札幌の地下鉄のホームにいると、どこからともなく「ちゅんちゅん、ちゅんちゅん」という音が聞こえてきます。この音、気になったことはありませんか? 昔から札幌に住んでいる人にとっては、なじみのある「ちゅんちゅん」音。いったい何の音なのか調べてみました。
ちゅんちゅん音ってどんな音?
筆者は札幌への移住者です。移住前、旅行で札幌に訪れたときのことです。地下鉄のホームで電車を待っていたときに聞こえた「ちゅんちゅん」音。本州の地下鉄では聞いたことのない音でした。何の音なんだろう? と思ったものの旅行先での出来事、そのまま忘れてしまっていました。そして札幌に移住。札幌の地下鉄を利用するようになり、忘れていた音のことを思い出したのです。
【動画】札幌市営地下鉄 ちゅんちゅん音の謎
以前から札幌に住んでいる人に聞いてみたところ「札幌の地下鉄には雀がいるんだ」と教えてもらいました。なるほど! 雪が降るから雀がねぐらにしているんだな、と勝手に理解し納得した筆者。それをほかの人に言うと「そんなわけないだろ」と鼻で笑われてしまいました。
情けなくなりましたが、そこで諦める筆者ではありません。疑問があるなら事業者に聞こう、ということで、札幌市交通局を訪ねてみたのでした。
札幌の地下鉄には雀は住んでいませんでした!
電車を動かすためには電気が必要です。電車の屋根の上に付いているパンタグラフという集電装置を使ってプラスの電気を集め、電車に取り入れます。取り入れた電気はどこかに逃がさないといけないのですが、普通の電車の場合は車輪(鉄)からレール(鉄)に逃がす仕組みになっています。ところが、札幌の地下鉄は車輪ではなくタイヤ(ゴム)であるため、電気が流れません。
▼札幌の地下鉄のタイヤ
札幌の地下鉄は、真ん中部分に両側から案内輪(ゴムタイヤ)で挟み、電車を所定の方向に誘導する「案内軌条」があります。実は、この案内軌条からマイナスの電気が流れるしくみになっているのです。
▼両車輪の通る真ん中部分にあるのが案内軌条
案内軌条に電気を流すために、電車には「負集電器」という装置が取り付けられています。その「負集電器」は、常に案内軌条に触れるような仕組みなのですが、走行中に案内軌条の継ぎ目のところで離れることがあります。離れた負集電器が案内軌条に再度触れるときに起きる音、これが実は「ちゅんちゅん」音なのです。
▼負集電器。東西線と東豊線は案内軌条を左右から挟み込む形状になっており、南北線は上から押しつける形状になっている
鉄と鉄をぶつけると「カンカン」というような音がしますが、走っているためぶつかるというよりもこすれるような音になり、さらには地下空間ということもあり、それが反響して「ちゅんちゅん」というような音に聞こえるというわけでした。
【動画】札幌市営地下鉄 ちゅんちゅんと音が鳴る理由
なるほど。納得しました。札幌の地下鉄で雀を飼っているわけではないのですね。「ちゅんちゅん」音の正体は、集めた電気を逃がすための装置によって起きる音だったのでした。納得はしましたが「札幌の地下鉄には雀が住んでいる」という都市伝説のままであった方がロマンチックだったのではないか、と札幌市交通局をあとにしたのでした。