江別市郊外の田園地帯に「ノハナショウブ群生地」がある。これまで知る人ぞ知る存在だった初夏の花スポットだが、地元ノハナショウブ保存会の保護活動の成果もあって年々見応え感が増し、昨年2013年10月には市の第17回都市景観賞を受賞、その存在が徐々に知られるようになってきた。
石狩平野では唯一の大規模自生地
ノハナショウブ群生地は、江別市東野幌の防風林横に広がる。もともと広大な湿地帯だった石狩平野は泥炭地が多く、ノハナショウブが自生していた場所も多かったという。しかし、開拓期に泥炭地の耕作地化、埋め立て、湿地帯の乾燥化が原因でその自生地は減少してきた。同保存会によれば、現在保護なしに自生しているのは越後沼周辺と限られてしまっており、東野幌の群生地ほど大規模にみられる場所は貴重だという。
現在は同保存会が群生地の保護維持管理、株数の増加などの活動を行って、地域の歴史を今に伝えている。その取り組みが評価され、2013年10月16日に江別市第17回都市景観賞(特別部門)を受賞している。
ノハナショウブ群生地の見頃は7月上旬
ノハナショウブ群生地は農業地帯の真ん中に位置する。案内看板に従って進むと、砂利道の脇に駐車場とプレハブ、紫の花々が広がる群生地がある。毎年6月20日以降に咲き始め、6月末に3割程度、7月5日前後にはほぼ満開となりピークを迎える。中旬ごろには見頃を終え、すべて刈り取りを行う。
細長い群生地は10分ほどで一周できるようにルートが設けられている。両端には脚立が設置され、少し高い位置から一望することも可能だ。プレハブには1977年以降の上空写真や一年間の活動を示す写真が展示されているほか、同保存会のメンバーが数名常駐し、ノハナショウブについて話を聞かせてくれる。
一度刈り取り株数を増やす
同保存会によれば、群生地のノハナショウブの株数はわからないとの回答。しかし万単位であるのでは、と話す。隣接する農地で長年農業を営み、現在群生地となった場所を見守り続けてきた男性によれば、昔からこの場所に多くのノハナショウブが咲いていたわけではなく、かつてはポツリポツリと咲いていた程度だった。群生地のノハナショウブは基本的には自然のまま。なぜこれほどまでに増えたのだろうか。
同保存会が活動を開始したのは2008年。それ以来、4月にはノハナショウブの種を集めて肥料をまき、6月上旬には生育の障害になる雑草を取り除き、移植をして混雑をならし、見頃終了とともに刈り取る、という地道な活動をしてきた。こうした刈り取りまでの過程によって株数を増やすことに成功した。
最近では、野幌小学校や野幌中学校にもノハナショウブが植えられた。花が咲くようになるまで3年を要するとあって、気の長い世話が必要という。また、群生地の近く約500m南の野幌農村公園には、移植されたノハナショウブが数百本植えられている。これらも同保存会が関わっている。
かつて石狩平野で広く見られた自生のノハナショウブは、保存会のメンバーの保護活動によって群生地として見ることができる。見頃は短い期間だが、気になった方は訪れてみては。(※写真は5割程度の開花率)
▼ノハナショウブ群生地
江別市東野幌935-5 [地図]
7月初旬が見ごろ
問い合わせ先:ノハナショウブ保存会 011-387-0415
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