞帳が改めて注目されだしたのは、2014年12月の定例市議会で指摘された頃から。本年度、耐震化を含む改修工事が行われてきたが、その後突然、緞帳取り替え計画が出てきたという。色あせてきているため、これまで一度も行われてこなかったクリーニングを検討したが、老朽化で現状維持の保証ができないとメーカーが回答。

そのため、新たにデザインをし直した緞帳を3000万円で制作し、2015年6月頃までに取り替える予定で進められており、現在の緞帳を廃棄するかどうかについてはまだ結論を見ていない。現物保存するにしても、広げて保管しておかなければならない(畳むと劣化が加速する)ため、保存場所の確保も難しく、廃棄が濃厚。廃棄にあたっては、10分の1サイズのレプリカを制作して保存する案も出ている。

本当に廃棄されてしまうのか、今後の行方が気になる三笠市民会館の緞帳。2015年2月上旬までに改修工事がひと段落し、水曜日を除く毎日15:00まで見学が可能になっている(事前連絡必須)。三笠市出身者や炭鉱遺産に興味のある方は見に行ってみては。