さっぽろテレビ塔の色って赤と緑じゃないの?その本当の色の名前とは

札幌のシンボルタワー「テレビ塔」の色といえば、目をつぶっても浮かんでくる赤と緑のコントラスト。澄みきった青空によく映えるフォトジェックとして、観光客にも人気のスポットですね!

ところが、実はこのテレビ塔、厳密にいうと赤と緑じゃないってご存知でしたか? 札幌市民でも知らない人が多い「本当の色の名前」をご紹介します。

全国でも札幌だけにある景観色とは?

イタリアのベネチアやギリシャのサントリーニ島など、まちの色が統一された国々の美しさは目を見張りますが、札幌市も負けちゃいません。誰もが見て美しいと感じる「札幌の景観色70色」から外装の色を選んで使用している建物がたくさんあります。

▼札幌の景観色70色カラーガイド

四季のはっきりした北海道らしく、自然の豊かさや札幌らしさ、そして、見るだけで幸せを感じる色を……と、札幌市立高等専門学校教授だった宮内博実教授(現:静岡文化芸術大学デザイン学部メディア造形学科教授)を中心に、市民の意見を取り入れ、自然の色彩変化を調査・研究した後、計画建築物に使う70の色が選ばれました。

景観のための色があるのは、全国でも札幌市だけ。市内の大型建造物の外装色は「札幌の景観色70色」のガイドラインやカラーチャートを参考にしています。

「北国ならではの色の名前をもっと知ってほしい」サッポロウッドリペインターズの活動

▼2級カラーコーディネーターでもある、和信化学工業北海道事業所の宮川多恵さん

札幌市内の痛んだ木工物にきれいな色を塗って蘇らせたい!という思いを共有し「札幌市公園緑化協会」「札幌景観色普及委員会」などが連携して立ち上げたプロジェクト「サッポロウッドリペインターズ」の事務局を構え、2級カラーコーディネーターでもある、和信化学工業北海道事業所の宮川多恵さんにお話しを伺いました。

「うちは塗装メーカーということもありますが、木のぬくもりを生かした美しい景観づくりに協力しています。大通公園にある516脚のベンチを数年かけて塗り替える活動を2014年から始めています」

▼水性木部保護塗料

▼札幌大通のベンチにも色の名前が!

大通公園にあるベンチは、丁目ごとに色を変えているそう。こちらはテレビ塔のある1丁目にあるベンチですが、何色だと思いますか?

なんと、夏に涼しげ「ミルク金時」というおいしそうな名前が付いています! ミルクと金時豆はどちらも北海道の名産品。夏は公園内の樹木のグリーンにマッチングしやすく、秋になると落ち着いたイメージを演出する色合いです。

「ペンキ塗りには子どもたちも参加して、自分が塗ったベンチだ!と喜んでくれています。ずっと残るものですし、何より記念になりますからね」と、宮川さん。

「馬鈴薯色のベンチ(7丁目)で待っているわ」などと、ちょっとした謎かけにも使えそう! 木材の痛みをペンキで防止し、少しずつ街がキレイになるリペインターズの活動に感謝をしたいですね。

▼北海道らしい色の名前がずらり

さて……かなり引っ張ってしまいましたが、ここで発表!

テレビ塔の色は赤と緑ではなく、鉄骨部分は「ペチカ」、展望台部分は「蝦夷松」という色です。

エゾマツはまだしも、赤い部分がペチカ色(?)だったとは驚きですね。炎に燻され年月が経ったレンガの色ペチカ。しっかりとした重さを感じ、テレビ父さんのキャラクターにも通じる威風堂々とした色でした。

「テレビ塔の塗り替えの時、ほかの色も検討されたのですが、市民の皆さんに長年親しまれた色合いを保ちながら、温かみのあるペチカと北海道の代表的な木であるエゾマツになりました」

本当の色の名前を聞くと、ますますテレビ塔が好きになりそう! 知らない人に(特に札幌市民)教えたくなりますね。

札幌の風物詩や暮らしまで網羅する70の景観色

「札幌の景観色70色」には、ひと色ひと色にカラーストーリーがあり、北海道の自然や風土、四季の移り変わり、そこで実る農作物、北国ならではの暮らしや行事など、宮内教授の言葉「人と物が色でつながる瞬間」を表現した色名がつけられています。

「札幌玉ねぎ」や「ビア茶」などをとっても、「茶色」という一言ではイメージできない繊細な色合いが名前から伝わってきます。また、「開拓使」(ダークグレー色)や「雪まつり」(ライトアップされた氷の色)など、想像力を豊かにする色の名前も。

自然光や人工的な光で生じる見え方の違いや、塗装する素材の特性を生かしながら、建築物の配色を考えられるよう工夫されています。

▼札幌の景観色が一部に施されている札幌市立屯田小学校

筆者が小学校5年生まで通った北区にある屯田小学校が新しく建て替えられましたが、校舎の一部に札幌の景観色が施されています。

空が高く、広々とした風景にすぅーっと馴染むスタイリッシュな建物のアクセントにもなっている色は「銀鱗(ぎんりん)」。この銀鱗は、早春や晩秋の寂しげな季節にも、しっかりとした存在感を醸し出せる色だそう。石狩川はもちろん、創成川や発寒川が近い地域性が関係しているのかもしれませんね。

もっと知りたい! 壮大なビジョンを感じる景観色の名前

▼あの札幌大通西4ビルにも札幌の景観色が!

市内中心部にある札幌大通西4ビルの御影石部分は「吹雪(ブリザード)」。色の名前を聞くと、さらに凛とした佇まいに見えてくるから不思議です。

そのほかにも、日本生命札幌ビルは「新雪」と「霧氷」が使われています。もいわ山ロープウェイのゴンドラは「エゾリス」、厚別7号橋は「雪虫」と、可愛らしさや季節感がたっぷり!

▼色の名前を聞くだけで目の前に雄大な景色が広がる

また「札幌軟石」や「羊が丘」という色もあり、風景写真から色を調合していった経緯を感じます。色の名前を聞いただけで、目の前に雄大な景色が広がり、質感や風合いが伝わってきますね。

▼札幌の景観色、欲しくなる?!

「札幌景観色70色」は市販されていませんが、和信化学工業では個別の注文を受けてくれるそう。

現在、南区石山にある「軟石や」では、札幌軟石を使ったクラフト作品に景観色をペイントしたり、革小物店「ルナペリドット」では、エゾシカの革で作ったアクセサリーなどに景観色を取り入れています。

▼アクセサリーにも景観色が

札幌の景観は色によって整えられ、いつも何気なくみていた地元民には安心感を、訪れる観光客には美しい調和を感じさせてくれます。テレビ塔や大通西4丁目の交差点に立つたびに「ペチカ」や「ブリザード」の光景が浮かんでくるかもしれませんね。

サッポロウッドリペインターズ事務局
所在地:北広島市北の里27-18
和信化学工業株式会社北海道事業所
問い合わせ先:011-372-3010 s.w.repainters@gmail.com