小樽に、巨大な木魚があるお寺があるという話を聞きました。なんでもその木魚は、1本の木から切り抜いて作られたもので、そうした作り方をされた木魚としては日本でいちばん大きいのだとか。一体どんなものなのか、この目でぜひ確かめたいと思い伺ったところ、お目当ての木魚のみならず、珍しい船絵馬まで見ることができました。
日本最大級の巨大木魚
お邪魔したのは小樽市真栄にある龍徳寺です。
龍徳寺は、1857(安政4)年、初代大光海雲大和尚により龍徳町(現在の信香町)で開山しました。その後、1869(明治2)年に海運町(現在は若松町)に移り、1874(明治7)年に現在の真栄に移りました。
▼大光海雲大和尚(資料提供:龍徳寺)
1874年に建てられた本堂は小樽市内でいちばん古い寺院本堂で、1992(平成4)年に1度だけ修繕をしましたが、それも土台部分を直しただけ、建物自体は創設当時のままなのだそうです。
▼本堂の中
さて、気になる巨大木魚ですが、本堂の奥にあるとのこと。本堂の入口で拝観させて欲しいと言えば檀家でなくても中に入ることができます。
▼左奥にある赤い布がかけられているのが巨大木魚
ありました。本堂の奥にでんと鎮座している巨大木魚。そのサイズは、直径1.3m、高さ1m、重さはなんと330kgとビックリの大きさです。
この木魚は、1933(昭和8)年にとある病院から寄贈されたもの。元々あったものが寄贈されたのではなく、九州産の楠を使って寄贈するためにわざわざ作られたのだとか。先にも書きましたが、1本の木から切り抜いて作ったものとしては日本でいちばん大きいのだそうです。
▼手前に普通の大きさの木魚を置いてみると、その大きさは驚くばかり
案内していただいた僧侶に「この木魚、毎日叩いているのですか?」と聞いてみたところ「いえ、お盆と開山忌ぐらいにしか叩きません」とのことでした。そこでお願いをして音を聴かせていただきました。
【動画】巨大木魚を叩いてもらった
「木魚を叩く棒のことを『ばい』と言うのですが、この木魚の『ばい』は4kgもあるんです。脚立に登って4kgの『ばい』で何度も叩くのはかなり大変なんですよ」と僧侶。筆者も実際に『ばい』を持たせてもらいましたが、持つだけでけっこう大変。それで何度も叩くとなるとかなり重労働だぞ、と痛感しました。
▼巨大木魚と『ばい』
最近発見された船絵馬も
巨大木魚を見せていただきおいとましようとした時、僧侶から「船絵馬のことはご存じですか?」と聞かれました。知らないと答えたところ「実は最近、貴重な船絵馬が8枚あることがわかったのです」と教えていただきました。
▼巨大木魚がある本堂の左隣にある金比羅殿にある8枚の船絵馬
船絵馬とは、江戸時代以降、北前船の船主らが、航海の安全を祈祷して寄港地の寺社などに奉納したもの。道内各地に多数残っているとのことですが、小樽ではこれまで2点しか知られていませんでした。それが2016年、この龍徳寺でいちどに8枚も見つかったというわけなのです。船絵馬には船名、奉納者の名前や出身地、絵師の名前、奉納年などが記載されており、歴史的資料として重要なのだそうです。
▼歴史的資料として重要なだけでなく美術品としても楽しめる船絵馬
珍しい巨大木魚と貴重な船絵馬が楽しめる龍徳寺。檀家でなくても拝観することができるのも、ありがたいところです。興味のある人はいちど訪れてみてはいかがでしょうか。ただし、巨大木魚は叩くことはできないのでご了承ください。
所在地:北海道小樽市真栄1-3-8
電話:0134-22-0523