【共和町】ニセコ山系には実は無数の沼が存在する。それも標高が高い位置に存在し、ニセコの山々と美しい自然を水面に映し出す。その中でも、一番美しいといわれているのが、青い水面が特長の神秘的な沼「神仙沼」だ。写真や映像だけでは伝わらない「何か」がそこにはある。
神秘的な神仙沼には神々や仙人が住む?
神仙沼は、その神秘的な雰囲気が、神々や仙人の住むような場所だということから、命名された。発見したのは、昭和初期の1928年10月7日、日本ボーイスカウトの生みの親・下田豊松氏の一行が青少年心身修養訓練道場候補地を求めてこの地を訪れた際に発見された。
発見当時から、独特の青色、かつ静寂に包まれた水面に湿原性アカエゾマツが逆さに映り、岸辺には名も知らぬ水草が茂っていたという。別世界に来てしまったかのような感覚に陥る神秘的景観から、「皆が神、仙人の住みたまう所」にちなみ、下田氏などが命名した。
実際に訪れると、標高が高い位置にある沼で、周辺は開放的で、静かな環境に包まれることがわかる。無風で快晴という好条件がそろえば、水面は感動の青色で、対岸の木々が逆さに映る。透明度もあるためか水中も良く見え、水草が繁茂している様子が手に取るようにわかるのだ。静寂が包み、どこか別世界のように感じるのも不思議ではない。気持ちが洗われるかのようにも感じられる。
標高750m以上に位置する高層湿原、秋には黄金のじゅうたんが
そんな神仙沼は、面積1.19ヘクタール、最大水深2m、平均水深1.3m。標高765mの高地に位置する。周辺は面積4.18ヘクタールの高層湿原「神仙沼湿原」で、大小さまざまな沼が点在している。分解されず蓄積した泥炭が多量に蓄積され、周囲よりも高くなったため、地下水ではなく雨水のみで維持されている。
神仙沼へは、この湿原に張り巡らされた木道を通っていくことになるが、途中に池塘(ちとう)と呼ばれる小さな池沼が見られる。帰りルートに見える大きめの池には小島が浮いており、風によってあちらこちらへ運ばれている(小島に乗ることもできるようだが、戻れなくなる可能性もあるので注意)。
湿原は四季折々で様々な表情を見せてくれる。6月上旬からはチングルマ、ワタスゲ、7月にトキ草やヒオウギアヤメ、ゼンテイカ、8~9月にはウメバチ草、池塘には7月中旬からネムロコウホネが黄色い花を咲かせる。秋は紅葉と共に、湿原全体を黄金色の草紅葉が覆い尽くし、日差しがあれば黄金のじゅうたんが敷かれているかのように見える。湿原全体の紅葉を美しく見るなら、9月から10月にかけての秋がオススメだ。
標高が高いため、山々も近くに感じられる。神仙沼はチセヌプリ(標高1134m)の北側に位置しており、その山並みも間近に見られる。
▼黄金色に輝くじゅうたんが魅力の晩秋の湿原。場所によって様々な表情を見せてくれる
▼晩秋の神仙沼と、神仙沼高層湿原に広がる黄金色の草紅葉
張り巡らされる散策路、もっと楽しみたければほかの沼へ
神仙沼は最も人気の観光スポットだが、周辺には長沼、大沼、シャクナゲ沼、大谷地が点在しており、総延長1388mの遊歩道がそれらを連絡する。駐車場のある神仙沼自然休養林休憩所(レストハウス)からは片道20~30分程度で神仙沼までたどり着くことができるが、そのほかの沼についてはそれ以上に距離があるため、一日がかりで計画することをお勧めしたい。
駐車場から北側には、片道200mで鐘がついた展望台へ行くことができる。岩内平野を遠くに見ることができるので、天気が良い日には是非行っておきたい。
▼展望台もある
▼神仙沼
道道66号線(ニセコパノラマライン)、神仙沼自然休養林休憩所(レストハウス)のある駐車場から遊歩道を徒歩で片道約20~30分。冬季通行止めになると行けない。