日本の本土最北端の地といえば、北海道稚内市の宗谷岬。なんて、今さら改めて言うまでもない常識です。
しかし、その宗谷岬に、住んでいる人がいるという事実は、あまり知られていないのではないでしょうか。日本の最北端である宗谷岬に住む人、つまり、その人は日本の最北端に住んでいる人と言って間違いはないはず。
これはぜひともお話を伺わねばと、はるばる宗谷岬まで足を運んできました。
宗谷岬と、その沖合に浮かぶ弁天島
まずは宗谷岬のおさらいから。宗谷岬は、一般の人でも行くことのできる日本の本土最北端の地で、北緯45度31分22秒に位置しています。よくテレビの映像などで紹介されるモニュメントは「日本最北端の地の碑」。北極星の一稜をモチーフとし、台座の円形は「平和と協調」を表しています。
▼弁天島。弁財天が祀られていたと言われている
ちなみに、日本が実効支配している域内で最北端にあたるのが、弁天島です。宗谷岬の北西約1.2キロメートル沖合に位置し、肉眼でも確認することができます。周囲の岩礁や暗礁には海鳥が多くみられ、弁天島自体はトドの上陸地となっています。1980年代の調査では60頭近いトドの確認されたということでしたが、残念ながら取材時にその姿を見ることはできませんでした。
住居は宗谷岬の目と鼻の先!
さて、そんな日本最北端の地に住む人がいるという話。実は宗谷岬のすぐそばにお土産屋さんがあります。そのお土産屋さんが店舗兼住宅になっていて、つまり、お店を経営している人が宗谷岬のすぐそばに住んでいるというわけなのです。
▼お店の外観は、まさに宗谷岬のモニュメント!?
お店の名前は「柏屋」。1977年(昭和52年)から続く老舗土産店で、今の建物になったのは1985年(昭和60年)だそう。この場所に親子で住み、5年前からは柏屋の代表としてお店を切り盛りしている柏谷真未さん(38歳)に、日本最北端で住むことについて伺ってみました。
▼代表であり、看板娘でもある真未さん
「日本最北端に住んでいる、なんて言葉だけで聞くと雪が多くて大変そうと思われがちですが、実際はそうでもないんですよ。岬は風が強くて、雪が風で飛んでしまうので意外と積もりません。それに国道沿いなので便利です。観光地だから、携帯電話が普及しはじめた時も、この辺りじゃいちばんに電波が来てましたからね」
真未さんの証言を聞く限り、確かにそれほど不便はなさそうです。では、生まれた時からこの地に住む真未さんから見て、昔と今で何か変化したことはあるのでしょうか。
「私が小さい頃は、この一帯でキャンプをしている人が多かったですね。ただ、今では初日の出目当てに、お正月にキャンプする人がいるくらいですね」(真未さん)
品揃え豊かで、流氷館まである「柏屋」
最後に、お店の紹介をしておきましょう。言うまでもなく、日本最北端のお土産屋さんです。広い店内には、木彫りやキーホルダー、ぬいぐるみお菓子、珍味、Tシャツ、お酒などなど、かなりバラエティに富んだお土産物がずらり並べられています。
▼喜ばれるお土産、ウケるお土産、何でもござれ
中でもいちばん人気の商品を真未さんに聞くと、間髪入れずに「日本最北端到着証明」カードを見せてくれました。なるほど、宗谷岬に来たからには、これはぜひとも購入しておきたいアイテムです。
▼日本最北端到着証明書(100円)
また、柏屋を訪れたらぜひ見ておきたいのが、店舗に隣接している「流氷館」です。いかにも頑丈そうな扉の表には「低血圧、心臓病の方は氷室内に入らずガラス越しにご覧ください」と注意書きがあり、氷室内の温度を示す温度計は「-12.3℃」と表示されています。
▼入る前からドキドキ感があおられる
いざ入ってみると、本物の流氷がゴロゴロと! なかなか見る機会のない流氷をこれほど間近に見られるとあって、ここも立派な観光スポットになっているようです。ちなみにここにある流氷は、流れ着いた時にクレーンで取り込んでいるのだと真未さんが教えてくれました。
▼本物の流氷に触れられるチャンス!
日本最北端に住む人は、日本最北端・宗谷岬でお土産屋さんを経営する、とても気さくな人でした。宗谷岬を訪れたなら、ぜひ柏屋の扉も開けてみてください。たくさんのお土産と、貴重な流氷と、素敵な笑顔に出会えますよ。
所在地:北海道稚内市宗谷岬3-1
電話:0162-76-2212
営業時間:8時~19時
定休日:年中無休