「いかめし」といえば、言わずと知れた北海道渡島地方の郷土料理。イカの胴体にもち米を詰めて、醤油ベースの甘辛い煮汁で炊き上げたシンプルな味わいが魅力です。ところが、そんな常識を覆す「白いいかめし」があるのをご存じでしょうか。製造元の「マルモ食品」(森町)に話を聞きました。
いかめし製造メーカーを直撃
▼マルモ食品が製造する製品の一部
マルモ食品は、1日約4,000パックのいかめしを製造する食品メーカー。先代社長の時代はホタテの一次加工などを行っていましたが、昭和60年代からいかめし製造に進出。北海道産を中心に国産のスルメイカと道産米(もち米・うるち米)を使用し、イカの柔らかさを保つ独自の製法で仕上げています。
▼独自の工夫でふっくら炊き上げたいかめし
「柔らかく仕上げるように工夫していますが、イカならではの歯ごたえも大切。お年寄りも食べやすく、若い人にも満足してもらえるような固さになるように気を付けています」と社長の吉田博さん。実際にマルモ食品のいかめしを輪切りにしてみると、イカの身が縮んでおらずふっくらとしているのがわかります。
▼一般的な市販のいかめし(右)に比べ、マルモ食品のいかめし(左)は身が厚くて柔らかい
白いいかめし誕生の経緯
「白いいかめし」(商品名:白いかめし)は、「なにか今までとは違ういかめしを作りたい」と考えた吉田さんが2010年頃に考案。道南には函館塩ラーメンに代表される“塩文化”があることから、醤油ではなく塩で炊き上げるいかめしを思い付いたといいます。
▼「白いいかめし」と普通のいかめしを比べると、色の違いは歴然
とはいえ、いかめしを塩で炊き上げるのは容易ではありませんでした。醤油ベースのいかめしでは気にならないイカの生臭さを、塩味でもいかに気にならなくするかも大きな課題でした。さらに、イカを高温で炊き上げると色が濃くなってしまうという問題もありました。色が付いてしまっては、「白いかめし」とは呼べません。
▼「白いいかめし」は2種類
そこで同社は研究を重ね、苦心の末に「白いかめし」の製造法を確立。地域の特色を前面に出し、噴火湾産のホタテを使った「ほたて貝柱入り」と、函館市南茅部地区特産のガゴメ昆布を使った「がごめ昆布入り」の2種類を発売しました。国産のスルメイカと道産米を使用するこだわりは、醤油味のいかめしと同じ。
▼刻み昆布が入った「白いいかめし がごめ昆布入り」
「ほたて貝柱入り」は、旨みがぎゅっと詰まった黄金色の貝柱がゴロゴロと入っており、食べごたえ抜群。一方、「がごめ昆布入り」は昆布の旨みがご飯に染みわたっていて、深い味わいが楽しめます。塩味だけあってどちらもあっさりした味わいで食べやすく、醤油味のいかめしに対して「味が濃い」「甘い」といったネガティブな印象を持っている人にも好評なのだとか。
基本的に道南地域(函館周辺)以外にはあまり出荷されていないため、国道5号沿いの道の駅「YOU・遊・もり」で購入するのがお勧めとのこと。函館方面へ旅行・ドライブの際は、ぜひ「YOU・遊・もり」にもお立ち寄りを。